クリスマス(適当)


「これ、靴下?大きすぎない?」
不審そうな顔でじーっと見ている割にはどかそうとはしない。つんつんとつついてめくって検分して、それからそのまま中までチェックしている。まるで縄張りに知らないものがあったときの犬みたいだ。
十分に探って満足したのか、ちらちら横目で見てはいるが、どうやら落ち着いたみたいだ。
うんうん。順調だな!
「プレゼントはでっかい方が入れやすいですから」
にかっと笑ってみせると、腑に落ちない顔をしつつもそのままもそもそと布団に潜り込んでいく。
かわいいよなー。見れば見るほど俺の理想の人すぎる。
まさか上忍で同性で、しかも元暗部で火影候補なんてモノに惚れる日が来るとは思わなかった。
強いくせにこの人は甘えん坊だ。そのくせ警戒心が強くて甘えたいのに素直になれなくて、でも慣れてきたらそーっと近寄ってきてそーっと触れてくるような…そんな臆病で物慣れない仕草がツボすぎる。
強情っぱりなくせに、どこか抜けてて、でも変なところ素直だから、俺に構われると簡単に抵抗を忘れてしまう。触るなーって顔してたのなんて、最初の数日だけで、そのうちまだかって顔するようになって、いつからかうっとりと目を細めて懐くようになったのをみたら、こんなに綺麗な生き物が俺に無防備な姿を見せてるって事実に眩暈がするほど幸せな気分になった。
まあそれだけ信頼されてるとかってことより、俺がどうこうしようとしたって、この人なら一瞬で叩きのめせるってのもあるんだろうけどな。
とにかく。とびっきり綺麗で強くて神経質なイキモノが、俺に懐いてくれてるこの状況が嬉しくてたまらない。
歪んでいるといわれりゃそうだな。ノリはでっかい犬飼ってるみたいなもんだし。
だがしかし、実のところ俺はもう本気でこの人なしじゃ生きていけないと思っている。
どんなに疲れていても別に待ってませんよって顔で俺の周りうろうろしてたら確実につれて帰って可愛がり倒さなきゃって思うし、任務帰りに入ってもいいかなーどうかなーって顔でうろうろしてたら捕まえて洗って飯食わせて一緒に寝なきゃって思うし、最近じゃどうやら本格的に火影になれといわれてるらしくてしょぼくれた顔でぼーっとしてる事が多いけど、構えば構うだけなでさせてくれるんだぞ?最高じゃないか!
…この人以外に適任がいないとはいえ、かわいそうだとは思うけど。
見かけほどこの人は頑丈じゃないっつーか。精神はどっちかっていうと不安定な人だから、きっと重圧に押しつぶされそうになってると思う。罪悪感とか、そういうのでいつまでもぐるぐるしちまうらしいし、実際そのせいで自分の命を粗末にしがちだ。任務ならそれでもなんとかなってたんだろうが、火影となればそうもいかない。里のために何かを切り捨てる決断をしなきゃならなくなったら…きっと最後まで切り捨てきれないんじゃないだろうか。
支えたいと思う事がおこがましいってのは分かっていて、だからただ、俺はこの人の側にいたいだけだ。
例え餌付けの成果だったとしても、それでもいい。何せ可愛がれば可愛がるほどすこーしずつなれてきて、このごろは無意識にか寝ていてもすり寄ってくるようになった。
なんか子どもみたいなんだよなぁ。
なんか放っておけない感じがするけど上忍だしなぁって思ったのが最初で、気付いたら目で追うようになって、その内強いはずなのに危なっかしく見えて声をかけるようになって、ある日傷だらけの癖にマントで隠して逃げようとするからとっつかまえたんだ。
なんでもないですって言い張るんだぞ?ごまかしきれないほど自分の血の匂いくっつけてるくせに。
俺だって忍だ。今流れている血と、乾いた血の匂いの区別くらいは付く。
強がんじゃねぇって言ったら逃げそうだったからふんづかまえて連れ帰って、フーフー毛逆立ててるみたいなこの人を強引に風呂場にも放り込んで洗って飯食わせて布団にも突っ込んで、チャクラ切れで碌に動けないのをイイコトにしっかり抱き込んで寝てやったんだっけ。
あれから随分経った。そろそろもうちょっとがっちり外堀も含めてなんとかしちまうべきだと決意したのは師走の声を聞いてからのことだった。
クリスマスといえば、プレゼント。誕生日がいつだったかもあやふやなこの人でも、流石に知っているはずのイベントだ。なにせ任務でやったもんな。
とにかく、折角の機会だから、この際この人をきっちり俺んちの子にしちゃおうと決めた。
でっかい靴下はこの人が寝てからすっぽり一緒に入れるくらいに作ってある。
最近俺と一緒だと熟睡するようになったこの人のことだ。思惑通り一緒にプレゼントになってくれることだろう。
「…寝ないの?」
「寝ますよ。サンタさん楽しみだなぁと思って」
楽しみすぎてにやにやしてたら、口ごもりながらつっかえつっかえカカシさんが話しかけてきた。
「あの、ねぇ。これ。一個しかないよ?アンタのは?」
くぅっ!たまらん!俺のことまで心配してくれるなんて!
「ああ、大丈夫です。二人用ですから」
「へー?そういうもんなの」
あからさまにホッとした顔をしたのをなでくりまわしつつ、わくわくした気分のままにちょっと調子に乗ってみることにした。
「クリスマスプレゼント、楽しみですね!」
「…ん。ま、俺のはアンタにあげるから、大事にしなさいよ」
なんだかたまらなくなって抱き締めた。
だって俺に譲るっていうんだぞ?モノはイラナイって主義なのは知ってるけど、この人はなにげにこの手のイベントが好きだ。
プレゼントだって貰うと密かに浮かれてたのを知っている。手にとって眺めてじーっと見た後は仕舞い込んで、それからときどきそーっと取り出してまた眺めてーなんてやってるのみたらそりゃ気合が入るってもんだろう?
「へへ!なら俺の、あげます」
「…勝手にすれば」
「ええ!もちろん!」
腕の中でもそもそしながら抵抗はしないカカシさんにくっついたまま、明日の朝が楽しみだとほくそ笑んでおいたのだった。

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適当。
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