おれのもの(適当)



アンタホントに上忍かと幾度となく問い詰めたほど子どもっぽいところがあって、甘えたで、子どもみたいに懐っこいくせに変なところで警戒心が強くて、落ち込むとふっと姿を消しては俺に探させて、見つかったら見つかったで駄々を捏ねるからぶん殴って連れて帰って撫で倒すまで毛を逆立てたままでいる。
勝手に出て行ったくせに、寂しかったと泣きついて、側にいてと縋ってきて、そうして閨に縺れ込んだら、翌朝は足腰が立たないほど攻め立てられてしまう。
任務中は手紙なんかよこしもしない。毎朝ふらっと出掛けて中々戻ってこないし、いないからって先に飯を食うとうだうだと落ち込んでみせる。
飯を食うか殴りあうか選ばせると、べそべそしながら飯をかっ食らい、お代わりまできっちりして、その上膝に懐いて喉でも鳴らさんばかりに擦り寄ってきて、ついでに朝っぱらからおっぱじめようとするから当然一発拳骨をくれてやるのが日常茶飯事だ。
外に出れば俺のことなんかどうでもいいような顔で、挨拶するときだけ一瞬瞳を潤ませるくらいが精々で。
部下たちにも横柄に振舞っているのをみたことがあるし、中忍への扱いなんてそんなもんなのかもしれない。
そう思って距離を置けば、恋人なのに詰めたいとしきりに文句を言いながら押し倒してくる。
俺が女に纏わり付かれてもどこ吹く風でいるくせに。…大体が俺じゃなくて、仲が良いように見えるらしい男への橋渡しが目的だとしても、もうちょっと俺への配慮ってもんがあってしかるべきだろうが。
そのくせ狂ったように俺に執着して、誰かに怪我でもさせられようものなら全力で、それもできる限り苦しめながら殺すような常軌を逸したところもある。
酷く厄介で扱いづらくて、我ながらなんでこんなのを選んだのかと頭を抱えたくなるのはしょっちゅうだ。
日々押し倒されて喘がされてぶん殴って出勤しているうちに、うっかりその流れに慣れてしまった事が恐ろしい。
だが、アレは俺の男だ。
間違っても他の女にも男にも、ましてや里にだってくれてやるつもりはない。
「嫌です」
「おぬしから勧めればアヤツも…ほぅ?今、なんと」
「ですから。嫌です」
飼い主を引き受けてくれるという奇特な女性がいるらしいが、財産や上忍としての名前目当てに決まってる。
そうでもなきゃあんな厄介なイキモノを欲しがる訳がない。
…俺みたいな物好きでない限りはな。
「何故じゃ。アヤツが幸せになれば良いと言うておったじゃろう?この女子ならば上忍じゃし、それなりに…」
「俺と一緒じゃないと幸せじゃないんで。その方がどんなに素晴らしい女性でも無理です」
こういうことははっきりさせておいた方がいい。後々厄介なことになる前に解決しておくのが吉ってもんだ。
目を見開いた三代目ってのは中々見られるもんじゃないよな。
ナルトが女体変化したときとかくらいか。あとは…悪戯がクリーンヒットしたときとか。
あとは今みたいに、本当に予想外の、それも望まない事実を知ったときだ。
「…い、いつじゃ!いつの間に!」
「拾ったら懐いたんで。それ以来俺のです。だからもう誰にもあげませんよ?」
子どもを望まれているらしいことは知っていた。
あんなのが子ども作ったって大変なことになるだけって、何でわかんねぇかなぁ?
女とヤルのは平気だろう。任務だといわれれば耐える…や、わかんねぇなー。今は。もしかすると幻術とかで誤魔化そうとするかも。
ちゃらんぽらんな様でいて、意外とアレで潔癖だもんな。多分俺よりもずっと貞操観念はしっかりしてる。
浮気は許さんと言ってある。…そのせいか、もし少しでも誤解されれば俺に捨てられるかもしれないと思ってる節があるんだよなぁ。
任務で子を成せと責め立てたられたら、思い余って子種殺しの毒でも飲みそうだ。
「じゃ、が…!お主には気立ての良い女子を!」
「あー…まあ性格はちょっとアレですが、中々かわいいんですよ?懐っこいし。器量よしでもあります」
自分で言うのもなんだが、どうやら俺は面食いだったらしい。
毎日間抜けにも寝こけて擦り寄ってくる綺麗な生き物をみていると、胸の辺りがなんかこう、な。あったまるというか。
とにかく、アレは俺のなので、どうあっても他人になんかやるつもりはないのだ。
「イルカよ…!」
「というわけですので。うちの連れて帰りますね?」
さっきから近づいてくる気配を、俺が間違えるはずがない。
大事な大事な俺の宝物。…まあ時々扱いが乱暴になるのは、ある意味自業自得だから許してもらおう。
やりすぎんなって言ってもやるし、我侭だし、俺様なくせに肝心なときに自信なくして勝手に姿消そうとしたり、そのくせ、いないからって俺がふらふら遊んでると泣きながらきゃんきゃん咎めてくるとかな。もうなー。
まあソコがかわいいんだけどな。
「あ!イルカせんせ!いた!」
窓から弾丸のように飛び込んできた生き物が、俺を見てはしゃいだ声を上げた。
「いますよそりゃ。おかえりなさい」
俺まっしぐらだよなぁ。ホントに。かわいいけど、抱きつかれると重いんだよ。ナルトじゃないんだから…まあナルトもでっかくなっても飛びついてくるからなぁ。あっちもなんとかしねぇと。
「こちらが報告書です。じゃ、ここらで失礼しますね。三代目」
「う、うむ。あー…そのじゃな」
「じゃあ帰りはサンマ買って帰りましょうね」
「サンマ!いいですねぇ。じゃ、早速!」
手に手をとって、三代目の前で頭を下げる。
絶望という名のラベルを貼り付けた三代目は…あの分じゃしばらく動けまい。
聡明であるからこそ、俺からこの人を引き剥がしたらどうなるか、すぐに分かっただろう。
そこそこ便利な存在である俺も、里の要であるこの人も失うのは、リスクが高すぎると。
「ねぇ何話してたの?仲がいいのは知ってるけど、俺が一番でしょ?」
今日も今日とて明後日な焼餅を妬くのに忙しい男と歩きながら幸せをかみ締めた。
…まあいざとなったら里中が敵になっても連れて逃げるからな。
我ながら極端な性格だと思わず笑うと、男も釣られてへらりと笑ってくれた。


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適当。
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