お祝い下さい(適当)


「お祝い下さい」
「えーっと?アンタ誰だ」
起き抜けに見知らぬ男。
危機感を覚えるべきなんだろうが、思わず聞き返してしまった。
男の様子からして少しばかり頭が足りないように見えるからだろうか。
「今日誕生日なんです」
「…そうですか」
会話が成立する可能性は低そうだ。
追い出す…のが一番なんだろうな。本当なら。
でもなぁ。今日誕生日なんだよな。この男。
少なくとも本人はそう信じている。
なんだかかわいそうに思えてきてしまった。
ノースリーブの変わった服を着ているし、どことなく薄汚れている。
どこかから逃げてきたのかもしれない。
家族がいるなら心配しているだろうが、この瞳。
…酷く寂しそうな瞳を見る限り、誰か側にいてくれる人がいそうには思えなかった。
「お祝い、下さい」
「とりあえず飯ぐらいなら食わせてやれます。あとアンタ泥だらけだから風呂はいんなさい」
今日一日だけ。それだけなら構ってやれなくもない。
今日は幸い貴重な休日だから。
それを見知らぬ男に割く…まあしょうがない。放っておくわけにも行かないしな。
「風呂?ご飯くれるんですか?」
「贅沢なものは無理ですけどね。ほら風呂場はこっちです。着替えは置いておきますから、ちゃんと綺麗に洗うんですよ?」
「…はい…!」
とても嬉しそうに風呂場に飛び込んでいったのを見送った。
綺麗に笑うなぁ。随分と。
「飯食わせて寝かしつけて…後は、三代目にでも身元調べてもらうかな」
あんまり待遇が悪いようならしばらく一緒に暮らしてもいいかもしれない。
…人寂しいのは俺も一緒だから。
「まあとりあえず。…ケーキか?」
朝飯はそこまで豪勢なものは無理だが、久々の休みに贅沢をしようとさんまなんかも買ってある。十分贅沢ってことにさせてもらおう。
風呂場から聞こえてくる調子っぱずれな鼻歌を聴きながら、さっさと飯の支度をすることにした。
その後、飯を食わせて寝かしつけるはずが、飯以外のものまで食われたってのは…予想外にもほどがある。
ただ。
「一目ぼれだったんです!拾ってもらえてよかった…!」
なんてそれはもうこの世の春とばかりに嬉しそうにいうから。
それから更に実は暗部だったとか、高名な忍だということが判明したりもしたものの…なんだかんだとその日から男は俺の家に居ついている。


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適当。
さらっと。
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