急げ!(適当)

あの人が気づく前に全てを終わらせなければならない。
「お前なんかに…!なぜあの方が…!」
今際の際にあってもいや、だからこそ怨嗟の声を吐き出し続ける口を縫いとめる暇さえ惜しい。
いっそ引き裂いてもいい位だが、片付けるのが面倒だ。
「今、そんな目に遭っててわからないか?」
ただの中忍の分際でなどと罵って、碌に実力を確かめずに突っかかってきた末路がこれだ。
自分の手足がもう二度と自由を取り戻さないかもしれない可能性を思っても見ないらしい。
未だ“おまえなんかに”と言う程度の頭しかないから、きっとあの人は思考の端にすらコレの存在を残したことなどないだろう。
コマとして、守るべき里の欠片として認識したことはあっただろうが、いつのまにか里から姿を消しても、きっと気にとめることすらしない。
恐ろしいほど無自覚に、どこまでも残酷な人だから。
「なぜ…お前ごときを…!」
「さぁ?…まああんたよりは強いし、頭も悪くないからじゃないか?」
あの顔と頭ばかりいい気狂いの男が俺を情人という位置に据えた理由など知らない。
闇を共有したあの頃だって、あの男が俺を俺と認識していたかどうか。
深く暗いあそこを捨てて、光の中に身を置いたのは守るべきものがあったからだ。
…俺自身が変わったわけでは決して無い。
そんな真っ先に俺を嗅ぎ分けたのが、光の中にあって、そ知らぬ顔で未だ闇に浸りこんでいる男だというのも頷ける。
だからこそ、俺をかりそめの寄る辺に選んだのかもしれない。
闇を求め、だが光の中にあらねばならないのは、きっと酷く苦痛だろうから。
「なぜ…!俺の方がずっと…!」
ああうるさい。早く片付けてしまわなくては。
…あの男に見つかったらことだ。
「眠れ。…まあもう二度と目覚めないかもしれないけど、それくらい覚悟してるよな?」
ただの中忍。そう表現した相手に使うには、持ち込まれた薬物も使われた術も威力が強すぎる。
徹底的に甚振るつもりだったのか、拷問用の性具まで持ち込んだ馬鹿相手に気を使ってやる必要など感じない。
俺にとっては舌先が一瞬ひりつく程度のちょっとした毒にすぎないが、それにのた打ち回ることすらできないこの男にとっては、恐らく致命的だ。
ひくひくと痙攣しながら瞳を見開いて、乱れた呼吸は少しずつ弱り始めている。
「持って帰ってもらうか」
今から運んでいては間に合わない。
鼻のいい男が、この馬鹿が撒き散らした毒の匂いに気づかないくらいには手を打っておかなくてはならないというのに。
「のんきに死んでていいご身分だ」
ため息を聞くことはなかっただろう。…その時間すら与えずにこの男から意識を奪った毒は、あの人にめまいすら与えられない。
ただ、俺に対して使われたものが、悪戯なんかじゃすまされないということを知るだけだ。要するにそれが問題なんだ。
あの人が知れば…激高するのは目に見えている。だからこそ、少しの欠片も残すことはできない。
担ぎ上げたからだの重さにうんざりしながら印を組んだ。
処理班がくるまで待つ間も惜しい。
夜明けを知らせる鳥の声すら俺を焦らせて、八つ当たり気味に吐き捨てた台詞は、自分でもぞっとするほど悪意に満ちていた。
「俺の方が知りたいんだよ。お前ごときのせいであの人がおかしくなるかもしれないのを、何で許せると思うのかをな」
******
ころがりこんできた面倒ごとの後始末に意識を集中させすぎたのかもしれない。
邪魔な物は里長に押し付け、監督不行き届きを詫びられながら、休暇の申請をして、すぐに匂いを消すために銭湯にまで行って、それから撒き散らされた毒は術で集めて、部屋中を清めた。
馬鹿が汚した畳の染みにも苦労したが、これでも処理には慣れている。
ばれない程度には誤魔化せるだろうと思える程度には片付いて、やっと一息ついたというのに。
「ねぇ。何が、あった?」
抱きしめてきた殺気の塊は、返事を待たなかった。
「あっ…んっ!」
「誰が?ねぇ。アンタは誰のもの?」
「あ、俺は…」
里が何を重要視しているか理解しているつもりだ。
血を残し、その力を次代に残す。
だからこそ本当のことなど言えるはずもない。
「アンタは、俺の。…それもわかんないような馬鹿は、ちゃんと消した?」
「んっん…!」
乱暴だが的確な愛撫に耐えながら、頷けたのが奇跡だ。
「なら、我慢してあげる。代わりに…分かってるよねぇ?」
ケダモノの瞳を隠そうともせず、男が俺に後孔にあてがったのは、既に十分に熱をはらみ、はじける寸前まで膨れ上がった男の性器だった。
「や、ま、まだ…!」
「入るよ。…だって昨日も散々中に出してあげたでしょ?」
俺の怯えをよそに、体は男の言葉どおりに凶器のようなそれを受け入れていく。
痛みはあった。だがそれ以上に与えられるのは圧倒的な快感だ。
「ふぁ…っ!あ…!」
慣らされた体はつき立てられた熱を愛おしげに包み込み、離そうとしない。
勝手に揺れる腰に嬉しそうな声で男が舐めるように手を這わした。
「一杯ちょうだい?そうしたら…大丈夫だから」
蹂躙しながら甘える男は、どうにかまだ正気でいてくれるらしい。
…やはりとっとと片付けておいてよかった。もしもまだアレがここにいたら、八つ裂きにするだけじゃすまなかっただろう。
「あげる。だから、いっぱい…!」
「ん。いっぱいしよ?」
誘う言葉はすぐに荒い呼吸だけに変わって。
俺は…快楽に蕩けた脳で思うのは、ささやかな感謝。
アレのおかげでこの男が俺だけに夢中になっていることを確かめられたってことだけだった。



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適当!
ねむいので!
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