「で、どーすんの。これ」 「いやぁ。すっきりしましたね!」 一仕事終えたとばかりに明るい声だが、ガキ共を捕らえていた敵のアジトは跡形もなくなっている。 ま、ここまでするつもりはなくても、元々痕跡を消すためにそれなりに破壊する予定ではあった。 「でもねぇ。流石にこれはやりすぎでしょ?」 普段は冷静沈着で、ちょっとでも俺がやりすぎると小言とため息が降ってくるって言うのに。 ま、大抵適当にながしちゃうんだけど。 コイツの方が絶対切れたら面倒臭いタイプだよね。 「ターゲットは確保しましたよ?先輩だって早く帰りたがってたじゃないですか」 誘拐とか、そういえばコイツに絡ませるのはまずかった。 建前では私情を挟むようなことじゃ、忍びなんてやっていけない。でも適材適所って言葉もあるし、真っ先に駆けつけてくれたからって、この手のことに後輩を使ったのは明らかな失策だ。 浚われた挙句に他人と混ぜ合わされた自分を拒絶し、一時期は本当に不安定だった。 浚われる前のコイツのことなんてしらないし、俺が見つけたのは大量のいびつに歪んだ死体と、闇を溶かし込んだような瞳に絶望を溶かし込んだコイツだけだ。 笑顔の奥に何があるか考えるのは止めて置いた。 …絶対に里の不利益になることはしないしね。 それに細かいことは聞かないほうがいいだろう。思い出しては悲鳴も上げられずに置物みたいに固まっていたコイツを知っているだけに、下手に刺激したくない。 自分はそんなに弱くないって言ってるけど、未だに他人に触れられるのを嫌うのを知っている。 その辺は追々何とかしなきゃ、ね。懐っこいようで人嫌いのコイツにだって、側にいる誰かは…多分いたほうがいい。 …数年前の自分にそれを言ったら鼻で笑っただろうけど。 「何事もタイミングってことなのかもねぇ…?」 「そうですそうです。急がなきゃ駄目でしょうが。愛しの先生さんが待ってるんでしょう?」 「ま、そーね。ありがと。おつかれさん。助かった」 面を外し、胡散臭い笑顔を浮かべている後輩は、そういうと少しばかり複雑な表情を浮かべたものの、手早く確保したターゲットを袋に詰め込んでいった。 意識はとっくに奪ってあるし、傷つけたくない死体の保存袋にも使うこの袋は頑丈で外から術を食らっても殆ど効果がない。 …つまりこれが一番安全なんだけど、イルカ先生が見たら怒るよねぇ? 最近今まで何も考えずにしてきたことを、恋人ならどう思うかって考える事が多くて困る。 それでも今は優先すべきことを間違えたりしないんだけど。 任務の遂行とそれからイルカ先生の誕生日を祝うのが同列になってるってのは秘密だ。ばれてるかもしれないけど、きっとあの人は怒るから、ちゃんとお仕事片付けなきゃ。 …後始末はかわいい後輩に押し付けちゃうけど。 「…後は、依頼人にこれ押し付けてこなきゃね」 「そうですね。…ああ、奥方というか、泳がせていた側室は確保したようです。こちらと同じく双方とも」 コイツがいると話が早い。持つべき物は有能な後輩だよね? まだ厄介ごとは残ってるけど、こっちが片付くだけでもありがたい。 「さて、探索に宛ててた分、全部そっちまわしていいよ。これは俺が運ぶから」 「え!いいんですか?間に合いますか?」 意外そうな顔をされた。流石にそこまで鬼じゃない。 操っていた連中が音信不通になれば、依頼していた側は逃げる可能性が高いんだから、今のうちに何とかした方がいい。 だから出来るだけ先延ばしにして幻術かけてしばらく子どもがいなくなったことをごまかしとこうと思ったんだけどねぇ…この有様。こいつは索敵得意だからなんとかなるだろうけど、手間取らせたくない。 「で、結論は出たの?」 「…いいえ。この期に及んで火の国のお偉方でもめてるみたいです」 「そ?」 ま、当然か。所詮一般人だしとりあえず確保しといて、後で幻術でも何でも使って記憶を消すってのも手かもしれない。 「先輩。あの本、見つかったらいつでも結構ですので連絡お願いしますね!」 「ん。もちろん」 …うーん?もったいぶるのがかわいそうになる必死さだ。これが恋人相手とかだったらいいんだけどねぇ…?こんな所まで俺の真似しなくてもいいだろうに。 イチャパラ欲しさに色々しでかしたときは、泣きながら怒ってたくせに。 ま、とりあえず早くコイツにも春が来ることを祈っておこう。 「では、僕は行きます」 「おねがいね?」 誕生日まであと三日。そして並みの忍なら送り届けるまでで三日経ってしまう。 「でも俺、脚早いし」 多分俺なら半分以下でいける。里に戻るのが並みの忍で五日位かかるかもしれなくても、絶対に間に合わせてみせる。 「待っててね」 恋人に貰ったお守りをぎゅっと握り締めると、それだけで幸せな気分になれた。 ******************************************************************************** 適当。 祝いじゃ祝いじゃ(`ФωФ') カッ! ご意見ご感想お気軽にどうぞー |