遠い、故郷2(適当)



俺の人生に、男と寝るなんて予定はひとっかけらだってなかった。
小さな家にかわいい嫁さんと子どもがたくさん。それから犬とか猫とかも飼って、庭には実のなる木を植えて、子供の日には柱に背丈を刻み、立派な大人になるまでは生きていられたらいいなぁなんて、忍にしては少しばかり贅沢な夢を抱いていた位だ。
それが何の因果か惚れた相手は男な上に、こんなのは気の迷いだと必死で忘れようとしてたってのに、向こうから告白された。
それも決死の表情で、むしろ詰め寄るに近い状態で、だ。
好きだといいながら苦しげな顔で、今にも倒れるんじゃないかってくらい息を乱して…目をそらせないくらい射抜くような鋭い視線で。
血でも吐くように好きだと告げられて、誰が拒める?
誰よりも自分自身がこの男を求めていると知っているのに。
そうして抗いがたく引き付けられて付き合い始めてみれば、同性同士であるというのが理不尽なほどに相性もよく、こんな関係は間違っているはずなのにこの人が運命だと確信するほどだ。
絡みつく腕にこれ以上の関係になることを匂わされても、拒むのが精一杯で本気で振り払うことなんてできなかった。
本当は罵れば良かったんだ。ホモじゃないとか頭がおかしいとか、そんな風に言えばあの人は…引き下がらなくても、俺に呆れてくれたかもしれない。
それすらもできないのにうだうだと悩む俺は、要するにどこまでも中途半端なのだ。
多分、俺の気持ちなんて見透かされている。
好きで好きでどうしようもなくて、それが恐ろしいなんて言いたくもないし言えない。
でもバレてるってのは薄々知っていた。
そんなに怖い?なんてちょっと困ったように笑うから。
でも何もいえなくて、握り締める手も拒めなくて、いつだって俺は迷ってばかりいた。
切っ掛けがなければ、きっと今だってどっちつかずの態度であの人を困らせていたと思う。
あの人に命を下したのは里長だが、それを知っていて耐え切れなかったのは俺の方だ。
行ってしまう。何も残さずに。
そうしてまた置いていかれるのかもしれない。誰よりも何よりも大事な人なのに。
しかも諦めが良すぎるんだこの人は。…不幸慣れしてるのかも?なんて笑顔でいう位に。
大怪我してチャクラも切れて、それでも仲間を守ろうとするのは素晴らしいんだろう。多分。
自分がそうなっても助かるって確信があるならいい。でもこの人の場合はいつだって、自分が犠牲になればそれでいいと思ってるんだ。
そんなの…許せるはずがない。
置いていかれるくらいなら、いっしょに死にたい。
自己犠牲なんてクソくらえだ。どうせなら…そんな覚悟を決めるくらいなら、這い蹲ってでもいいからこれからずっと一緒に生きると誓わせたかった。
だから、どうせなら。
駄目元で絶対に死にたいと思えないくらい強烈な思い出を、あの人の中に残そうと思った。
連れて行けと強請り、それを断られてから決めた。
男と寝るのなんて正直言って恐怖でしかないが…この男なら別だ。
何もかもが欲しいんだから、きっと耐えられる。
少々仕込みを施したお守りも保険につけた。熱に浮かされたような顔をしていたあの人が、この仕掛けに気づかないといいけど。
後はもう行き当たりばったりだったが、なんとかやることやったしな。
拒み倒していた俺がベッドに連れ込めば、それだけで印象が変わるだろうと思った。
上忍らしく、欲しいモノを手に入れることにためらいのない人だ。チャンスが来たら手に入れてから後のことを考えるようなところがある。
だから絶対にひっかかるという自信はあったし、それから結果的にそれは正解だったと思う。
最初は押し倒して、なんでもいいからやっちまおうとしか考えていなかったから、その手の本を読んではいたが、そこから先をどうしたらいいのかわからなくて…まあすぐに暴走したあの人にさんざっぱら好き放題される羽目になった。
痛みに勿論恐怖も感じた。相手は同性だ。何やってんだと思わなくもなかった。
絶対気持ちイイ訳がないと思ったのに、腰が抜けるほど気持ちよかったのは予想外だったけど。
繋がってしまったときに、これできっとこの人は忘れないと思った。
それから、俺もこの人のことを忘れられないだろうと。
罠にはめたつもりで、自分から罠に踊りこんだのかもしれないと泣き笑いを浮かべながら自嘲して、興奮しきった顔で名を呼ぶ男に口付けたことだけは覚えている。
「はぁ…」
それから、ずっと。ずっとあの人は帰ってこない。
あの日はまだ雪がちらつく頃で、服を脱がされてひやりとした空気に自分の肌が暴かれていることを突きつけられている気分になったもんだ。
でも今はもう桜も散って、少しずつ夏の気配さえ感じ始めている。
「なんじゃ。残業しすぎで疲れとるんじゃないのか?はやく寝ろ。ご主人が心配す…」
「あー。そうだな。ちょっと書類が。…寝るよ」
「そうしろそうしろ」
同居人が増えた。いや同居犬か。
老獪な忍犬は伝令をかねて行き来するうちに、いつの間にやら俺の家に住み着く形になっている。
賢い忍犬は話し相手になるどころか、自分の腑抜け具合を突きつけてきさえするから何かと助かっていた。
「…お主らはうだうだとろくなことをかんがえん。とっとと寝てしゃきっとせんかい」
「…はは。そうだな」
確かに犬のほうがずっと賢いかもしれない。
…もうすぐ、俺の誕生日だ。
あの人はそれまでには帰ると、祝いたいんだとそれはもう耳にたこができるくらい言ってくれていた。
任務がそう簡単にいく訳がないと知っている。…でも、期待することをやめられない。
無事で、帰ってきてくれ。それだけでいいんだ。お願いだから。
「…はぁ…。難儀なヤツじゃのう…」
「ああごめんな。…おやすみ」
気がつくとこうして物思いに耽ってしまう。
犬の手を煩わせるほど面倒な人間だっただろうか。自分は。
…恋は恐ろしい。経験はさほどないが、自分が根っこからつくり変えられてしまったような気がして、俺は今日何度目か分からないため息をついたのだった。

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適当。
祝いじゃ祝いじゃ(`ФωФ') カッ!
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