いぬのきもち(適当)

なんとなくふわふわしたまま受付所にむかった。
任務はもちろん成功して、無事奪還した品物もちゃんと懐におさまっている。
一応任務自体はAランクだった。単独で護衛のうようよしている館に潜入し、そこから荷物とできれば護衛の頭の術も奪い取ってくるって言うそこそこ面倒な任務。
人間のまま入り込むのが危険だからと、わざわざ火影の手で子犬に変化してそこに向かった。
父親がどんな外道だろうと、子どもはそれを知らずに無邪気に育っていて、その子どもが犬好きで、外道でも娘だけはかわいいターゲットの警戒も緩むと踏んだかららしい。
お陰で移動もままならないからそれなりに苦労した。
なんてったって、パックンよりチビなのだ。
前もって呼び出しておいた忍犬たちの背に乗って移動するしかなかった。
休む時は犬たちがこぞって俺にくっついて温めてくれたから、なんだか昔に戻ったようなきがしたっけ。
一番最初に呼び出した時も、好奇心で一杯の顔をした犬たちに、全力で毛まみれにされたのを思い出した。
ま、その頃はもっと血の匂いにつつまれていたけど。
その点任務中は平和だった。子どもは素直にうろちょろする子犬の相手をしてくれたし、拍子抜けするほど簡単に依頼人の下から盗まれた品物も見つかった。
後は一瞬だけ変化といてモノを犬たちに預けて、もう一人のターゲットである護衛をたきつけて術だけ奪ったらさっさと逃げればいいだけだったから、正直言って犬になって遊んで、飽きたら戻ってきたんじゃないかって言われたら否定できないかもしれない。
時々もみくちゃにされるのは流石に閉口したとはいえ、全力で撫で回されてかわいがられるのは正直に白状すると楽しかった。
この手がなんであの人じゃないんだろうとも思ったけど。
帰りも変化を説いた俺が忍犬たちにえらく不評だったので、子犬に化けて毛皮に埋もれながら帰る羽目になったんだけど、大門に着く前には流石に変化を解かせて貰った。
子犬の姿ではたけカカシですなんて言っても、誰も信用してくれない。
無事に変化をといて、離れたがらないというか、名残惜しげに俺にくっつきたがる犬たちを連れて練り歩きながら受付へ向かった時から、思えば俺はおかしかった。
受付所には運よくあの人がちゃんといて、いつものようにニコニコ笑ってくれた。
あー。この人、俺のこと好きになってくれないかなぁ。
でも本当の俺は背もこの人より高いし、顔なんて片目しか出てないし、目付き悪いらしいし。
でも、かわいいって言ってもらえるならこのひとがいいのに。
任務中犬たちや子どもにすごくすごーく大事にしてもらったから、この人の手が俺の頭を撫でてくれるんじゃないかって期待するのをやめられない。
里に着いたのが今日の任務の発表前なんてへんな時間だったから人も少なくて、俺の番はすぐに回ってきた。
にこっと笑う人に、胸が騒いで煩い。
任務中にのんびりしすぎた分、今馬鹿みたいに鼓動が早いんだろうか。
「カカシ先生、今日はなんだかその」
「はぁ」
何だろう何を言われるんだろう。
不安と緊張と裏腹に、いつも通りの顔ができる自分に感謝した。
笑顔、いいよね。やっぱり。この人が笑ってくれるだけで俺は…だってこの人。
「かわいいですね」
「え!」
今まさに考えてた事を言われたから、めちゃくちゃ焦った。
「あ!す、すみませんつい!?」
見る見るうちに真っ赤になっていく人を見ている俺も、多分真っ赤だ。
…だから多分、正常な思考なんて物ができなくてもしょうがなかったんだって主張したい。
「あの、なでてくれませんか」
とっさに言ってしまってから、すぐに激しく後悔した。
いきなり撫でろって…我ながらなんだそれ!?
俺の中の子犬がくんくんないてこの人を恋しがっていても、それは成人した男が、上忍が口にしていい台詞じゃない。
「へ?」
「あ、の、なんでもないですやっぱり」
「なでていいんですか?」
もふもふと優しく俺の頭を撫でる手は、子どもの乱暴な手つきとも、犬たちの舐めてくれる同属としての毛づくろいとも違って、すごくそれはもう気持ちよかった。
思わず目を細めて幸せに浸ってたら、隣に座ってた偉そうな男に「うみの、もう帰れ」って言われて、俺まで一緒に追い出されちゃったけど。
何故かその流れでイルカ先生の家にまで潜り込むことに成功した。
「ほんとにふわっふわですね!あはは!」
「あの、任務で子犬やってたんでなんか、その、撫でてくれそうな人見たらつい…」
任務中にも強面護衛たちがこぞって撫でてくれたっけ。恐るべし子犬の魔力。
…っていうかうん。本能が強くなってるのかも。その分理性が薄くなってるんだきっと。
なにせ子犬なんて楽しい眠いお腹すいたお腹一杯だけで1日が終わる生き物だもんね。ちょっとその影響が残ってるのかもしれない。
「…実はその、狙ってたんで。俺も夜勤明けでちょっとその…流石に外で撫でるのはまずかったですよね…」
「う、でもその!ほら!ここでなら!」
「え!いいんですか!じゃ、また撫でさせてくださいね!」
「はい!」
…なんか、臨んだ形とは違う気もするけど、かわいがってもらえるならいいか。
俺の中の子犬がそう決めたから、俺もそれに流されることにした。
全然子犬じゃない下半身事情とかは…ま、おいおいなんとかしましょう。
今はかわいがってもらえるだけでもいいや。
家に上がりこんで撫で回されてるって状況の卑猥さに、この人は多分気付いていないから。
「睫も銀色だ…!すごいですね!」
下の毛も見ます?なんて聞いてしまいたくなるのを堪えて、俺は思う様その欲しくてどうしようもなかった手に甘えることにしたのだった。
…いつかもうちょっと進んだ関係になることを夢見て。


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適当。
いぬもふもふ中忍はそのうち犬にもれなく美味しく…げふんごふん。
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