伝染(適当)



こうして一緒にうちで飯を食うのは、お互い独り者の侘しさを託っているのに飽きたってだけの話だ。
少なくとも切っ掛けはそうだ。
酒の勢いで俺のうちに泊まった上忍が翌日しみじみとこういう飯っていいですよねなんていうから、同じことを思ってたってのをついつい馬鹿正直に言っちまったというか。
今日も任務帰りでちょっと薄汚れた男と帰り道で行き会って、ついでだからと風呂に突っ込んでから、遅めの晩飯を二人で食ってた訳だが。
「あー…その。お疲れなんですね」
最初はそこそこお互いに気を遣いあってたもんだが、そこはむさい野郎二人。
行儀なんてものは早々に姿を消し、忍服はおろかパンツだって部屋の中に干しっぱなしだ。
つまりバスタオルを腰に巻いただけの男の股間がだな、その、元気だってこともすぐにわかっちまった訳だ。
流石に全裸は見たことがない。素顔は…この人がこうして俺の家で飯を食うようになってから、早々に顔布を遣うのを辞めたから見放題だけどな。
でもなーあれだけタオルが持ち上がってるってことは…でかそうだ。もしかすると俺よりも。
落ち込むかそれだけ疲れてるんだと同情すべき状況のはずだった。
でもだな。この所俺を悩ませている問題がそうはさせてくれなかったというか。
「そういうイルカせんせも…ねぇ?」
視線が俺の股間に向けられるだけで、既にきざし始めていたソコが反応しそうになって焦った。
アンタがそんなエロイ顔してるからだろうが。
色っぽい流し目で、殺しきれない興奮を混ぜ込んだ声で、そんなこと言うから悪いんだ。
「俺は普通です。至って普通です。アンタがエロイことばっかり考えてるからです」
俺は悪くない。確かにその、ちょっとばかし反応してるが、それは俺のせいじゃないはずだ。
なにせこの上忍はエロイ。どこがエロイってしょっちゅうエロ本読んでるし、こんな綺麗な顔してるくせに結構下世話なことまで聞いてくる。
家に上げてしばらく立ってから、俺のおかずがいまいちだとかなんだとかいうから、飯に文句をいうならたたき出すぞって言ったんだが…。
必死で首を横に振りながら、ちがうちがうと喚いた挙句、いきなり差し出された若い女性の肌も露な本を差し出されて己の間違いを悟り、それと同時に鼻血を吹いて失神した。
…我ながら情けないが、やっぱりこの人が悪い。
ぶっ倒れたらせっせと世話してくるし、あっさりその気になった下半身に気づかれるし、しれっとした顔で抜いてあげましょうかとか言うし!
鼻血の掃除を言い渡した後すぐさま風呂場に逃げ込んでつつがなく処理をするまで、俺がどれだけ辛かったか。
上忍に掃除やらせるなんてどうなんだとちょっとだけ冷静になった頭で気づいた頃には、とっくに部屋はきれいになっていた。
しかもだ、しょげ返った男に必死な顔で謝られたら…なんだか怒ってるのも馬鹿馬鹿しくなったんだよな。
アカデミーにもこういう時期があるから、きっとこの人の成長はその辺で止まっているんだろう。
合宿に行った時なんか特にこの手のことはよくあるしなぁ。この人は多分ガキの頃にそういうことが出来なかった分、今取り戻しているのかもしれない。
外ではそうでもないが、部屋に入れば妙にくっついてくるし懐いてくる。
突き放したいと思わなかったのは、俺も懐かしかったからだ。下らないことで騒いで笑って飯食って雑魚寝して、まあ酒を飲むのは大人の特権だけどな。
おかげで俺はうっかり厄介な感情を抱え込む羽目になったってのに、永遠にそれはいえそうにない。
「えー?」
「ほらさっさと飯を食え。任務帰りで腹へってんでしょうが。体に良くないですよ?それでなくても無理ばっかしてるんだから」
飯食って寝て、俺が風呂に入ってる間に抜けばいいんだ。
…それか、誰かに。
あれ?なんでだ?ちょっとそれは…それは嫌だ。
「あ、うん。そうね。…我慢って体に良くないよね」
ゆらりと視界が歪む。力が抜けて座っていられない。
とすりと倒れた先に男の素肌があって、風呂上りのせいか妙に熱いそれに心臓が跳ねた。
「あ、れ?」
くすくす笑いが耳元を撫でていく。不思議な感じだ。くすぐったいのに…ぞくぞくする。
「ああ、ほらやっぱりこんなになっちゃってるじゃない。我慢するつもりだったの?」
何もかも感覚が遠いのに、快感だけは妙に鮮明で、そこに触れられただけで腰が浮いた。
なんでそんなとこに触るんだ。確かに抜きたいが、触って欲しい訳じゃない。でも止めてほしくない。
呼吸が上がっていくのを他人事のように感じていた。
「や、ぁ…!で、る…!」
「ん。いいよ。出して?」
膝の上に乗せられて擦られたら、たまらない。尻に当たっている硬いものがなんなのか考えることなど放棄した。
「あ、あ…ッ!」
「ん。…イイ?」
なにが?と聞くことも思いつかずに、反射的に首を縦に振っていた。
…それがこれから先の行為への了承ととられたことなど気づきもせずに。
「ふぁ…?え?や、やだ!なにすんだ!」
「ほら、前擦っていいよ?気持ちイイでしょ?…こっちは俺が気持ちよくしてあげるから」
首筋に歯を立てられてぞくぞくした。そこは急所だ。いや触られている所全部が急所で、どれもこれも気持ちよくておかしくなりそうだ。
後につっこまれたモノが気持ち悪いのに、唆されるままに自分の前に手をかけた。
擦れば慣れた快感はあっさりと理性を削り取り、気持ち悪かったはずの後まで男が変なところを擦るからすぐに訳がわからなくなった。
「う、ぁ、ん、や、そこ、だめ、もう…もっと」
「俺も、もっとちょうだい?」
寄せられる唇に食らいつくようにむさぼって、その瞬間にさっきと比べようもないほどでかいものに入り込まれた。
「ひっ!やああ!離せ!や…いた…っ!」
痛くて熱くてもがいているのに、男は容赦なく腰を掴んで…その楔を飲み込ませた。
「く…っ!狭…っ!でもきもちい。…ね、イルカせんせ。さっきのところ、わかる?」
「ぇ…?」
何言ってんだ?さっきのところ…あそこはいやだ。おかしくなる。
「そ?じゃ…おかしくなっちゃって?」
体を返されて酷い声で喘いだように思う。
文句の一つも言いたくて見上げた先には、興奮しきった顔で笑う一人の獣。
綺麗だなぁと思った時点で、勝負はついてた。
「え、あっ!うぁ…!や、…っ!」
激しく揺さぶられて、ぬるぬると出し入れされるそれが男の性器だと理解して、全身の血が沸騰したんじゃないかと思った。
食われている。…この男に。
見せ付けられながら達したあとも、男の行為は止むことがなく。
…いつの間にか風呂に入ってたりベッドに入ってたりしたということは覚えているが、そのどれもが喘いでいる自分の声とセットだって事実に穴があったら埋まりたくなったのだった。



「アンタもう俺のモノですから、浮気は許しません」
人を半ば強姦しといてなんて女々しい台詞。しかも必死だ。
おかげで、どうやらお互いほれてたってことが判明した。
「アンタの浮気も許しません。その無駄にデカイモノ切り取ります」
「ホント!嬉しい…!」
なんだか喜ぶポイントがずれてる気がするが、そこはまあ、その。…惚れた弱みだ。
「あとやりすぎ」
「えー?足らないでしょ?もう俺でめろめろになってもらわないといけないし!」
自信満々の男の股間は今度は隠すものもなく天を突いていて、そうするとあれだけ散々やって腰が抜けているのに、こっちまで反応した。
ちくしょう。責任は取ってもらうからな。
動けないから手だけ伸ばして口付けを強請ると、優しくついばまれてうっとりした。すぐにそんな大人しさはどこかに行ってしまうんだが、それはそれだ。
「好きです」
「俺はもう愛しちゃってますから」
負けず嫌いなのかなんなのか、胸を張って不埒な行為を続行する男と唇を重ねた。
伝染しあったこの興奮に溺れるために。

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適当。
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