いこいの我が家(適当)


視線を合わせない。
そしてあからさま過ぎるほどに冷や汗を流している。
と、言うことはだ。
「アンタですかこれやったの…」
憩いの我が家に帰るなり、どうして俺は水浸しになった床にすっころばなきゃ行けなかったんだろう。
それも、大慌てで俺を助け起こしたくせに、いきなり「キャー」なんて大声を上げて結局落っことしたような男に。
「だ、だって…!手料理…!」
めそめそと泣き崩れた男の台詞は嗚咽にまぎれて聞き取れなかったけれど、悪意があったわけじゃなさそうだ。
「なにやってたんだか知りませんが、片付けますから。もう帰ってください」
とりあえず、深く考えるより今を何とかするほうが先だろう。
どうやって家に上がりこんだか考えると恐ろしいが、男は上忍だ。カギぐらい簡単にどうとでもなるだろう。
ついでに言えば、里は多少の被害も目をつぶるに違いない。
穏便に済ませるには、さっさと出て行ってもらったほうがいい。
なにかあってからでは遅すぎる。
使い古しの雑巾を引っ張り出して床を拭いて、それから転がっているなべも洗って片付けて、今日はもう寝てしまおう。
ため息は途中で生暖かい何かに遮られた。
「か、帰りません…!今日は、絶対って…!」
何が起こったか知らないが、涙目の上忍が普段は殆ど見えない素顔を晒して、俺にぎゅうっと抱きついている。
涙が肩口に染込んでひんやりと冷たい。
これが女性ならあわてたかもしれないが、今自分にしがみ付いているのは男で、しかも上忍だ。
対処に困るのは同じでも、その方向性が違う。
「任務か何かなんでしょうか…?」
不審さを誤魔化しきれずにそう聞くと、悲しそうな顔で言った。
「ちが…!だってアナタが好きなんです…!手料理はグッと来るっていうから頑張ろうと思ったのに…!」
「は?」
なべの中身は水だけのように見えたが、何か違うものなんだろうか。
聞き間違えでなければ、なにかとんでもないことを言われたように思えるのだが。
「…俺、頑張りますから!」
頬を染めて俺を見つめている。潤んだ瞳に、そういえばこの人は忍犬使いだったなと思いました。
子犬みたいに真っ直ぐな視線。
白く特徴的な髪型のせいもあってか、妙にかわいらしくみえた。
だが、なにがどうなってるんだかさっぱりだ。
「えーとですね。これから寝るんですが、カカシさんはどうしますか?」
「は、はい!お布団…!」
すかさず布団を探し出した。どうやら料理をしようとして水溜りを作るほど、この人に生活力はないらしい。
大変なことになる前に片付けなければ。
「万年床なので大丈夫です。ただカカシさんの分はないので雑魚寝になりますけど」 さっさと片付けるためにそう告げるといきなり「きゃー!」っと叫ばれて、抱きつかれて余計なトコまでまさぐられて結局大変なことになったので、その決断が正解だったのかは分からなかった。 そんな訳で、俺の家にはいま不束な恋人を自称する上忍が住み着いているわけだが。 「イルカせんせ」 この世の春とばかりに蕩けそうな表情で俺を見つめる男と暮らすのは、そう悪くないかなと思っている。
…何せもう俺もすっかりこの男に嵌ってしまったのだから。 *********************************************************************************
適当。
はるなのでねむいです!
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