混戦(適当)


「いきてますか」
「ま、どうにか」
袖擦れ合うも多少の縁などというが、これも縁ってやつなんだろうか。
里から少し離れているとはいえ、たかが荷物運びだ。
孫からの誕生祝だというそのプレゼントは、確かに依頼人の年端も行かぬ子どもたちの手で運ぶには重かったかもしれないが、忍にとっては極々軽い荷物に入るものだった。
壊れないように注意することくらいはしたが、それよりもむしろ子どもたちのことを思い出して頬を緩めたり、授業のことを考えている時間の方がずっと多かったと思う。
プレゼントを手渡したときの老女の嬉しそうな顔に、なんだか自分まで気分が良くなって、足取りも軽く里を目指した。
…つまり、そう大して危険でもないはずの任務だった。
いきなり山賊に教われるのも予想外だったが、それと戦闘中に、さらに暗部装束を身に着けた連中が戦闘しながら突っ込んでくるとは思わないじゃないか。
どちらがどちらの敵かすらわからないような状況で、襲ってくる敵を捌くのが精一杯だった。
考えている暇があるはずもない。
間断なく襲ってくる連中の目的は、どっちにしろ俺か飛び込んできた暗部の命なのだから、性懲りなく向かってくる敵を一人でも多く倒す方が先決だ。
「こっち。お願い」
そう言っていつの間にか背後に回りこんだ暗部に背を預け、あとは戦うしかなかった。
とはいえ、問題だったのは数だけだ。
暗部の手際はすばらしく、取り囲んできた敵はあっという間にその数を減らした。
当然、自分だって早々簡単にやられはしない。
自分が打ち漏らせば背後の男の負担になるとなると思えば、数を頼みに襲ってくる連中ごときに負けられなかった。
とはいえ、得体の知れない術を使う敵に向かってこられたときは、流石にもうだめかとおもったのだが。
「代わって」
そういって背後の男に回りこまれ、とっさに身を翻したものの、気づいてみればその敵以外は地を這い血反吐を吐いているようなのばかりで、どうやら戦力を削られて焦った敵が、最後の悪あがきを仕掛けてきたらしいと知った。
夢中になって戦いすぎだ。
…あまりにも戦いやすかったからだ。
背後の男がどう動くのか、なんとなく分かるのだ。
息が合うとはというのは、こういうことなのかもしれない。
とはいえ、久々の実戦だったとはいえ、クナイを振るい続ける内に、状況が見えなくなっていたことを恥た。
自分が梃子摺っていた敵が妙な術を放つと同時にあっさりとそれを弾き、切り捨てた男のおかげで、なんとか生き残ることができたらしい。 お互い地と泥とでぐちゃぐちゃで、酷い有様だ。
軽口がとっさにでたのは、その姿のせいもあったかもしれない。
…戦いやすさに勝手に親近感を覚えた以外にも。
「おつかれさま。巻き込んで悪かったね」
へたり込みそうなほど疲れているのに、自分よりずっと実力もあり、階級も恐らく上であろう男がそんなふうにしょげかえっているのをみると、なんだか逆にこっちが申し訳なくなるから不思議だ。
「いえ。こちらこそありがとうございました。助かりました」
照れくささを隠すように鼻傷をかいては見たが、男の方はまだ居心地が悪そうにしている。
暗部の癖に代わった人だ。
「あんたといると戦いやすくて。ごめんね?」
そんなこと言われたら、嬉しいに決まってる。
…暗部に、あんな風に鮮やかな戦い方をする男に認められた。
なんて運が悪いんだなんて思っていたのに、その一言のおかげで救われた気がする。
「こちらこそ!ありがとうございます!あの、俺も、すごく戦いやすかったです。おかげで無事に帰還できます」
深々と頭を下げたのは、嬉しかったせいもある。それから…俺は寂しかったんだ。きっと。
これで二度とこの人と会うことがないだろうってことが。
せめて失礼な真似だけはすまいと思っていたのに、男がすっと距離を詰めてきて、いきなり面をはずした。
素顔が見えてしまう。
驚いて目を閉じた途端、唇に柔らかいものが触れた。
「ごちそうさま。逃がしてあげようかと思ったけど無理そう」
「え!?えぇ!?」
「じゃ、またね?…あんた気に入ったから、覚悟しといて」
あっという間に面を付け直されてしまったし、急なことで顔なんてさっぱりわからなかったけど、これは…キスされたんじゃないだろうか。
この男に。
「またねって…なんだよ…!」
一瞬で姿を消した男を、とりあえずなじっておいた。
…そうじゃないと照れくさくて死にそうだったから。


数日後、男と再会したのは自室の窓辺だった。
鳥よろしく木の上に止まっているから慌てて窓を開けたら、ただいまなんていってまたキスしてきて、目を白黒させてるうちに、覚悟できたよね?なんていわれてそれはもう…それはもう想像を絶する目に遭った。
男と寝るなんて考えもしなかったのに、戦ったときと同じく妙に身体に馴染む体温に流されて、結局は最後まで。
翌朝目覚めてからだの痛みに呻きながらも、互いに訳が分からないほど気持ちよかったことをしきりに驚き、それから…そういうこともあるんだろうという話で落ち着いた。
あまりにも違うのに、心地良い。
だから、どうやら運命の相手らしいのが男だったことは…まあお互い目をつぶることにした。


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適当。
すみませんすらんぷぎみ/(^o^)\
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