降ってきた男
「雨、だねぇ?」
確かに雨だ。それもこの時期特有の、空に穴が開いたんじゃないかってくらいの土砂降り。

だが、何もわざわざびしょぬれになりながら言うセリフだろうか?

「上がれ。…それに、風呂入って来い!飯作るから!」
「つれないねぇ?一緒に入ってくれないの?」
くすくす笑いながら、その手で獣をかたどった面を弄び、男が笑っている。

…いつからだったか。この男がふらりと俺の家を訪れるようになったのは。

始まりは突然だった。雨でうんざりしてる所に、今度は何せいきなり血まみれの男が部屋に降って来て、驚きながら顔を見れば暗部だったから、手当てをしないとと、駆け出そうとして足つかまれて…。
そのままベッドに転がされて気がついたら…突っ込まれて無様に喘がされていた。

…まあ、良くあることだ。里の中じゃ珍しいが、外に出ればごろごろ転がってる類の話。でも、あいにく俺はそんなのとは無縁だったから、翌日は身体の痛みと赤い印だらけであることに半泣きになりながら男をなじった。
その返事が振るっている。

「ま、いいんじゃない?俺のモノになったんだし。安心しなよ。俺は俺のモノはすごーく大切にするから。」

俺の人生終わったと、その時は思ったんだが…。

「ああそうだ。コレお土産。それと、風呂は入るけど、先に寝ちゃってたら駄目よー?ま、寝てても起すけどね?」

暗殺任務なんかで手土産買ってきて、任務がなければ毎日のように俺の家帰って来て、飯と風呂と…俺の身体までたかっていく。

こうなると、情が移る。
…俺は元々お人よしなんだ!こんな風に気を引くためにわざわざ血を引っかぶってくるような馬鹿にほだされるくらいには。

「いいから風呂入って来い!飯は絶対食え!…寝ないで待ってるから。」
「うん。久しぶりだし、覚悟しといてねー?」
にこやかに風呂場に消えていく男にしてやられたと思わないでもないんだが、傍若無人なのに空気のように気配の薄いこの男は、どこか危うい。

元々執着は薄いようで、飯がどんなに美味くてもまずくても何も言わない。

そんな男が、なぜか俺にだけ…確かに執着している。

俺を欲しがり、俺が喜びそうな物をせっせと運び、子どものように微笑む。

だから、まあこんな運命もあるのかもしれないと最近では思っている。

「ねぇ。はやく、しよ?」
「こら!ちゃんと身体洗ったんだろうな!?それに、飯が先だといっただろうが!」

…何事につけ、そっちの方にばかり話を持っていこうとするのは何とかしなきゃいけないとも思ってるけどな。

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降るのは雨ばかりとは限らない話?
何故か変なモノばかり湧くなぁ…。 こんなのにでもご意見ご感想等ございましたら、お気軽にどうぞ!


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