てがみ(適当)



「手紙」
「あ、はい。ありがとうございます」
最近良く会うなぁ。この人。
まあ暗部に伝書鳩みたいなことをお願いしてること自体がおかしいっちゃおかしいもんな。
中身がある意味この里の最重要機密だからしょうがないといえばしょうがないのかもしれないが。
それに本当に同じ人かどうかなんてわからないか。格上に幻術使われてたって俺じゃ気づかないだろうし。
「読まないの?」
受け取っただけでほうけていた俺に、いつもはすぐにいなくなるはずの暗部の人が話しかけてきた。
読みたいのは山々だが、流石に人の前で手紙を開けるのは少しばかりためらう。
例えこの手紙が色っぽいもんじゃなくても。
いやむしろそういうんじゃないからこそ泣いてしまうかもしれないじゃないか。
でも、この人は多分悪気があってやってるんじゃないし、返事を貰ってくるように頼まれているのかもしれない。
そう思うと我を張るのも悪い気がしてきた。
何せ元教え子はそういうこと関しては皆無で、どこまでも子どもっぽいというか…まあまだ子どもなんだが幼すぎる部分があるからなぁ。
相手が暗部だからって気を使ったりはできないだろう。
「読み、ます」
封を開けるにはチャクラをかざすだけでいい。
最初はこの封印の方法もろくにできなかったらしくて、同行のジライヤ様にまかせっきりだった。
お陰で時々仕込まれた桃色の幻術トラップに…!ナルトめ!一体何を言ったんだ!手紙にジライヤ様のものと思しき、独り身にはエロスが必要だと思ってサービスしておいてやったぞとか書いてある紙切れも混ざってて、泣きそうになった。
しかも相手がおかしかった。
女体変化したナルトに鼻血を吹く俺がいうのもなんだが、別に俺は男の裸で興奮したりは…まあちょっとして驚いたというかなんというか。
だ、だって。咥えられたんだぞ?術とはいえ反応するだろうが!
気持ちよかったのがまた俺に大いなる悩みをもたらしたんだがソコはまあ置いておくとして。
それ以来あけるときは細心の注意を払うようにしていたが、この所は覚えた手の術が楽しいのか、ちゃんとナルトのチャクラで封がしてあって、それもまた自慢げに新しく覚えたと書いてあって微笑ましく思った。
着実に腕を上げている。それが嬉しくて、まだまだ子どもっぽい所があることに苦笑しつつ癒される。
重大すぎる責務を勝手に背負わされても、折れずにまっすぐ伸びていくあの子が少しまぶしすぎると思うこともあるが、俺もがんばればイイだけの話だからな。
パカリと開いた手紙…偽装のためか今回は桃色の…それこそサクラくらいの女の子が好みそうなレターセットだ。まあアイツのことだから何も考えずに綺麗だからとかいう理由で選んでそうだけどな。
「かえって、くる…!」
「そうみたいね」
嬉しさで涙ぐむ俺の背を、最近良く見る暗部の人が撫でてくれた。
人の情けが身に染みるなあ…!心配で色々贈りたくなっても、こっちからはせいぜい手紙とか小さな荷物が限度だったからやきもきさせられたもんだ。
腹巻贈って怒られたりなぁ。使ってくれてるみたいだけど。
ジライヤ様にもとんでもないものを仕掛けられたとはいえ面倒を見てくださってるんだしと思って、マフラーも贈っといた。
その次の手紙にこういう細かいものを自力で作りすぎるから、縁遠いんだといわれて落ち込んだけどな…。
トラップと同じで法則性を持たせたり、かと思いきやそれをフェイントに使って色々変えてみるのがおもしろかっただけなのに。
「ありがとうございます。む、迎えにいてやらなきゃ!飯でも…いや、アイツのことだからラーメンか?よっし!餃子と替え玉無制限で…!」
「かえって、きちゃうね」
舞い上がりきっていた俺は、その言葉に冷や水を浴びせられたような気がした。
…任務には忠実でも、あの子に遺恨がないとは限らない。優秀であるからこそ命令に従うが、内心はどうかなんてだれにも言わなきゃわからないもんだ。
「帰って、きます。里を、あのこの大切なモノを守りぬくために」
失いかけた絆を、新たに気づいた絆を、仲間を守り、戦うために。
誰にもそれを邪魔させたりはしない。
自然と視線はにらむようなものになっていたのかもしれない。
ふっと面の奥で息を吐く音が響いて、もしかしてそれはため息だったのかもしれない。
「うん。それはいいの。たのしみだし。…でもイルカせんせったら、ぜんっぜん俺に気づかないんだもん」
「え?」
予想外すぎる。誰だこの人。俺のことイルカ先生なんて呼ぶのは、それもちょっとだけ語尾が足らなくて、舌っ足らずな感じがするこの呼び方は…。
「えーっとね。三年もあったのに、何もいえなかったなぁって」
「なに、やってんですか、カカシせんせい」
呆然としつつも腕はしっかり掴んで逃がさない構えの俺だ。
だって逃がせるわけないだろ?この人何考えてんだ。まあ秘密にしろっていわれたならまだしも、俺に位言ってくれたっていいじゃないか!隠す理由はないんだし!
「ナルトに会いに行くときは変化とかしていってたんですよ。でも最近はこの面とマントだけで誤魔化せるって気がついて。アイツ鼻はいいけど匂いとかチャクラを誤魔化されるのに慣れてないから」
「はぁ」
「…それで、そのままあなたに手紙を渡すようになりました。でもまさかアンタまで気づかないなんて」
「う!そ、そりゃすみませんね!どうせ中忍ですよ!」
時々は知ってる人かもと思ったことは実はあった。気配が優しいし気の遣い方もどこかであった事があるような気がして。
でもまさかのまさかだろう。だってこの人里一番ってイってイイほどの人で、こんなお使い任務に出すのはおかしすぎるじゃないか。
「中忍だからじゃなくて、お手紙に夢中だったからですよねー?ま、それのおかげでちょっと悪戯しちゃいましたけど」
「いた、ずら…!?」
「えっちでかわいいイルカせんせ。ごちそうさまでした」
「あれは!あんたかああああ!」
そうだ。おかしいと思ったんだ。綺麗なお姉さまとかならまだしも、この人だった。素顔なんて玉に一緒に飯食ったときしかみたことなかったのにやけに鮮明で…。
「うん。なんか幻術掛かりかけてるっぽかったからそのままおいしく頂きました」
「へ?」
待て待て待て。今なんか聞き捨てならない台詞を…!?
アレは、幻術じゃなくて、ホンモノか。
「つっこんでませんよ?まだ」
「当たり前だ!…まてまてまてまちなさいまだってなんですかちょっと!」
「ま、こういうことですね」
そう言って、男は強引に俺の唇を塞いだ。つっと背中の傷をなぞり、そのまま指先が尻の穴までぐるりと撫でていく。
ここまであからさまにされて、流石に鈍い俺だってその意図くらい分かった。
「おおおおおおれは!おとこ!です!」
「そうねぇ。…中忍だし」
「うるせぇ!中忍なめんな!皆一生懸命生きてんだぞ!」
そうだ。一生懸命ナルトを心配して、それからこの人のことも心配してたんだよ。
…つうかちょっと前にそういえばカカシさんのことを暗部の人に聞いちまったよ…。任務のことだから言えないでしょうが、無事であればとかなんかそれは里で待ってる妻か俺は。
そういえばそれからだ。来る暗部の人が同じになったのは。…そもそも最初から全員同じ人だったんだろうけど!
「命令とかじゃないって言っても悲壮な顔で覚悟決めてくれそうで言えなかった」
泣きそうな顔でそんなこと言うな。面を外すな。縋りつくな。
…抱きしめてやりたくなるだろうが…!
「命令じゃないのはわかりました。卑怯な悪戯に関しても」
「ごめんなさい」
謝ってるのにどうしてかケダモノを前にした小動物の気持ちになるのは、謝罪よりも欲望を抑えることに、この人がその理性を使っているからかもしれない。
ぎらぎらした視線は、俺を捕らえている。まるで逃がさないとでも言うように。
「か、かんがえます!だからそのえーっとですね!」
「頂きます」
「へ!?わぁ!ちょっと待てなにすんだ脱がすな!」
「だって、イルカせんせが考えてるときって、結論決まってるでしょ?」
ねぇ。だから、あなたの全部に触れさせて。
懇願が耳を擽り、押し倒されていることに遅まきながら気づいても、抵抗する気になれなかったのは…きっと。
俺だって多分ずっと前からこの人の事が。
「優しくろ。痛かったら二度としません」
「了解」
くすりと笑ったカカシさんの顔は驚くほど晴れ晴れとしていて、飢えたような瞳とはまるで違っていた。
食われるんだろうな。これから。
それをまあいいかと思っている自分がいる。
背に回した腕にうっとりと目を細めたケダモノ。
…これが自分のモノになるならまあいいかなんて不遜なことを考えておいた。


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適当。
いちゃぱらー。
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