抱擁
傷だらけでも、この力尽きて眠る子どもよりましだ。
…いや、もう子どもではないのかもしれない。
里を救ったのは確かにこの四代目の忘れ形見なのだから。
背に負った身体はまだ小さくて幼さを残す寝顔は無垢ですらあるのに、友を守るという誓いを果たすために最後まで戦うことを諦めないだろう。
自分の成し遂げ得なかったそれを…。
「あの人もきっと喜ぶだろうねぇ…?」
それが嬉しいのか恐ろしいのか…判然としない思いに浸る間もなく、背中の気配が身じろいだ。
…きっと、もうすぐ目を覚ます。
歩みを止めることはなかったけれど…どこか現実身の無い気分を胸にわだかまらせたまま、俺は里に向かった。
*****
帰って来て、里中が新しい英雄を歓迎した。
復興には時間が掛かるだろうが、新たな希望が里を、人々の心を支えてくれるだろう。
いつものように一歩引いたところで涙ぐむあの人を視界の端に捕らえながらそう思った。
昔から恋心を抱いていた相手に抱きつかれて目を白黒させているこの子どもが、きっと未来を変えてくれる。
…この腕の中に閉じ込めたと思ったあの人も、攫っていかれてしまうかもしれないけれど…。
理由のない不安は、子どもだとばかり思っていたナルトが、もはや自分よりずっとしっかり立っていることに気付いたからかもしれない。
…歓待の声は収まりそうもなかったが、ナルトも十分傷ついている。
いくら九尾の器といっても、あれだけチャクラを使い、戦い続ければもう立っているのも辛いはずだ。
現に俺が連れてこなければ自力で里に帰れたかどうかすら怪しい。
適当な所でサクラに声を掛け、医療班のいそうなところに連れて行くように指示した。
はっとしたような顔で慌ててナルトの傷を検分し始めるサクラと、それに驚いて顔を真っ赤にしているナルトを尻目に、俺はあの人の下へ足を進めた。
涙ぐんで、浮かべた笑顔は俺を誘うようにすら見えて…。
そっと隣にたって肩を抱くと、あの人は照れたように笑い返してくれた。
…俺の、邪そのものの思いなど知らずに…。
「帰ってきました。あの子は…夢をかなえた。」
「そうですね…。」
やっぱりね。この人の一番はずっとあの子だったから。
開口一番予想通りとはいえキツイ一言を耳にする羽目になって、ソレでなくても戦闘で疲弊した身体がふらつくような気さえした。」
「それに…なによりアンタが。…ちゃんと帰ってきてくれた…!」
いつも抱きしめるのも、唇を奪うのも、閨に持ち込むのも…全部、俺からばかりだった。
だから今の状況が信じられない。
飛びつくように抱きついて、口布を乱暴に引き下げて…。
それから噛み付くようにキスをしてきたのがイルカ先生だなんて。
「ふっ…」
まるで夜を共にした時のように色を含んだ吐息が、俺の耳を撫でていった。
「ん…っ!」
背筋をぞくっとさせるほど甘いソレにクラクラする。
いつだって、俺はこの人には叶わない。
「ごめんなさい。」
「俺はアンタみたいに強くないけど…それでも忍なんだ!負傷者がいたから退いたけど…今度は最後まで一緒に戦うからな!」
力強く宣言する言葉とは裏腹に、その目じりを涙が飾っている。
かすれた声と爪が刺さるほど強い抱擁に包まれて、自分の動揺がどんなに下らないか思い知った。
俺はこんなにも求められている。
「次なんかないように…出来るだけがんばってみます。」
「出来るだけは余計だ!絶対に!…無茶なマネはしないで下さい…!」
周りに人がいても多分ナルトの方ばっかり見てるからイイと決め込んで…。
俺はその怒りと失う恐怖にゆがんで震える唇をふさぎ返した。
帰ってきたこの人の腕の中で。
 

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帰還祭!のようなそうでないような?
来週はヤマトげっそげそ祭でもやろうかな!…きっと仮設住宅建設班として枯れる寸前までこき使われているはずだ!
まあその前に…色々やることあるのでそっちをやりますが!
…あいかわらずではございますが、ご意見ご感想等ございましたら、お気軽にどうぞ!

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