ある日森の中(適当)


任務中に探していた敵を見つけて、さっさと後続隊に伝えようと伝令を飛ばして、ついでにこっそり後をつけたまでは良かったんだ。
そこに見たくもないモノを見つけてしまうなんて思わなかった。いっそ合流するまで待機していればよかったと後悔しても後の祭りだ。
「こいつぁいい鴨じゃねぇか!まさかこんな大物が出張ってきてるとはな!」
「写輪眼のなくなったお前にどこまで抵抗できるんだろうなぁ?」
「瞳術が使えねぇんじゃ抉り出してやる価値もねぇが…綺麗な面してんじゃねぇか。元火影の奴隷なんてな。金持ち共が喜びそうだ」
「えー?めんどくさーい」
「先輩…流石に空気読んであげましょうよ。この人たちも一生懸命なんですよ?」
「へー?お前までイルカ先生みたいなこというんだ。随分仲がいいんだねぇ?」
「い、いいいいえ!そんなわけでは!普通です!ええ!断じて先輩の想像するような関係ではありません!至って極々普通です!」
「ふぅん?ねー?この間一緒に一楽でラーメン食べてたの、ばれてないと思ってんの?」
「ひっ!」
ナニやってんだオイ。イルカ先生が任務でつまんないから、ちょっと外遊行ってきまぁすなんて、盛大に拗ねやがった後、ブツブツ文句言いながらうちを出て行ったのは二日前。
…こんなルート、火影クラスの忍は普通通らない。ってことはあの野郎、俺を待ち伏せしてやがったな…!
「へっ!仮にもほーかーげーさーま、がこんなナヨナヨした野郎だとはなぁ?木の葉も落ちぶれたもんだ」
「おまけに護衛も馬鹿そうだ。やっちまうぞ!」
あーあ。馬鹿だろコイツら。まあ馬鹿じゃなきゃ五大陸最強と謳われる火影にちょっかいなんて掛けないか。
それにしてもいくらなんでも間抜けすぎる。余裕があるから遊んでるんだってコトくらい気付けばいいものを。しかも今あの男は盛大に機嫌を損ねているはずだ。
なにせ俺が勝手に任務を引き受けたって拗ねに拗ねて、ついでにごねて暴れて職権濫用しかけて俺にぶん殴られて、最終的に早く帰ってこなかったら一楽のラーメン食べられなくしてやるとか言い出したからな。
流石にカチンときて、テウチさんに傷つけたらゆるさねぇぞって怒鳴ったら、アンタは俺のなんだから他の男の話するなとか頭のねじが吹っ飛んだようなことを言いやがって…。しかも一楽の周りに結界張っちゃうんだから!イルカ先生だけ入れなくしてやる!とかな。本気で実行できるのが分かっているだけに、馬鹿馬鹿しくても止めざるを得ない。周りが迷惑するからな…。
一応火影だからとはいえ、無駄に有能というかんというか、その能力はもっと別の所に活かして欲しいもんだ。政務をしっかりこなしてるから文句もいえん。
最終的に構ってくれるなら許しますよ?なんて随分上からモノを言って来たから、イラっときておう覚悟しとけよ?帰ってきたら覚えとけって怒鳴りつけてそのまま任務にでたんだ。
いやなタイミングで思い出しちまった…。
「イルカせんせー。いるんでしょ?どうしたいー?コイツらと遊んでやってもいいんだけどー」
ああクソ。一応潜んでるんだから、黙っていればいいものをこの男は…!
八つ当たりも兼ねてるんだとしても、護衛も連れてるんだから少しは気を遣え!
「テンゾウさんがかわいそうでしょうが」
「なにそれ!テンゾウなんかどうでもいいの!俺には?我慢したんだけど?勝手に里出てった薄情な恋人をずーっと待っててあげたのにそういうこというんだ?」
思った以上に駄目そうだな。里なら一緒に風呂にでも入って適当に構ってやれば一発で直るんだが、ここでこれだけこじらせて機嫌の悪いこの男をどうこうするのは難しい。
「増援か!」
「まあいい。揃って全員ぶっつぶしちまえ!」
血気盛んでアホな連中だ。こんなにすぐ出てくるヤツが増援な訳ないだろうが。むしろそこにいるのがある意味増援だ。…もういい。面倒だ。ここらで伸してから運んだって問題ないだろう。多分。
ちょうどいいストレス発散にもなるしな。
「うらあ!」
まずは一匹目の脳天に拳を落とし行動不能にしたあと、二匹目と三匹目も揃ってぶん殴り、ふっ飛ばしてやった。思いの他弱すぎて拍子抜けするほどだ。
憂さ晴らしも兼ねて思いっきりやってやったから、しばらく身動きも取れないだろう。ざまぁみやがれ!にしても手ごたえがなさ過ぎるけどな。
「…帰るぞ?」
かっこいいだのなんだのきゃーきゃー騒いでる火影だと信じたくないイキモノの頭を鷲づかみにしてやった。
「はーい!」
なんだ?機嫌が良くなってる?…まあいいか。とっとと帰ろう。
「…あ、僕、ここ片付けてからいきますんで」
引きつった顔で遠慮してくれたヤマトさんに会釈して、さっさとその場を後にした。
帰ってからも報告書を出す間も早くしろとぶーぶー文句を言っていたわがままな一応火影様は、膝枕を要求してきたり、かまえかまえと大層五月蝿かったんだが、問題はそこじゃなくてだな。
ヤマトさんが帰還してすぐくらいだったか。妙な噂が里中に広がり始めたのは。
…里最強の男ってなんだそりゃ?
確かにやたらと側にいさせたがるこの男のせいで、刺客とやりあうことも増え、おかげで大分腕は上がったと自負してはいる。が、そんなもん外に漏らした覚えはないんだが。
それにニヤニヤしながらコソコソ話される事が増えて不愉快なことこの上ない。
「うん。そーね。最強かも。ねー?」
噂に関して不審に思って相談した相手がまずかったんだろうか。一応火影だってのにへらへら笑うばかりで埒があかない。
「理不尽だと思いませんか?」
そう相談した途端、ヤマトさんは速攻任務にいっちまったし…。
なんとなくイライラしたまま家に帰ると、今日も文句を言いながら俺を枕にしようとする上忍が待っていた。
「イルカせんせは男前だもんねぇ?」
「そうですか?」
イライラはしている。勝手に訳の分からん噂を立てられるのは不愉快でもある。
だがしかし。膝に懐いてにんまりと笑っている無責任なイキモノを見ていると、色々銅でもよくなってくるのが不思議だ。
「ね。しよ?」
「し!しません!」
「ヤダ。する」
「なっ!おいこらちょっ…ぅあ…ッ」
ああくそ。いつもこうだ。大人しくしてると思ったら、大抵はこうやって破廉恥な行為に持ち込もうと…!
痛みにはならしてある体は快楽には悲しいほど従順で、それを為す男は熱心すぎるほどに人の体を好きにする事に夢中になっている。それにほだされがちな自分の単純さが呪わしい。こんないい年になって、それでも落ち着かないんだから、きっとコイツは一生このままなんだろう。
…ほっとけないだろ。そんなの。
「していいでしょ?」
「勝手に…しやがれ!」
許可を得たとばかりに嬉々として服を剥ぎ取るイキモノには、口付けついでにいい加減落ち着けと罵っておいた。


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適当。
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