泣いても笑っても最後の1個。 このちっぽけな丸薬が、俺が生涯口にする最後の食物になるかもしれない。 でも。 「アンタは、生きてね?」 そう言って嬉しそうにそれを差し出した男が腹立たしくてならない。 「いらない。アンタが食え!」 無理やり押し込んだそれが飲み下される事はなかった。 強引な口づけ。絡み合う舌は愛撫じゃない。戦いだ。 …硬い丸薬が唾液に溶けて飲み込んだのがどっちだったのか分からなくなるまで、俺たちは戦った。 そうして、全部が溶けてなくなったのに、口づけを解くことなどできなくて。 「馬鹿みたいだ」 「そうねぇ?」 残り少ない体力を情事なんかで使うなんて。 それが馬鹿みたいに幸せだなんて。 …本当に馬鹿だ。馬鹿すぎる。 それでも。 「幸せ、かな?」 「否定はできせんね?」 「こんな時くらい素直になってよ。ソコも好きだけど」 馬鹿みたいにじゃれあってこのまま一緒に飢えて死ぬのも悪くないなんて思ってしまった。 まあ結局…服も着ないでお互いに絡みあったまま暗部に発見されるなんて生き恥を晒す羽目になったんだが。 それでも、まあ生きてるのも悪くない。 「ね。こっちも食べて?」 「ん。アンタも」 「俺は後でアンタを頂くから」 こうやって今日も馬鹿みたいにじゃれあっていられるからな? ********************************************************************************* いちゃいちゃ! 寒い時はくっつくのがいちばん!とか言ってみるのでした。 |