「それどうすんですか」 「いやどうすんですかって言われても、アンタが拾ってきたんでしょうが…」 呆れたことにこの馬鹿は、今自分が勝手に居候していることも忘れて家主の許可も取らずに連れて帰ってきやがったのだ。 この、明らかに生まれたばかりで、一人ではいきて行けないと分かりきっているイキモノを。 「捨ててきます」 「待て待て待て。待ちなさい。落ち着け。あと泣くな」 顔布も上げずに傷ついた少年の顔で家を飛び出そうとした男をとりあえず羽交い絞めにし、ついでにティッシュも手渡す。 おもいっきり鼻をかんだあと、適当に放ったようにみえたティッシュはきちんとゴミ箱に収まり、どさくさにまぎれて胸元にぐりぐり顔を押し付けてきた。 綺麗にしたからいいとでも思っているのか、こいつは。 「貰い手、探す、か、ら…!」 「アンタが世話きちんと出来るなら飼ってもいいですよ?」 「いいの!?」 何だその心底驚いたっていうリアクションは。 「いいのもなにも、アンタが連れてきたんでしょうが。またほっぽりだしたら生きていけないだろうが」 小さい手は母のぬくもりを探してか、空を掻き、小さい声できゃあきゃあと…これもみゃあみゃあになるのか?犬はこの人のをさわったことがあるからわかるが、猫の鳴き声は弱ったのしかしらないからいまいち分からん。 とにかくほっといたら死にそうということだけは分かるから、猫の買い方を思い出しつつ財布を手に取る。 「まずミルク、それからトイレは…まだちっこいしなぁ?しばらくこのダンボールでいいか。あとペットシーツと哺乳瓶買ってきてください」 アカデミー教師やってりゃこんなことは日常茶飯事だ。 猫拾った、犬拾ったなどと泣きついてくるのは年に数回、繁殖期にぴったりあわせて連れて帰ってきちまうからな。 …第一アンタも似たようなもんだっただろうに、忘れてるんだろうか。 変なの落ちてるって引っ込み思案の女の子に泣きつかれて行って見た先で、面つけたまま転がってたんだからな。 自分と似たような大きさのイキモノの手当てをするのは大変だったんだぞ。 「はい!」 「気をつけ…あーあ。もういねぇ…」 大量に買い込み過ぎないようにして欲しいが、俺の財布、結局置いてったからまあいいか。部屋が狭くなるのは…エロ本と観葉植物くらいしか持ち込んできてないのに快適そうだからそう凄い量じゃないだろうし。 いくつになってもちょっとぬけてるというか、いい加減もうちょっと落ち着いてもいいもんだろうに。 仕事も減らしてもらって、危険な任務も減って、家でゆっくりすごす時間も増えたってのになぁ。 「チビすけ。でっかく育てよ?」 にああと猫らしく返事をしたまだ目も開かない子猫をあやしながら、平和な老後ってのもいいもんだなとほくそ笑んでおいた。 ******************************************************************************** 適当。 どさくさにまぎれて恋人の座に居座ったくせに不安がる上忍とか色々折込済みで大事に飼ってる中忍とか。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |