「いい加減諦めたら?」 したり顔でいうんだから腹が立つ。 「いいえ。諦めません」 止血はした。チャクラもまだある。移動は…自分だけならできるだろうが、この上忍を今移動させるのは危険だろう。 逃げ足の速さには定評がある自分が、一時期にこの人をおいてこの戦場を突っ切って医療班を引っ張ってくるのが一番現実的なんだ。 このバカ上忍が自決しようとさえしなければ。 「いいから。この眼、もったいないでしょ?持ってってよ。札はまだあるし、吹っ飛ばせば多分燃え尽きてくれるはずだから」 人の言うことなんて聞きやしない。こっちがこんなに必死になって生き残る方法を考えてるって言うのに! …どうしようもなく猛烈に腹がたった。 「ちょっと!なにすんの!」 さくさく縛り上げて、ついでに持ってけと煩い方の瞳も残り少ない包帯で塞いでやった。 その上で、喚く男を無視してさくっと印を組んでやった。 「これで、俺とあんたは一蓮托生です。あんたが吹っ飛んだら俺も一緒に吹っ飛びます」 「あんたは…!なにやってんの!解け!」 「あ、自爆用なんで無理ですね。いいですか?俺はこれから医療班連れてここに戻ってきます。それまでおとなしく待ってろ!」 「何やってんのよあんたが死ぬでしょ!?」 「そうしたらあんたも死にますね。だから…俺の無事を全力で祈っといてくださいよ」 「待ちなさいって!」 「気配位はまだ消せますね?あんたの場所は繋がってる俺がわかるんで、ここの入り口は塞ぎます。じっとしてて下さい」 まだもがもが文句言ってる上忍を放置して、空気穴だけ残して不自然にならないように入り口をふさぎ、仲間のいる夜営地目指して駆け出した。 「ざまあみろってんだ!ばーか」 気分はすこぶるいい。絶対に敵に捕まってなんかやるもんか。 「死なせてなんかやらねーっつーの!」 まあ術はハッタリもいい所だったんだけどな。 逃げ足は速いがあいにく探知はそう得意じゃない。念のため探知用に印をつけただけだった。 チャクラ切れと疲労でかすんだ目で、こっちの印も読めなかっただろうから、十分抑止力になるはずだ。 何とか必死に逃げ回り、悲観的で迷惑な上忍の戯言はきっちり覆してやった。 医療班を連れてろくな休息もとらずに折り返したのは流石に堪えたけど、上忍縛り上げた豪の中忍として話題に登り、おかげである意味時の人になった。 遠巻きにされるのは鬱陶しいが、上忍に対してはざまぁみろだ。 これであの上忍は生きるだろう。少なくともあの赤い目に捲いた包帯を自分で解けるようになるまでは。 …でも正直本調子になった上忍に激怒されたらと思うと怖いので、俺は自分の疲労を理由にさっさと先に撤退させてもらった。 必要に迫られたとはいえとっさについたホラになんかすぐ気づくだろうから、後で絶対に面倒なことになるもんな。 結果的にそれが不味かったわけなんだが。 随分たって、なりたて中忍だった俺もアカデミー教師が板についたころ。 …いきなり再会した上忍に脅された。 「あんたのせいで死ぬこともできない。責任とってよ」 「えーっとあー…そのですね」 本気のようだ。つまりまだあの術の本質に気づいていないらしい。 探知が終わった後も、完治するまで術が解けたと気取られないように解術せずに事実を隠蔽したのは事実だ。 でも普通すぐ気づくだろう?禁術なんて普通はそうそう使えないんだから。 確信犯か疑う俺に、男は畳み掛けるように話しかけてきた。 「寝ても冷めてもあんたのことばっかり考えて気が変になりそうなの。…あんな飛び出し方して。ま、自分もああなのかなって反省したおかげで怪我も減ったけど」 「はぁ。それはなによりで」 「だ・か・ら。無鉄砲なアンタほっとく方が危ないってこと。これから宜しくね?」 よろしくされてしまった。それも確実に逃れられい気配を漂わせながら。 「えーっとえーっと!?お、お手柔らかに!?」 「ん。ま、最初は痛いかもしれないけどなれるでしょ?宜しくね」 責任、取らなきゃいけないらしい。納得はできないが。 「まあ、ほどほどに宜しくお願いします…」 にんまりと笑ったのが口布ごしにもわかる。…どう考えても恐ろしいことが待っているとしか思えないのだが。 生き生きとしている男を見ると、奇妙に安堵するのも事実だ。 そんなわけで、毎日にこやかに俺を迎えに来るようになった上忍に、ある意味口説かれている…のか、これは。 どうしたもんだろうと日々思わないでもない。だがどうにも逃れられない気もしている。 そんなわけで、まあなんていうか…若気の至りってヤツには気をつけろよって話。 ********************************************************************************* 適当。 このはじまり? ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |