「追いかけっこ?」 「そう。追いかけっこしよう?」 知らない人についていっちゃいけないっていうけど、知らない人と追いかけっこするのはどうなんだろう? こんなキラキラした髪の子を、俺は始めて見た。白いのにキラキラしてて、顔の半分が隠れてて怪しいけど、目は見た感じいいヤツそうだ。 うーん?どうしたらいいんだろう。 母ちゃんに怒られると恐い。すっげぇ恐い。父ちゃんも恐いけど、母ちゃんのがなんかじわじわくるし、おやつ抜きになったりするからお腹も空くし、さいっこうに怒ったときは笑いながら怒ると父ちゃんがビビるくらい恐い。 …やっぱりやめよう。だって俺コイツのこと知らないし。 「俺、帰る」 「なんで?」 なんでっていわれると答えられない。 だってさ、お前が怪しいからだなんて言えないじゃないか。 怪しいって言われたら傷つくし、任務以外で人が傷つくようなこと言っちゃ駄目だって母ちゃんも良く言ってる。 えーっと。えーっと。なんていおうか。 あ、そうだ!丁度いいのがあった! 「んっと。追いかけっこはしない。母ちゃんの用事があるの思い出したから、帰る」 これは本当だ。 もっと後でもいいけど、おつかいを頼まれている。 おいしい晩御飯のためにも大事な任務だっていっつも言われてるから、ちゃんと買って帰らないといけない。 お買い物メモもちゃんとポッケにしまってある。それをみれば一人でも間違えないように買ってこられるし、ちゃんとできたら褒めてもらえるし、ご褒美だってもらえるかもしれない。 母ちゃんのご褒美は美味しいものが多い。でっかいハンバーグの横に、ちょっとちいさいおまけのハンバーグとか、ケーキの上にチョコも乗せてくれたりとかしてくれる。 もちろん父ちゃんにはないしょだ。だって父ちゃんにばれちゃったら、絶対にずるいって本気で落ち込むんだもん。 まあ大抵母ちゃんからのちゅーで機嫌直っちゃうんだけどな。 母ちゃんが大好きすぎるんだよね。父ちゃんはさ。ちょっと変かなぁって思うこともあるけど、優しいし強いし自慢の父ちゃんだ。良くやったぞって言われるのが大好きだ。 だから、お使いは俺にとって、すっごく…えーっと。じゅうだいにんむ!なんだ。 それなのに、知らないヤツは勝手に俺のポッケに手を突っ込んで、大事なメモをすっと持っていってしまった。 「そ?じゃ、手伝う」 なんでコイツこんなこというんだろう? なんだか恐くなってきた。やっぱりコイツ変なヤツなんじゃないだろうか。 「返せ!」 とられちゃったら買い物ができない。ちょっと泣きそうになりながら、でも負けられないから奪い返そうとした。 「はい。どーぞ」 …な、なんだよ。すぐ返してきたぞ?変なヤツ!変なヤツ! 「…ついてくんな」 知らないヤツに手伝ってもらわなくても、お使いくらいできる。 俺はもうちょっとすれば6つになって、春からアカデミーにだって行くんだぞ! 「あーうん。いや、自分でも驚いてる。ねぇ。えーっと。俺さ、カカシ。はたけカカシ」 変な名前って思ったけど、そういうのは思ってもいっちゃいけないって母ちゃんに言われてるから、何も言わないでおいた。 知らないヤツに名前教えたら駄目だって言うのも言われてるから、視線も合わせないでおく。 「そっか。じゃあなカカシ」 あとで母ちゃんに聞いてみて、母ちゃんの知ってるヤツだったら大丈夫かどうか聞いてみよう。 だって、なんかさっきから落ち込んでるみたいだし。 なんだろ?変なヤツだけど、悪いやつじゃなさそうなんだよなぁ。 「買い物。俺も行く。父さんの夕飯つくんなきゃいけないんだ」 「え!お前料理できるの!すげぇ!」 目玉焼きはできるようになった。あと炊飯器も!よやく?っていうのはまだよくわかんないけど。 …コイツはもしかして、他にもすごいの作れるんだろうか。ハンバーグとか。 「ん。まあ野営するとき必要だし。だからさ、俺も買い物いってもいーい?」 あー…うん。なんかさ、なんでこいつこんなに必死なんだよ。 …買い物、一緒にするくらいならいいよな? 「…しょうがねぇな。行くぞ!」 泣きそうな顔だ。泣いちゃうと前が見えなくなるから、道に迷わないように手を握ってやった。 母ちゃんも父ちゃんも良くやってくれる。あと父ちゃんはぐるぐる回してくれたりもする。肩車も楽しい。 「う、うん!」 いきなり嬉しそうにぎゅっと手を握り返しきた。そっか。やっぱり買い物が不安だったんだな。メモも持ってなさそうだし。 ようっし!ここは俺ががんばらないと!俺よりなんか小さいっていうか、白いし細いし弱そうだもんな。コイツ。もしかして女かな?俺って言ってたけど。 「がんばろうな!」 「うん!」 それが、その後の人生を大きく左右する出会いだったと知るのはずっとずっと先の話。 ******************************************************************************** 適当。 本体絶不調中。 だがしかし続くかもです。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |