失われた記憶13(変態さん)


「あ、あぁん!イルカせんせったら締まりよすぎ…!」
縛り上げられてるってのに悶える上忍。
…どっかにこのまま捨てて来たいが、この男にこんなことをしでかしたと知れたら…へたすりゃ懲罰ものだ。
どう考えてもこの変質者が悪いんだけどな…。
とはいえこれだけ腕の立つ忍を処分するよりは、こっちに火の粉が来る可能性の方が高そうだ。
力のある忍はそれだけ貴重な存在だからな。…たとえ今は変態行為にしか役立っていないにしても。
世の中の理不尽さというものについてひとしきり考えさせられつつ、ぎっちぎちに縛り上げた男を床に転がした。
テーブルの上に並ぶ飯はどれも美味そうだが、こんな状況で手をつける気になるはずもない。
冷蔵庫の中身も疑わしいが、腹は減った。
カップラーメンなら流石に細工もできないだろう。
諦めて冷めていく見た目は美味そうな飯を放置して、湯を沸かすことにした。
その間中、運命だのきつく結び合わさった二人だのなんだの喚くわ喘ぐわ…正直言ってなんかの病気を疑うレベルだ。
おかげで新作カップラーメンの味が碌に分からなかった。
…食い者の恨みは深い。正直扱いに困って拘束を解いて家から放り出すことも考えたが、この際一晩反省させようと決めた。
「不法侵入って知ってますか?ここが俺の家だってどうやって知ったか知りませんが、本来なら処罰の対象だってこともご存知ですね?正当防衛で何されたって文句言えないんですよ?」
「愛のためならどんな障害でも乗り越えて見せます!イ、イルカせんせにならなにされたって…うふふふふふふ…!」
だめだ。埒が空かない。
要するにこんなの相手にしてても時間の無駄だってことだな。
「じゃ、アンタ朝までそうして転がって反省してろ。安眠の邪魔してみろ?承知しねぇからな!」
「はぁい!であったその日に緊縛調教プレイなんて…!流石俺の魂の片翼!永遠の番!運命の…あぁん!」
なんだか知らんがまくし立てるわけの分からん台詞に苛立ったので、とりあえずけり転がしておいた。
睡眠不足は体に悪い。呻き声というか、むやみやたらに荒い呼吸は確かに耳障りだが、とにかくこういうときは全部忘れて寝るに限る。
「はぁ…」
縛り上げられたままの男をさわやかな早朝に見るのも嫌だが、この際睡眠時間の確保が優先だ。
「イルカせんせ…!あ、ん…っ!」
不穏な物音から意識を遮断し、とにかく布団にもぐりこんだ。
これ以上事態が悪化しないことだけを祈りながら。


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変態さん。
じわじわつづいてしまう(;´Д`)
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