失われた記憶12(変態さん)


とりあえず俺を宥めようとして泣き崩れた同僚たちを今度は逆に俺が落ち着かせ、何とか引継ぎだけはすませることができた。
何だかしらないが受付にくる忍たちまで涙目だったのはどういうことなんだ。
…まあ記憶が戻った今思えば、駄犬がまた新しい変態行為に手を染めたってことに、そろって怯えてただけなんだろうけどな…。
あとは…俺の殺気か…。受付の中忍がいきなり実戦さながらの戦いっぷりをみせればそりゃ驚くよな…。
だがそのとき正直言ってさっぱり事態が理解できていなかった俺は疲れ切っていたし、なにより同僚たちがしきりにもう帰れと泣きついてきたから、そのまま帰ってゆっくり休むつもりだった。
…できれば、だが。
そして案の定ある意味予想通りに、ことはそう簡単にはいかなかったわけだ。
「イルカせんせ…!」
帰宅途中にどこからかふらりと出てきた人影は月光に照らされて、銀色に光っていた。
なんというか、無駄に目立つ男だ。どちらかというと忍には不向きな色彩だということが良く分かる。
うっとりと目を細めて俺を見つめる瞳からして派手だ。いつの間に額宛をはずしたのか、色違いの瞳は作り物めいた美しさで、これで変態でなければきっと…いや変態でもくノ一なら引く手数多だろうに。
まあ当然ながら俺にとっては何の関係もないことだが。
いくら見てくれが良くても実力があっても、変態は変態だ。
同性の変質者など抹殺の対象にはなっても、間違ってもねんごろになりたいなどとおもわないし、まずもって普通はその手の事態にはならない。
待ち構えていた男に目もくれず家路を急いだ。
正直言って相手はかなりの強敵だ。そしてなにより頭のねじは1本所か100本は抜けている。
つまり一々相手にしていたらこっちの身が持たないってことだ。
するっと通り抜けはしたが、当然の顔をしてひたひたと後をついてくることにも気づいていた。
さっきのそぶりからして諦めないだろうと思ったがやっぱりか。
「おい。俺はこれから家に帰るんだ。ついてくんな!」
上忍に対する口の利き方じゃないことも分かっていたが、我慢できなかった。
…あの苛立ちは、今思えば約束を破られたことに対してのものも混ざっていたのかもしれない。
そう思うほど俺は変質者に対して激しい怒りを感じていた。
「…そ、そうですね…!今日知り合ったばっかりって言う設定…!」
なぜか興奮している様子を隠そうともしない男は口の中でもそもそ何か言っていたようだが、振り切るように走り出した。
家の中なら安全だ。結界もトラップもたっぷりしかけてあって…間男がどうのと…あれ?そういやなんでこんなに強固な結界が張ってあるんだっけ?
どうにも頭が痛くなってきた。
それもこれもきっと背後からついてきていそうなあの男のせいだ。
一応は引き下がったようでいて、全く油断できない気がする。
なんでこんなに不安なんだ?ここは俺の家なのに。
結界の中まで駆け込んできたっていうのに、家の扉を開けるのが恐ろしい。
…その先に、何かが潜んでいそうな気がして。
「くそ…っ!」
苛立ち紛れに扉を蹴破るように開き、さっさと鍵をかけた。
うちにはいつも通りの静寂…ってなんだ?なんか美味そうな匂いが…!?
「イルカせんせ…!おまたせしました!ささ…いっぱい食べてくださいね…!あ、後で下半身のバナナもいかがですか…!」
「うぎゃああああ」
絶叫した俺に朗らかに笑った男は…そのまま俺の手にホカホカと湯気の上がった美味そうな飯をさしだしたのだった。
…俺がすぐさま危険生物を縛り上げたのは…ある意味当然だったと思う。



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変態さん。
うっかり変態さんの勘違いを助長するイルカせんせの明日はどっちだ…!
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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