月夜(適当)


  日が落ちるとまだ少しばかり肌寒い。まだターゲットの到着まで時間があることを考えると、ありがたくない程度には。そう思ったら、急に笑いがこみ上げてきた。
 これまでは任務中に寒いなんて思ったことがなかったからだ。
「どうしたんですか先輩?」
「ん。なーんでもない」
 この身に纏う装束も着慣れてはいるが袖を通すのは久しぶりで、プロテクターをつける間も小声ですげぇホンモノだとか、かっこいいだとかこどもみたいなことを呟きながら目を輝かせていた人がいてくれなかったら、恐らくはただ服を着るというだけの行為が面倒で仕方がなかったはずだ。
 憧れだったことを隠し切れず、喜びに浮き足立って俺を見ていたくせに、任務に出る直前になって急に真剣な顔をしてご武運をなんていうから勃つかと思った。
 敵に捕まれたり術を食らったりしにくいようにとはいえ、こんな風にやたらと体の線をあらわにする服だと余計に気まずいだろう。
 俺は平気だけどつい先日やっと手に入れたばかりの恋人は、未だに俺の風呂上りに慌てるし、着替えもそっと見ないようにしてくれるかわいい人だ。
 こうなる前は堂々と服脱いで一緒に風呂だって入ったことあるのにねぇ?
 いざってときも何をされているか分からないのか、おたおたと身をよじるばかりですぐに押し切るように加えた愛撫に流されてくれた。
 不思議と抵抗はなかった。同性となんて考えてもみなかったらしいのにね。
 正直言って殴られるどころか、上に訴えられることも覚悟の上だった。いくら好きだと伝えても友情だと思い込んで照れてはくれるものの性的なことなど少しも察してはくれなかったから、強行突破を決めたんだ。これで駄目ならいっそ洗脳でもしてしまおうかとすら考えていた。
 ま、結果的にこっちが驚くほどころっと落ちてきてくれたんだけどね。
 やるだけやった…むしろやり倒したあと、目覚めたときの第一声が悲鳴だった。うそだろとかやっちまったとかあとはうめき声も上げてたっけね。だけど一言も俺に対して怒鳴ることも詰ることもしなかった。
 好き、みたいなんですが。って言ってくれた以外、ちゃんとした言葉になってなかったし?
 それが同性にヤられたショックからくる思い込みでもなんでも良かった。俺にとっては結果が全てだ。彼が手に入るなら何だってするつもりだった。
 過剰なまでに人間らしい…忍らしくないあの人が、こんなにもすんなり俺を受け入れてくれるとは思っていなかった。
 腹を括ったっていうのかね。あれも。とにかくそれ以来俺はあの人の恋人だ。俺にとってももちろん。
「あーあ。風強いですね。これは面倒だな」
「寒い、ね」
 言うつもりもなかった呟きを聞き逃さなかったらしい。面の奥の、元から丸い瞳を皿のように更に大きくして、後輩が動きを止めた。
 ま、そうなるでしょ。俺のことを良くも悪くも色々知ってるこいつにとって、俺の行動は信じられないモノになるに違いない。
「先輩。どこか具合でも悪いんじゃないですか!?」
「んーん。でもま、早く帰りたいけどね」
「…急ぎましょう!」
 常ならぬ反応に驚かされすぎたのか、やたらと張り切りだした後輩の後を追いながら、浮き足立っている自分に気付いた。
 あの人がそばにいてくれるだけで、俺はどうやら随分と変われるみたいだよ。
 焦りの極みにいる後輩には悪いが、今日はこのペースでがんばってもらうことにしよう。
 なんてったって、急いであの人を抱きしめたいからね。
「いました。僕が先行します」
「ん。よろしくね」
 鈍く光る忍刀にチャクラを纏わせる。震える空気に反応してか、それとも後輩の殺気と素早さに気圧されてか、どうやら敵の方も慌てだしたらしい。散り散りになって逃げる連中を、後輩が手際よく木遁で捕らえていく。
 随分やる気だねぇ?ま、俺も頑張るけど、それはきっと後輩のためじゃなくて、あの人に会えるからだ。
 せめてもの礼に後輩の欲しがっていた忍術書でも用意しておこうか。飛び出していくその背に少しばかりの謝罪を込めて、地を蹴った。 
 
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適当。
木製暗部はチャクラ切れ寸前までがんばったと思います。(木の葉病院に連れて行こうとしたのに逃げられておっかけた先でイチャパラ目撃してry

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