始まりの夜(ヤンカカモノ)

ヤンカカモノ続き〜?とりあえず子ども編?


穏やかな笑顔と落ち着いた、いたわりに満ちた言葉たち。
まるで聖母のようなそれを、時折深い闇が掠める。

それはきっと失われた記憶だ。

だから俺は、受付に座るイルカをみると、あの頃のことを思い出す。
あどけない笑みと、その怯えた瞳を。

*****

「ほら。ついたよ。」
抱き上げていた体をそっと下ろすと、不安そうな顔できょろきょろと辺りを見回している。

「ここ。どこ?」

か細い声は質問というより独白のようだった。
意識してかしないでか、俺の腕を掴んだままうつむいて零されたその言葉は、不安と、そしてどこか呆然としたようにさえ聞こえる。
イルカは、きっと何が起こっているのかわかっていない。

「さっき言ったでしょ?俺の家。」

といっても、里の中心から一番離れていて、里長の目も届きにくい隠れ家の一つだが。
既に結界も強化した。

これで、イルカがここにいることが気付かれるコトはないだろう。…まだ、しばらくは。

「も、もう里についたの!すごい!あ、でも、俺報告…!」

僅かばかり正気付いたのか、その黒く潤んだ瞳を見開いて慌てている。
…報告なんて、させるつもりはない。そもそも同行者がイルカを置いて里に逃げたのだから、その責任はそいつらにある。

里がいらないというのなら、俺のモノにしてもいいだろう?

「大丈夫。俺が済ませたから。…これで、ね?」

まだ落ち着かないイルカに、そっと俺の式を渡してやった。
白く温かいそれは、羽を折りたたんだままおとなしくイルカの手の中に納まっている。

「温かい…!それに、凄くおとなしいね。かわいい…!」

輝くような…あどけない笑顔。イルカは幼い。…だからきっと、手に入れるのは容易い。

「そうだね。」

白く小さいそのまがい物の鳥はそれでも生きているかのように振舞うから、きっとイルカを慰めてくれるだろう。
そう思って与えたが、予想以上にイルカは鳥に夢中になっている。羽に触れて頭を撫でて頬ずりして…。

だから消した。

「え!あ…」

手のひらに残るのは、一枚の紙切れ。
その残念そうな声が、俺にはぞっとするほど心地よかった。

イルカはだれにも、渡さない。

「ああ、ごめんね?これもチャクラを使うから…。」
「ううん。」

もっともらしいことを言えば、イルカは残念そうにしながら、それでも俺に笑ってくれた。
素直なイルカ。手のひらの寂しさなんてすぐに忘れさせてあげる。
イルカが見るのは俺だけでいい。

式に乗せて飛ばしたのは俺の任務報告。
それと休暇申請だけ。

だから、イルカは知らないでいい。

俺のものになったってことも、もう戻れないって事も全部。
…今はまだ。

「お腹、減ったでしょ?すぐ用意するから。」
「え!」

俺の腕を握り締めていた手をそっと引き離そうとしたら、とっさにイルカがしがみ付いてきた。
俺を求めて。

一人への恐怖に怯えたその瞳が、俺だけを映している。

だから、思わず抱きしめていた。…何処にも逃がさないように。

「大丈夫。どこにもいかないよ?」

「う…あの…!…ありがとう…でも、大丈夫だから…」

照れくさそうに鼻傷を掻いて微笑むイルカは、きっとすぐに俺に馴染む。
愛し、守り、そして愛し返すモノを。…失ったソレを、イルカはずっと求めていたのだから。

「ふふ。一杯食べようね?怪我、治さないといけないから。」
「うん!」

あどけない笑みは子どもらしく純粋で。
俺を離さない細い腕に、今日はただ、温かい食事と、それから二度と離れない腕を上げようと決めた。

いつかは、その全てを自分のものにするけれど、今はまだ。

だが、その日は、きっとそう遠くないだろう。

黒い瞳に移る自分が、獰猛なほどの欲望を光らせて…その牙をむく日を待っているから。



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一応ヤンカカモノお子様編?
あ、あれ?いちゃいちゃへんはどこに…?
がんばるー!
まあ誰も待ってない気がしないでもないが!
ご意見ご感想など、お気軽にどうぞ…!

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