しょうねんきのおわり(適当)


「やりたい盛りのガキ二人を一緒の任務なんかにつけた方が悪いんじゃないですか?おまけにこの人かわいーし。中身も最高なんだから見逃がすわけないでしょ?」
開き直った生意気なガキなんて、一番タチが悪い生き物なのは間違いない。
憎まれ口を利いたほうを庇うように立つ方は純真といっていいほどだが、行動力があるし、なによりもう一人が。
…凄まじい速さで上忍で暗部になったこの子は、もう子ども扱いなんて出来ないほど知略に長けている。
今回の任務につけたのだって、本来ならこの子の情操のためでもあった。
忍としては勿論、人として成長して欲しい。
だからこそ、この素直でまじめで何事にも全力投球な成り立て中忍を、暗部との混成部隊なんて無理のある任務に引っ張り出したんだ。
任務自体は順調だった。
最初はお互いぶつかりあったりもしたようだが、お互い意地は張るものの、根は性があったんだろう。
仲間を守るとか、忍道とか、青臭いことをと思いつつ、それもアイツにはちょうどいいとさえ思っていたのに。
見る見るうちに改善していった関係は、唐突に濃密さを増し、いつの間にやら体まで交えるような仲になっていた。
気付いたときにはもう遅かったというか…。
中忍の方もそこそこ腕が立ついいだけあって、外の任務には何度もでていたようだが、所詮火影のお気に入りというヤツだ。
夜伽を申し付けられることもなければ、女を作るわけでもなく、話に寄れば花町にすらまだ行かせていなかったらしい。
片や面白がった連中に連れられ10代の始めにはもう筆卸を済ませ、かと言ってずっぷり嵌まる訳でもなく適当に綺麗な、だが派手な遊び方を覚えたガキだ。
女のあしらいときたらもてない暗部連中に毒を吐かれるほどで、その手の任務に出しても百戦錬磨のくノ一の手管で相手を落としてくるほどだった。
ひとたまりもなかっただろう。それは簡単に想像できる。
ほぼ未経験の子どもを、騙し打ちにしたに等しい。
何とか内々に処分したいが、この様子じゃコイツが諦めるということはありえないだろう。
双方とも慎重派ではあるが、好奇心旺盛と来てる。
…ついでに探究心も。
やりたい盛りってのは事実だろうが、任務中はめんどくさいと身奇麗にしていたコイツがここまでやるってことは…つまり本気だ。
野営中に当たりに響き渡るほどの悩ましい喘ぎ声を上げさせたのも、こいつの策に違いない。
「で、どーすんですか」
ふてぶてしい顔だ。だが、任務中でも診たことがないほど真剣な瞳で射る様に俺を見ている。
部隊長だってのにな。コイツはもう。
…だがこれをおもしろいと思っている自分も確かにいる。
そつなく任務をこなし、要領がいいようでいて常にどこか諦めていたコイツが望んだもの。
お目付け役を命じられていた以上、処罰を覚悟しなくてはならないが、チビの頃からこいつを見てきた身としては、痛快でもある。
せいぜい恋に溺れるといい。若造が綺麗にまとまってる必要なんてないんだからな。
「どうするつもりだと聞いたのは俺だ」
「あんたがいくらお目付け役でも、別れろって言われてもねー?無理に決まってるでしょ?」
「処罰なら俺が受けます。でも、この人は俺のなんで」
俺は暗部で自分より階級が上の相手だってのに、お相手の方も中々芯が強い。
ハッタリじゃなく、多分このガキも本気を出して暴れられたら捕縛なんざできないだろう。もっさりした外見の割りに、その身の軽さに驚いたくらいだ。その上単なる口実のはずだったもう誰も読めないような古びた術式の解読までやってみせたからな。話によると三代目の禁術書庫にも出入りができたらしいから、何個隠しだまがあるかわかりゃしねぇ。
その上、部隊でも群を抜いて素早いコイツと逃げられたら…追い忍なんてものになりたくもないけどな。
無鉄砲なようでいて、このガキも敵に回すと面倒だ。
この手の命がけで我を通す連中は今までも何人もみてきたが、この手の連中に脅しは効かない。
…なら、選択肢は一つしかないだろう?
「…説得しろ。俺は中忍の警護は依頼されたが、ケツの穴まで守れとは言われてねぇからな」
誰が誰を、とは言わない。あの老獪な里長が怒り狂うのは目に見えている。それを押さえ込めるのはコイツより…。
「はい。三代目には俺から」
「イルカ!」
「アンタは下手に喧嘩売らないで下さいよ?最終手段はできれば取りたくないって言ったでしょうが!」
「はぁい…でも無理しないでよ?アンタ無鉄砲なんだから」
「他人庇って怪我ばっかりしてるあんたに言われたくありません!」
この分だともう策はしこたま立ててるんだろうな。このガキはその手のことに向いている。お気に入りじゃなきゃうちに欲しいとさえ思ったほどだ。
直情的すぎて扱いにくいと思っていたが、この分じゃ切れると冷静になる方みたいだしな。
「いちゃつくなら自分の天幕でやれ。声を抑えられないなら結界もな。おめぇらそろって輪姦したいなんて騒いでるのがいるからな」
見てくれならまず間違いなくうちの小僧の方が器量よしだが、こっちのガキも変な色気がある。どうこうしたいと思うやつらがくすぶってるのは事実だ。
「なななな!?」
「あ、だいじょーぶ。そんなくずども、イルカに指一本触れさせないし?」
「アンタになにかしたら、再起不能にしてやります!」
…似たもの同士ってやつだな。こりゃあ。
しょうがねぇ。腹をくくろう。…里長を尊敬しているが、こいつらは一緒にいた方がいい。
今だけの恋ってやつかもしれんが、満喫させてやってもバチはあたるまい。
「おら、なら失せろ!…任務が終わったら一緒に出頭だ」
「ほ・う・こ・くでしょ?受けて立つよ。だってイルカは俺のだから」
「アンタも俺のなんですから、無茶して怪我なんかしたら承知しませんよ!」
なおも騒ぎ続ける連中を微笑ましいとさえ思い出している自分を笑って、少しだけ泣いた。
器量ばっかりいい小器用なクソガキが、もう俺たちの子どもを卒業するらしいことに。


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適当。
(`・ω+´)せんせには勝手な親もどきがわんさかいそう。
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