春色恋模様(適当)


「ひどい…!」
帰宅するなり、いきなり涙目のいい年した、しかも俺より年上の男になじられた。
酷いのは夜も散々やったくせに朝っぱらからさらに人を押し倒して遅刻ぎりぎりまで拘束した挙句に、体力を根こそぎ奪い取っていったこの男の方じゃないだろうか。
こっちはがたがただってのに、嬉しそうに「今日は休んでいちゃいちゃしましょうよー」などと頭の煮えた台詞を吐くから、残り少ない体力を削ってまで思いっきり殴って出勤したのは事実だ。
なんだってあんなに無駄な方面にばかり精力的なのか。任務にでてはへろへろになるまでチャクラを使い果たすくせに。
何を言いたいのかは理解できない。だがこのままでは朝の二の舞を演じる羽目になりそうだ。
脳内を渦巻く罵倒を押さえ込み、状況を確認した。
とりあえず真っ先に気づいたのは、男がパンツを握り締めていることだ。
この男は男相手に欲情する変態だが、気づけば俺もすっかりその仲間入りを果たしてしまったのでその辺は置いておくとして。
…ついに更なる変態道を突き進み始めたんだろうか。
くらりとめまいを感じつつ、さめざめと涙を流しながらパンツ片手にぽかぽかと駄々をこねる子どものようなパンチを繰り出す男の頭をなでてみた。
相変わらず手触りがいい。そして撫でられるとへにゃっと無駄に整った顔を歪めた後、すぐさまはっとした顔であわてて眉を吊り上げてみる男はやはり相変わらず馬鹿のようだ。
そんな所に惚れたといえば、また拗ねて俺の寝技がよかったからじゃないんですかなどと言い出すに違いない。
とにかく、男は怒っている。そして基本的に俺は男が何を考えているか理解できない。
愛読しているエロ本通りの行動をとらなかったといってはしょぼくれ、ついでに慰めてなどといいながら結局は閨に持ち込むし、俺が棒アイスだのフランクフルトだのはてはバナナなんて口にしようものならきゃあきゃあとうるさいほどに騒いでやっぱり閨に持ち込まれる。
要するに万年発情期でなおかつちょっと馬鹿。そしてある意味悲しいことに、男は上忍で実力もあるので、だれもその行動を止めてくれない。
だがなんだかんだ言いつつ、そんな所にうっかり惚れた自分が残念すぎて泣けてくる。
そういえば怪しげな通販を頼んで、しかもうみのカカシなんて名前で俺の家に届くようにしやがったから、中身も見ずに箱ごと燃やしたのはついこの間のことだ。
もしかしなくても、ろくでもないことをたくらんでいるに違いない。
だがこのパンツは確か…。
「イルカせんせいったらひどい!こんなことでごまかされないんだから!こ、こんな…こんなパンツ…!」
「気に入らなかったんですか?」
ご機嫌取りに撫でつつ様子を伺うと、やっぱりまたへにゃりと頬を緩ませてから、きっと睨みつけてきた。馬鹿でかわいい。
「気に入るわけないでしょ!これ…!どこの男連れ込んだの!」
殺してやるだの何だのと物騒なことを喚く男に、ようやっと事態を理解した。
そういえばこの男は早とちりも多いのだ。上忍の癖に。
「あんたのです。かわいいから似合うと思ったんですが、気に入らないなら俺がもらいます」
白地に散らばる真紅のハートマーク。この柄はないなと思ったが、脳内でこのパンツをはいて嬉しそうにしてる姿を想像したら、意外に似合っていたからついつい買ってしまったのだ。
ちなみに俺はいつも通り3枚セットでセール品を買った。下着にこだわる必要は感じない。
…恋人のもの以外は。
「え!嘘!プレゼント!嬉しい…!」
パンツを持ったまま瞳を潤ませながら熱っぽく俺を見つめる男は、とてもかわいらしい。
まあ、馬鹿だが。
「気に入ってくれたなら良かった。後で履いて見せてくださいね?」
そういって話を終わらせたつもりだったが、なぜか男は俺に抱きついて耳元で熱っぽくささやいた。
「そんな誘い方して…もうずるいんだから…!」
はぁはぁと荒い吐息が耳を打つ。これはまずい。
「まずは飯…っ…ん!」
唇をふさがれてくらくらするまで口内をむさぼられて、ついでに服まであっさりどこかに消えていた。
「後でちゃんと履かせてくださいね…!」
その囁きすら遠いほど欲望におぼれて、気づけばしっかり喘がされていた。
いつも通りに。
*****
「ね?どう?似合う?」
「…そうですね…」
思ったとおり、肌の白く、均整の取れた体つきの男には、随分な柄のこのパンツも映える。
何より嬉しそうにくるくる回って見せているのが想像通りで少し笑った。
「もうもう!イルカ先生ったらかわいいことしてくれちゃうんだもん!我慢できないでしょ!」
うふふーと頭の悪い笑い方をして俺の額を指でつついている。
それが酷く嬉しそうだったから、つい。
「そりゃ、あんたがかわいいからでしょう?」
…で、だ。まあ結果は言わずもがなだったわけだが。
「イルカせんせ。大好き!」
甘い甘い蕩けそうな声で囁く男を、これからも甘やかしてしまうんだろうなと思った。


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適当!
春なのであほの子にしてみる今日この頃。
ちなみに罵倒は「こんなことに体力使うんなら絶対怪我なんかするなよ馬鹿」などだと思われます。
ではではー!なにかご意見ご感想等ございますれば御気軽にお知らせくださいませ!

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