慰めてやろうと傲慢なことを思う。 泣くでもなく叫ぶでもなく静かに壊れようとしている男は上忍で、誰よりも強いと褒め称えられているというのに、どこまでも脆弱で哀れな男だ。 「ほら、もっとこっちきなさい」 「イルカせんせ」 引き寄せる腕に絡みつくようにすがり付いてきた。 親から引き離された子どもの必死さで。 その素振りの幼さに胸が痛む。 誰がこの人をこんな風にしてしまったんだろう。 …誰がこの人をこんな風に…俺の手だけを求めるようにしてくれたんだろう。 俺のために生まれてきたみたいな人だ。 ある日ふらりと俺の前に現われて、空っぽの目をして歩いていた。 その飢えが。俺の皮膚をひりつかせるほどの殺気が。俺にだけ向けられているコトに歓喜した。 …我慢できなかったんだ。 手を差し伸べると、一瞬だけ泣きそうな顔をしてすがり付いてきたから抱きしめた。 それから、ずっと側にいる。 愛しくて可愛くて、物慣れない幼子の激しさで時に俺を乱暴に扱うくせに、すがり付いて離そうとしない。 経験の無い方法で酷使される体は痛みを訴えることもあったが、それを上回る快感にいつだって溺れている。 だって、誰よりも何よりも近くにいける方法なんて、他に俺も知らない。 同じ男でありながら腹の中に男を取り込んで、執拗に吐き出される精を受け止めて、それすらも自分を求めているからだと思うと、狂いそうなほどに満たされる。 俺の名前を甘く、苦く、それ以外の言葉を知らないかのように呼び続ける男は、俺だけのものだ。 欲望の残滓まみれたまま俺から出て行こうとしない男が、クスリともらした笑みに鋭い視線を向けた。 自分以外に感心が向くのがよほどイヤだったらしい。可愛い人だ。 力加減など忘れたかのようにぐっと抱きしめる腕に答え、口づけを返した。 「大丈夫、側にいますよ…?」 そういうと猜疑心で濁った瞳を少しだけ煌かせて、安心したように瞳を閉じた。 「どこにも、やらない」 なんて愛おしい人。 絶対誰にも渡さない。 …この人は俺だけのモノなのだから。 ひそやかな誓いは夜だけが聞いていた。 ********************************************************************************* 適当! 新年なのでめちゃくちゃお互いしか見えてない二人を置いておいてみる。 |