変わった人だ。特に俺なんかにこんなことをしたがるって辺りが。 「ね、気持ちイイ?」 「イイ、から…!」 焦らすためだけに浅く緩やかに突かれるおかげで達することもできなくて苦しい。早くしろと言外に促せば、息を乱したままの男がにんまりと笑った。 「ん。もっと?」 自分だって切羽詰ってるくせに。 あくまでこっちからせがまれているという体を望むのは、この男のたちの悪い癖だ。 「…っるせぇ!とっとと!」 「乱暴なんだからもう。かわいー」 元々ぼさぼさの髪を力任せに引っ張ってやったら、嬉しそうに口付けをせがんで来る。 …自分からは決して動かないまま、唇を触れるすれすれまで寄せてくるくせに、最後まで俺に答えを遣せと強請るだけなんだ。 「ん、…で?どうするんですか?」 「どうするって?」 「俺がしらねぇとおもってんのかってんですよ。中忍なめんな」 女を世話されていたのは知っている。俺とこんな関係に落ちる前から、見合いというよりは種馬のように、代わる代わる女をあてがわれて、その愚痴とも諦めともつかない相談もどきにうっかり乗ったのがそもそもの始まりだ。 火影になるなら一人決めて来いと、そう言われたのも知っている。 俺とこうなってからは、ずっと他の女には手を出していない。エロ本を愛読書にしている割には意外と潔癖な男は、俺に過剰なまでの自衛と貞節を求めると同時に、己にもそれを課した。 というより、この人、本当は他人に触るのなんか好きじゃないもんな。やれといわれれば断らない程度に耐えられるってだけで、望んで触れたことなんかなかったんだろう。 俺に触れるのを恐れるのは、その裏返しだ。 触れたいのに、拒まれることを、ただ耐えて受け入れているだけじゃないってことを、何度も確認したがって、それで俺が愛想を尽かすんじゃないかっておびえているくせに、止めることもできないでいる。 厄介な、面倒ごとの塊のような男。…だが、あいにくと、変わっているのは俺も同じだ。 「…いらないもん」 本当に嫌なことがあると、一人で黙って耐えて、でもこうやって俺がそばにいると子供みたいになることも、こういう関係になって初めて知った。 自分の許容範囲を自分でもわかっちゃいないんだ。この人は。 平気なフリはできても、どこかでおかしくなっていく。…こうやって、静かに泣き出してしまうくらいには。 「…俺は?俺じゃ駄目なんですか?」 「イルカがいい。それ以外なんて無理。でも」 女を選べと言われて、耐えられないのに理不尽を受け入れるに慣れすぎたこの男は返事もできずに逃げ帰ってきた。俺の元にまっしぐらに。 それが答えだってことを、そろそろ自覚して欲しいもんだ。 「それなら、俺があんたをもらいます。それでいいですね?」 「うん…!いっしょにしんでくれるの?」 幼い言葉とは裏腹に、腹の中にぶちこまれたままのそれが膨らんで苦しい。あらぬ声を上げそうになったが、耐えた。 まだ、話は終わっちゃいない。 「いいえ。一緒に生きてもらいますよ」 「…どうやって?」 純粋すぎる子供と理性だけの忍のどちらにもなりきれずに瞳を瞬かせた男を抱きしめる。そう簡単にくれてやるかってんだ。 これは、おれのモノだ。 「五代目には話をつけてあります。あんたは堂々と火影やってなさい。そばにいます。俺が、ずっと」 「うん…!」 返事だけは素直だが、やたらと後ろ向きで疑り深い男はまだ信じちゃいないだろうが、追々思い知らせてやればいいだろう。 内勤の中忍にだって、いやだからこそ色々ツテってもんがある。 「…なら、つづき」 「…やりころしちゃおうかとおもったけど、もったいないから我慢するね?」 ふわりと子供のように笑ってくれた男に理解させるには、随分と時間がかかるだろうけどな。 抱きしめると嬉しそうに目を細めて犬のように鼻を鳴らした。 だれにもやらない。…おれのもの。 そうつぶやいたのはどっちだったのかなんて、後から後から波のように押し寄せる熱におぼれてしまって覚えていられなかった。 ******************************************************************************** 適当。 らぶ。 |