祝3(適当)


 触れる気なんてなかった。…なーんてね。多分嘘だけど。
 あの日からずっと忘れられなくて、そのくせ近づくのも許しがなければできないくらい怖かった。なにせ暴走する自分が簡単に想像できちゃったからね。
触らないでいられるはずがなかった。
 結局あいまいに胡麻化したそれに簡単に騙されることにも後押しされて、素直でかわいいこの子が誰かのモノになってしまう前に手に入れたくてたまらなくなっている。
 風呂では大分大人しくなったけどやっぱりはしゃぐし、湯船につかった途端におっさんくさいため息をつくところも変わっていなかった。
 そのくせ体はしっかり育って、多少の無茶にも耐えられる程度には鍛えられていることも教えてくれる。
 さて、どうしようか?
 全部忘れてるくせに俺がこうやってここにいる理由なんて知らないで、一緒に住めなんていうこの子を、守れなかった約束を果たしてさっさと忘れてしまうはずだったのに結局は手に入れてしまおうとしている。
 さて、どうしようか?
 俺が洗って乾かした髪を下ろしたまま、俺が着せたパジャマを着て布団に包まって、期待に満ちた瞳で俺をみるこの子を。
 一口で食ったらもったいないよねぇ?
 この子に関してはまともに働いたことのない理性がはじき出した答えなんて、せいぜいそんなものだった。
*****
「布団狭いですか?」
「…んー?それは全然平気。木の上だって屋根裏だって、岸壁でだって休む時は休むしね」
 ならなんで布団に入ってこないんだろう。銀色の髪の毛がつやっつやで、実は触ってみたいと思ってるんだけどな。
 それにせっかくあったまったのに冷めちゃうじゃないか。
 俺んちで勝手に料理しちゃうような凄く大胆なところもあるのに、やたらと遠慮するところもあるから、この人は不思議な人だ。でも、もう俺んちに帰ってきてくれるんだから、家族だよな。
 だから、これからずっと一緒だ。…もう二度と、よそへなんかやらない。
 自分でも不思議に思うくらい幸せで、あとはあれだ。ちょっとだけ驚かせたくなった。
 こっちばっかり驚かされてたもんな。だったらちょっとくらいこっちから驚かせに行ってもお相子だろう。
 といっても、腕を引いて布団に引っ張り込んで、上に乗っかるはずが、腕を引いたのと同じタイミングで俺の上に乗っかってきたのは暗部の人の方だった。
「…重いです」
「うん。そうね?…ふふ」
 笑ってるだけだ。たったそれだけなのに、なんでか妙にどきどきする。
 色っぽいっていうのか?なんかこう、もうちょっとで鼻血が出そうな、そういう気配がする。
 重いはずなんだ。でも体重を感じない。それなのに手足が動かない。すごいな。さすが暗部だ。驚かせるなんて無理だったのかもしれない。
 脊髄反射で体が動くことは俺みたいな駆け出しでもあることだけど、この人だったらもっとずっとたくさんの修羅場を潜り抜けてきてるに違いない。驚く前に体が動いちゃったんだろう。きっと。
 ちょっと残念だ。でもまあ怒らせないですんだみたいだから、さっさと布団に入ってもらおう。
「驚かないんですね?」
「んー?驚いたよ?…ね、どうしようか?」
「え?」
「どっちがいいか迷ってるんだけど、やっぱりはじめてみてから決めようかな?」
 得体のしれない迫力を秘めた笑顔でそう言った人は、着せてくれたばかりのパジャマをあっさりとひっぱいでいった。

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適当。
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_(:3」∠)_もうちょいつづきます。週休1日生活3か月目にしてねむくてしかたがない。

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