新年だかなんだかしらないけど、めんどくさい。 「今年もぜひ良しなに…」 「こちらこそよろしく頼みますぞ」 こーんな型どおりの挨拶のためだけにわざわざ俺引っ張り出さなくてもいいと思うんだけど。 ま、確かにこの宴会の豪華さなら狙われる可能性はありそうか。 でもねーえ?ご機嫌伺いに来た大名の使いをせっせと捌く恋人を、こんなに間近にみられるんでもなければ、俺は絶対にこの任務を断っていただろう。 少なくとも文句は言った。 この稼業に休みなんて関係ないけど、折角二人の休みがそろってたのに! ま、セットで引っ張り出してくれたおかげで普段にない格好で微笑む恋人とちょこちょこ見つめあったり隙を見て手を握ってみたりしてるけどね! 袴っていいよね。隙間多いし。あの腰がたまらない。 思わず着替え途中に襲ったら、イルカ先生にしては珍しく、ちょっとだけいちゃいちゃしてくれた。 ま、思い余っていっそこのまま最後までって思ったらすっと逃げられて、終わってからですって言われちゃったんだけどね…。 ああもったいない!あの色っぽさ!外に出したくないってごねたら俺もなんだよ我慢しろなんていってくれちゃってもうもう! その場で押し倒さなかったことをほめて欲しいくらいだ。 このじいさんの護衛なら暗部だけでいいと思うんだけど。大名のお守りをかねてるにしろ、名前が売れすぎた俺みたいなのを連れて歩いてたら却って余計な連中に目を付けられそうじゃない? 「そろそろよいかのう」 「そーですね。さっきの人で最後じゃないですか?三代目も宴席に」 「うむ。そうじゃな。イルカよ。お主もようがんばってくれた。折を用意させてある。持って帰ってゆっくりしなさい」 なーにがゆっくりしなさいなんだか!こういうときほんっと腹立つよねぇ?この人は俺の恋人で、爺さんの孫じゃないっての! 「俺も帰っていいですかー?」 「ぬかせ。…次代を担うものとしての顔見せもかねておるのじゃぞ?お主も少しは立場というものをじゃな」 あー年寄りの説教って長いんだよねぇ? 立場なんて知らない。戦うことは得意でも、守るのが致命的に下手だし、そういう器じゃないのが分かってるっていうのに、最近やたらとせっつかれてる気がする。 まだ、だめだ。まだこの人には上に立ってもらわなくちゃ。 第一どうせなら自分の息子にすりゃあいいのに。イノシカチョウコンビとか。 「大体爺さん好みの女だらけなんだからいらないでしょーが。俺」 「ぬぅ…!女子はわしの好みというわけでは…!」 あ、動揺してる。ほんっと自来也様も三代目も分かりやすすぎ。 巨乳で気が強い女が好きなんだよねー。二人とも。 ま、その辺は自由だと思うけど、観賞用の女とめんどくさいおっさんたちの相手するより、恋人といちゃいちゃする方が楽しいに決まってる。 それにしても、これだけ動揺してるならいけるかなー? 「…今から本屋いくんですよねー?俺。知ってます?今日限定発売のいちゃいちゃシークレットラブ」 「なん、じゃと…!?」 「開放してくれるなら三代目の分もかってきちゃおうかなー?」 「…くっ!足元をみおってからに!…わかった。今回は勘弁してやろう」 ちょろいね。…ま、似たような手口でこの間Sランク任務この爺さんに押し付けられたけど。 「さてと、かえりましょ?イルカせんせ」 「は、はい!あの!」 「なんじゃ!?ま、まさかお主イルカに手を…!」 「じゃ、またー」 面倒ごとは後でいい。今はこの人といちゃいちゃするのが一番大事なことだもん。 なにせ1年の計は元旦にあるらしいから。 …ってことで、浚うようにして家に帰って、本はうちの子たちにお願いしてせっせといちゃいちゃした。 朝方いちゃいちゃしてくれたのは、綺麗所に囲まれるだろう俺にちょっとだけ嫉妬したからなんてかわいいこと言われたら止まれないし! そんなわけでちょっと箍が外れたものの、つつがなく爺さんに本も持ってってもらって、二人っきりで幸せな時間をすごした。 ま、夕方になる前にガキ共が押し寄せてきちゃったんだけどね…。 「今年もよろしくおねがいします」 「こちらこそ!今年も来年もずーっとよろしくね?」 たまにはこんな新年の迎え方も悪くないと思った。 ********************************************************************************* 新年会。 ではではー!ご意見、ご感想などお気軽にどうぞー! |