花を(適当)


好きだっていえないから、代わりに花をおくることにした。
好きな人には花贈るものらしいって、むかーし父さんも言ってたしね。
「大体顔も見せられないもんね…」
窓辺に花を置きながら、少しばかり悲しい気分になった。
自分の今の居場所は居心地がいいが、外とは隔絶されている。
たまに普通の忍に混ざって任務に出ると、あまりの違いにめまいさえ覚えるほどだ。
「ま、そこで出会っちゃったけどね!」
独り言は虚しい。
そんなことさえ気付かずに生きてきた。
だって殆ど単独任務だし、マンセル組んでも実力的に先陣切ることが多かったから、誰かと一緒にーなんてのはめったにない。
大体そういう時は面倒な相手のときだから、会話なんてしてるよゆうないし。
ちゃんと指示は出してるけどね!
一応部隊長なんて立場にいるから。
…でも、そんなの何の役にも立たない。
階級も立場も違う俺の怪我を優しく手当てしてくれた天使のような人。
無謀な戦い方すんなって男らしく叱ってくれて、治療するとめだっちゃうなんて言ったら、豆に包帯替えにきてくれるから思わず押し倒しそうになったっけ。
他に上げられるものがないんだもの。
俺にできることなんて、戦闘くらいものだ。
他はお金か、気持ちよくするくらいしか、思いつかなかった。
料理と洗濯くらいはできるけど、家に帰っていきなりお面つけた覆面忍者がいるって落ち着かないでしょ?って気付けるくらいには冷静だ。
拳骨、痛かったけど。
冷静に考えれば無理強いしようとしたようなもんだし、他に何も持ってないっていったら、怒りながら説教されたし撫でてくれた。
任務が終わるのを絶望とともに迎えたのなんて初めてだった。
だから、花を。せめて花を贈ることにしたんだ。
任務じゃ十分優秀でなんでもできるんだから、ちゃんと俺にできることを考えろって、あの人が言ってくれたから。
父さんの言葉を思い出せた時は、舞い上がりすぎて副官に不審がられたくらいだった。
花は綺麗だ。花屋に行けるときはそれ相応のものを手に入れることが出来るけど、大抵俺が里に帰るのなんて深夜か早朝だしね…。
だから外で摘んできたものが多くなる。
でもこういうものって気持ちだし!
多分!父さんもそんな感じだったっていってた。それにあの人ならきっと同じ事を言う気がする。
「好き。大好き」
花を片手に歌ってみた。…ちょっと虚しいけど、花にしみこんだ思いがかけらでも届くかもしれないなんて思いながら。
…後日、しっかりみつかってやっぱりまた怒られて、でもいつのまにやら家に上げてもらえるようになって、撫でてもらえるようになって…あのくらい場所を抜ける切っ掛けにもなってくれた。
…そういえば、父さんも最初は母さんに危ない人か頭のかわいそうな人扱いをされてたって、そのときになってやっと思い出したりもした。
「普通はそういうのはストーカーとか不審者と言うんです。俺は男ですし」
呆れ顔で怒ってくれた人は、いまや恋人…って呼んでもいいんだよね?
ちょっと泣きそうな顔をしたときに、真っ赤になって撫でてくれたし!
「…気持ちはうれしかったですけど…!」
アンタしかこんな奇行しそうになかったから。
なんて言ってくれて、抱きしめてもしょうがねぇなぁって抱きしめ返してくれた。
もう幸せすぎて最近歌いたくなるんだけどどうしたらいいと思う?って副官に聞いて、泣きそうな顔で今はやめてくださいって暗殺任務中に言われたりしつつ、なんだかんだとらぶらぶだ。
そうして、恋人が切花はかわいそうだしもったいないと言うから、代わりに贈るようになったキスを、今日も交わす。
「花ならアンタで十分です」
って台詞の意味は良く分からないんだけどね?



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適当。
頭に花咲いてるって嫌味と、アンタが花みたいにかわいいって意味ですよーとは中忍の談。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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