銀色お化け2(適当)



「おー。こらまたすごいな。飴。また増やしたのかよ?」
「おう!美味そうだろ?」
あの日の暗部のせい…というだけじゃなく、買いすぎてしまった理由はどちらかというと美味そうだったからに尽きる。
駄菓子屋のおばちゃんが新製品だと言って勧めてくれたのが、はじめてみるような味ばかりで、気がつけばほぼ全種類買っていたというか。
チョコレートとかミルクティーとかまであるんだぞ?買うだろそりゃ!
味見させてもらったチーズケーキ味ってのも、ホンモノとは確実に違うが美味かった。
…要は買いすぎた。あっという間に減るとはいえ、この光景を見られたら、キラキラした視線のままに争奪戦が始まること請け合いだろう。
「あの人は、何が好きだろうな」
イチゴは買った。それも他のヤツより多めに買った。
赤くて綺麗でいい匂いがして、だからお気に入りなんだが。
「…これ、こんなのまであるのか…!?」
「ああ。俺もびっくりしてつい」
コーヒーだのレモンだのは分かる。
塩なんちゃらってのまであって、そこにも驚いたんだが…。
「なんだよこれ。ラーメンって」
「…俺もそう思ったんだよ。誘惑に負けた」
ラーメンは大好物だ。
どんな味なんだろうと思ったら我慢できなかったんだよなぁ。
多分、マズイ。きっとマズイ。でもだな!ラーメンだぞラーメン!コレを食べないで何を食べるっていう話だろ?
「イルカってさ、普段割りと冷静なのに、時々無茶苦茶なことするよな」
「うるせー!美味かったらお前にも買ってきてやるよ」
「いらねーよ!」
本気でいやそうに言われるとちょっと傷つくが、まあいい。俺もコレを作った人の正気を疑ったからな。
とりあえず一式全部持ち歩き用の袋に戻しておいた。
…一つだけ袋を取り出しておいてから。
「さーってがんばるか!残業!」
「がんばれー…。俺はもう帰りてぇよ。夜食が飴玉ってのもなぁ」
「ないよりましだろ?いるならやるぞ?」
放ってやったのはラーメン味…じゃなくて、ぶどう味だ。
適当に取ったのがそれだったってだけなんだが、しげしげとながめて確認してから口に放り込んでいた。
「うん。たまに食うと美味いな」
「へへ!そうだろ?」
飴玉はいいよな。うん。
なんて思いながら残業に勤しむこと数刻。疲れ切って飴玉のエネルギーも尽きかけたころ、何とか残業を終える事が出来た。

「先かえるぞー」
「おう。俺もそろそろ帰るから、イルカも食いもんちゃんと食えよー」
「おう!ありがとな!」
言われてみれば空腹だ。
この時間じゃ中々店も開いてないし、とりあえずカップラーメンか肉まんでも買って帰るかと考えながらとぼとぼと歩いていたとき。
「あ。いた。ちょーだい」
「わあ!」
あの時の暗部だ。
間違いない。ふさふさの銀髪で、こんな風に手を突き出して飴をねだる暗部なんて、絶対に他にいるはずがないから。
「え、あ!はい!」
慌てて飴玉袋に手を突っ込んだ。イチゴ味をと思いつつ、何故か気がせいて慌ててとりあえず取り出したものを渡した。
「ん。ありがと。…またね?」
「え。ああ。はい!お気をつけて!お疲れ様でした!」
「…ふぅん?そっちこそお疲れ様、でしょ?」
「え!」
「じゃーね」
…まただ。また行っちまった。
飴玉はとりあえず気に入ってもらえたんだろうか?
「っつーか俺は一体ナニ味を…」
街灯の下でモソモソ袋を弄繰り回すことしばし。
…驚愕の事実が俺を待っていた。
「あ、ラーメン味がねぇ…!?」
やらかした。冷や汗がどっと溢れる。だがしかしもう姿は見えないし、追いかけたってついていけるもんでもないだろう。
「あぁ…」
楽しみにしていた飴を食べられなかったことがつらいのか、それともキワモノをあの人に渡してしまった事がつらいのか。
自分でもわからないまま、俺はがっくりと肩を落としたのだった。


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適当。
はろうぃんなのでちっとれんさい?
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