朽ち果てた屋敷に一歩足を踏み入れると、朽ち果てて穴の開いた天井から光が降り注いでいた。 かつては随分と贅沢なつくりだったであろう屋敷も、打ち捨てられた時の長さに勝てなかったのだろう。屋敷の広間か何かだったらしいそこは、そこから入り込んだ植物たちに彩られてまるで中庭のようだ。 差し込む光のに照らされてどこからか運ばれて芽吹いた若木の新緑がそよいでいる。 滅びの中の芽生えは僕を穏やかな気持ちにさせてくれた。 他の里よりましだといっても、木の葉の里はいつだって争いの種が燻っている。一度壊滅的な打撃を受けて尚、私利私欲を優先する連中が上にもいるから。 こうして任務ばかりの日々を過すのはいつものことだとしても、ソレを思うとうんざりする。 だからこそ、力強い生命力を感じさせる若木に癒されたんだと思う。 苔むしたかつての床板らしき所に腰掛けると、光に照らされた新芽を見ることが出来る。 休憩には丁度いい。…そのはずだった。 「あ、やめ…!」 「ダメでしょ?逃げちゃ」 荒い吐息と掠れた喘ぎは、聞きたくもないのに耳に飛び込んでくる。 「カカシさん…!」 「え…っ!?」 聞き覚えがあるのに、今まで聞いたことがないくらい甲高く甘い声に思わず消していたはずの気配をもらしてしまった。 …それに、声も。 うかつすぎるにも程がある。見せ付けるようにわざとらしく漏らされたチャクラの持ち主を、僕は嫌というほど知っていた。 「テンゾウ?…イイ子だからあっちいってな」 声音だけは優しげに、寒気がするほどの殺気を放った相手は。 「…合意、なんですよね…!?カカシ先輩…」 問いただす声に色悪な笑みだけで返す人が恐ろしかった。感極まったような喘ぎが、顔見知りの純朴な男が、周りが見えないほどに情交に溺れているのだと突きつけてくる。 耐え切れなかった。得体の知れない感覚が競りあがってきて、恐ろしいかいたたまれないのかすら分からずに駆け出していた。 「イルカせんせ」 組しかれた人の名を呼ぶ、滴るように甘い声を背後に聞きながら。 ***** 逃げるようにそこを後にして、息が切れるほど走った。 感じたのは確かに恐怖のはずなのに、今、僕は。 「…なんてこった…」 欲望を開放しろと訴える己の性が 疎ましい。 …あんな状況で、なぜ。 「あの人、確か中忍…」 しかも、ナルトの元担任じゃなかったか。そんな人をあんな風に。人柱力に何かあったら…。 だが、相手はあの先輩だ。行為に溺れていたのがあの中忍だけには見えなかったけど、流石に里を危険な目に合わせることはないだろう。 切羽詰った下半身事情を何とかする方が建設的だろうか。…この欲望を抑え切れやしないとわかってしまったから。 「…ぁ…っ!…く…っ!」 穏やかなはずの時間を鮮やかにぶち壊して、笑うあの人の顔を思い浮かべた。 その下でつややかな声で鳴く男の顔も。 訳がわからないほどの興奮に急きたてられるように吐精していた。 「…う…っ…」 涙が零れた理由なんて分からない。 ただ頭を一杯にするあの光景が、僕の中に根付いてしまったことを知った。 手を汚す欲望の残滓に、僕を変えてしまった二人を、いつも柔らかく微笑む男を、尊敬しているはずのあの人を。 …僕は初めて憎いと思った。 ********************************************************************************* 適当ー! もうすぐ春なので中二病な感じで。 ではではー!なにかご意見ご感想等ございましたら、お知らせくださいませ! |