眠気に支配された意識は移ろうばかりで、霞み始めた視界は半分以上閉ざされようとしている。 …この先にアナタが待っているかもしれないのに。 失ったかもしれないソレが、溶けかかった俺の思考を惑わせる。 無理やりだった。それは確かだ。 …強引な腕であの人を捕らえながら、一方的なセリフで抵抗を選ばせた。 そのつもりだった。 「死ぬ気で止めて。そうしたら…二度とアナタには触れないから」 そう告げた途端。 俺の肩を押し返し、隙を見て蹴り上げようとさえしていた足すらも動きを止めた。 拒まれていないと知った体は先走るばかりで、行為を止めようなどと思わなかった。 怒鳴るでも泣くでもなく、乱暴な愛撫に声を押し殺し、時折堪えきれずに掠れた甘い声を零す。 そんな様子に煽られないわけがなくて、つながった体を離したのはいつだったのかすら思い出せない。 いつも穏やかに微笑む人。 どうしてかあの人だけがこの世界で色鮮やかに見えた。 愛なんてモノは分からない。 ただこの狂おしいまでの思いは、まっすぐにあの人にだけ向かって、牙をむいた。 いくらもてはやされようと、結局俺はただのケモノだ。 欲しくて欲しくて…気が狂いそうだった。 あの人を見つめているだけで、めまいがするほどの幸福感と自分のものでない事実に酷い飢えに苛まれた。 俺じゃない誰かのために、この人は命を投げ出すかもしれない。 例えば、自分の生徒とか。 だれにでも微笑むこの人は、きっと誰のためでも自分を犠牲にするだろう。 恐ろしい考えは、一度居ついてしまったら抜けてくれなかった。 ソレなのにあの人は俺の気持ちなんて気付きもせずに微笑んでくるから。 誰にでも向ける笑顔を俺にも向けてくれただけなんだとしても、我慢できなかった。 一度タガが外れてしまえば止められないと知っていたのに。 急な呼び出しを受け、与えられた任務にかこつけて逃げるように里を飛び出して。 …どうやらやはり腑抜けていたらしい。 襲い掛かる眠気は敵の置き土産で、術者はもうとっくに始末した。 任務自体は片付けられたわけだが、おぼつかない足はもう動いてくれそうにない。 あと少しで里に着くというのに。 「イルカせんせ…ごめんなさい」 「謝るくらいなら帰って来い!」 声が聞こえる。 一番聞きたくて、でも聞きたくなかった人の声が。 「無傷…ってことはチャクラ切れか術か…?」 俺をまさぐる手はただ怪我の有無を確かめているだけのはずなのに、体はしっかり反応した。 馬鹿みたいに正直に、この人だけに。…その存在に歓喜した。 「イルカせんせ。好き。好きです」 謝ろうと思っていたはずの口はあの日と同じ言葉ばかり紡いで、意識なんてとっくにないに等しいのに、縋るように声のする方に手を伸ばした。 一瞬だけ、その体が躊躇う気配を感じた。 それなのに。 「ばーか。…ぜってぇ謝らせてやるって…!あんなことしやがってって!だからこの任務引き受けたのに…何でアンタが泣いてるんだよ…!」 嗚咽交じりの声が聞こえて酷く苦しくて。 行く先をなくしたはずの手ごと、ふわりと体が持ち上がったのが分かった。 「いるかせんせ」 「うるさい!あんたは黙ってろ!話は…里に帰ってそのボケた頭にカツ入れてもらってからだ」 きっとこの人は俺の思いをなかったことにはしない。 怒鳴り声がすぐそばですることに安堵して瞳を閉じた。 帰ったらごめんなさいから始めよう。罵られても殴られてもいい。この人が欲しい。 往生際の悪い俺にどうか振り回されて? 言葉にならなかったはずのそれに答えるように、溜息交じりの呟きが聞こえた。 「…アンタの都合なんてしらねぇ。…帰ったら殴って、そっから仕切りなおしだ」 ********************************************************************************* 適当! またも眠いので。 どうしようどうしてこんなにねむいのありえない。 ではではー!なにかご意見ご感想等ございましたら、お知らせくださいませ! |