「追いかけ続けるのも飽きちゃった」 ある日突然見知らぬ男にそう告げられた。 …いったい何の話やらと眼を白黒させている間にも、男は滔々と己の苦難の日々を語り、その中身が大変恐ろしいものだったのでついつい言ってしまったのだ。 「えー…つまり、ストーカーですか?」 「え?なんで?毎日ずーっと見守ってるだけでしょ?お風呂に入る時間とか、なに食べたかとか、睡眠時間の記録位しかしてないし。健康チェックは必要でしょ?」 それが立派なストーカーだといいたい。いいたいが、今更ながら気付いてしまった。 いい年こいた男がノースリーブで何だこいつと思った男の格好は、面をつけたら暗部そのものだ。 だって腕に刺青なんて入ってるし! 「え、えーっとですね。つまりその、あなたのその、お、おいかけてるという方に、何がしかの用があって俺に橋渡しとかを…?」 脳裏に浮かぶのはアカデミーの女性教員の皆さんだ。 里の中心で子供たちの育成を担う彼女たちは…一人残らず並の男なら簡単にひねり潰すほどの猛者揃い。 それとこんな非常識な生き物との橋渡し。 …正直言って恐ろしい。 暗部だから大丈夫って訳でもないだろう。なにせあっちは徒党を組んでかかってくること受けあいだ。関われば俺だって危ない。 ほかに関わりのある女性なんて食堂のおばちゃんくらいしかいないけど、あのばちゃんは旦那さんが上忍でしかも嫉妬深いから誰かがストーカーしてたら確実に制裁してると思う。 忙しくて昼飯が遅くなったからってちょっと大盛りサービスしてもらった俺が、ほくほく席についた途端、背後でぼそっといきなり調子に乗るなよって言われたくらいだし。 他に…他に後誰がいただろうか。 まさかコハルさまってことはないよな?昨日「あまりものじゃがお主にやろうって」おはぎもらったけど! 何でかしらないけどよく甘いものよくくれるんだよな…。なんだろうなあれ。嬉しいけど。やたら頭撫でられるし。そうか美味いかとか犬みたいに言わなくてもいいよなー? って、現実逃避してる場合じゃなかったんだ! 今更ながら改めて怯える俺に男が近づいてくる。 その殺気染みた気迫が恐ろしくてならない。 「近くでみると、全然ちがうもん。ホントのストーカーならこうやってきっともっと側に…」 …なんでうっとりしてるんだろう。今にも俺のあごを掴みそうな距離に、鉤爪つきの手が迫る。 俺の人生ひょっとしてここで終わりなのか…!? 「かわいい」 「へ?」 「だからね。追いかけるのに飽きちゃったから捕まえることにしたんだけど、よろしくね?」 「は?」 で、結局何がどうなってるのか理解できないうちに引っさらわれて男の家に連れ込まれて、それからさらに理解できない目にあったのだが。 「近くで見つめられるってすっごい幸せ!」 頭に花が咲いたような顔で笑う男がそれはそれは嬉しそうにしているので。 ストーカーが一人この世から減ったんだしいいかなーと思うことにしたのだった。 ********************************************************************************* 適当! そろそろカカ誕終わらせたいのですが寒いので。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |