おいかけっこ24(適当)



かわいいかわいい小さい生き物。
思わずひねり潰したくなるようなか弱さで、カカシを守りたいと言う。
なんておもしろい生き物なんだろう!
血統的には申し分ない。両親共に上忍で、母親に至っては元暗部。その上教育熱心と見えて、基本的な術ならすぐに覚えてくれた。チャクラはこれから成長すれば増えるだろうし、賢い子だから、仕込めばそれなりに強くなるだろう。
カカシの傍らに囲い込んで、あの子の楔にするにふさわしい。
運命というものを信じてしまいたくなりそうだ。
だってね。彼女の思惑通りに、何もかもが進んでいるんだもん。
あの子は本当に誂えたようにカカシを補い、支えるだろう。そのためだけに生まれてきたんじゃないかって思うほどに相性がいい。まるで違う生き物だからこそ、お互いの見えないものを補える。今はまだ自覚はないみたいだけど、あの子がカカシ君に落ちるのは目に見えている。
しかも驚くくらい素直で無邪気で、ついついちょっかいを掛けたくなるところがまたいいんだよね!
そうするとカカシ君の方がムキになって向かってくるからそれも楽しいし?
久しくなかった退屈しないと言う最高の時間を過ごしていると思う。
基礎が出来てるって大事なことだよね。カカシ君もすごいけど…あれは天賦の才だろう。
戦略と知略に長けたあの子母親の唯一の欠点は、体力がなくて体が弱いことだった。
カカシ君は彼女の欠けていた所の全て補うように何もかもを持って生まれてきた。
おまけに父親の異常とも言えるほどの術のセンスも受け継いでいる上に、用心深さも賢さも申し分ない。
母の抱いた野望そのもののような、里を守る完璧な忍に育つだろう。
…その野望に興味はなかったんだけどね。本当は。
俺が惹かれたのは彼女の狂気染みた執念と、理想を語る狂信者と慈母を混ぜ合わせたような奇妙な、だが強靭で歪んだ精神だ。
カカシ君はそういう意味では父親に良く似ている。
精神の形は歪なようでいて、どこまでも効率的で、それから愛しいものだけを守るためにできている。
ぞくぞくする。あの子はいずれ世界を震え上がらせるほどに強く、畏怖を持って迎えられるほどに称えられ、そして…遠ざけられるだろう。
孤独に耐えられない子じゃない。
一番大事なモノさえあれば、里を統べる高みに据えても、痛くもかゆくもないだろう。ま、面倒がるだろうけどね。
…それもイルカ君を与えてやれば済む事だ。
楽しみだよね!
里を、民を統べる聡明な長として、いつかきっとこの子は立つだろう。
その側に、この元気な子がいれば。
彼女の望んだものが、きっともうすぐ見られる。
楽しみで嬉しくて、密かにほくそ笑んだ。
「先生。思い出し笑いは止めてください。気持ち悪い」
「ふふー!ま、カカシ君もおとなになったらたーっぷりわかるから、本命以外に手は出さないんだよ?どうしてもってときでも…」
「行きません!」
「ん!関心関心!ただ技術的なものって大事だと思うんだよね。気持ちだけじゃ…」
「…先生。修行するんですか?しないんですか?」
冷たい視線。父親そっくりな顔で、こんなにも表情豊かなことに未だに驚く。
俺を射抜くあの冷たく揺らがない視線と同じくらいに、この子は無表情だったのに。
番を見つけた今、あまりにも違いすぎて、もう少しで計画が実現することを確信すると同時に、寒気すら感じる。
あの人は、どこまでわかっていたんだろう。
「修行、一杯しようね!」
精一杯の笑顔で肩に手を伸ばそうとして、空を切った。
「イルカ!」
「カカシ!おはよー!今日も宜しくな!」
「うん!」
…ま、仲が良くて何よりってことかな?
時々感じるうみの夫妻の気配からして、不安で一杯みたいだし、色々油断は出来ないけど。
退屈なんて感じられない毎日を守るためには、もうちょっと我慢してもらわなきゃね?
「…なぁ。最近ああやって何にもなくても笑ってるけど、大丈夫なのかな?」
「…いつものことなんだ。ちょっと恐いけど腕は確かだから」
失礼千万なんだけど、額を寄せ合ってるのが可愛いから聞こえなかったことにしてあげよう。
「じゃ、はじめようか」
楽しい楽しい毎日を満喫しなきゃ!
…なにせ、人生は短いんだから、ね?


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適当。
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