欲しがり(適当)


「寒いですねぇ」
「そう思うなら服着てくださいよ…。っ!いってぇ!」
ふくれっつらの恋人は文句を言いつつも布団をかけてくれようとして、そのまま倒れこんだ。
そりゃそうだ。さっきまでがんばってくれてたもんね?
「ほーら無理しないの。ね?」
「俺は無理なんざしてません!無理っていうか、アンタが無茶したんでしょうが!」
顔は真っ赤だし目は潤んでるし、威勢はいいけど動けなくてもそもそしている。
恋人がそんなことになってたら、おいしそうって思うでしょ。普通。
「もっと無茶したいかも」
口をついた欲望は、どうやらおいしそうな獲物…もとい、恋人を怯えさせてしまったようだった。
「こ、これ以上するならアンタ覚えてろよ…!」
説教のようでいて諦めてるみたいな言い方なのは、何を言っても無駄だと思われているからかもしれない。
ま、付き合い長いしね。
もう何年経った?上忍だった頃から今に至るまで、この人に執着して縛りつけて、体はもちろん心まで操ろうとしたことだってある。この人の意思がこんなにも強くなければ、今ごとただの抱き人形になっていただろう。
ま、それでも手放したりはしなかったに決まってるけどね。
素直な意地っ張りなんてタチが悪すぎるでしょ。全くもう。
それでもこの人が弱っている俺には逆らえないとか、子どもっぽく振舞うと逆に優しくなるとか、とにかくいつからか真剣に欲しがっていることがつたわったのか、懐に潜り込むことには成功した。
アンタ、最初なんて酷いもんでしたよなんて笑って言われたのはついこの間の話だ。
火影になって、今更ながらこの人を奪われる可能性を叩き潰しておく必要性に狩られ、徹底的に周囲の忠告もちょっかいも排除して、こうして火影の私邸に住まわせるために宥めてすかして駄々を捏ねて、あまり我侭を言い過ぎても怒らせてしまうから、そっと上目遣いで見上げてみせたら、今更だと。
そのときに思い知った。この人がいなくなったら俺は死ぬ。こんなにも俺を支配しているのは…この人の方なんだと。
「覚えてますよー?あんたの声も締め付けも味も」
「わー!わー!黙んなさい!」
茶化してからかわれてるんだって分かってるだろうに、どうしてこんなにかわいい反応するかねぇ?
子ども好きの人に酷いことをしている。でも、だからなんなの?俺はこの人だけなんだから、この人も俺だけでいいでしょ?
独りよがりと呼ばれようが構わない。地獄に落ちるんだとしても、この人引っ張り込んででそこでも楽しんでみせるよ。俺は。
「好き」
「…あーはいはい。アンタ甘えたですねぇ?いい年ぶっこいて下半身も落ち着きがないし」
呆れ声も甘く響いて、懐くように腰をすりよせながらさりげなく尻にも手を伸ばす。
素直な体は敏感で、すぐに反応を返してくれた。
「えー?だってイルカ先生もまだできるでしょ?」
この人は、中忍だ。鍛錬を怠ることなく己が技を磨き続け、いざとなれば真っ先に飛び出して行くような無鉄砲な。
俺に付き合えてる時点で体力も、それから本人は否定するだろうけど精力も十分にあるはずなんだよねぇ?
「っできると、やりたいかとは別のもんだ…ぅ、く!」
堪えるからかえって煽ることをこんなに長く抱かれていても気付かないところがこの人らしい。
「いっぱいしようね?」
「もうしただろうが…!」
半泣きでだが抗うというよりじゃれ付いてくる恋人の肌に顔を埋めて、匂いを味わう。
幸せ。ま、本人は物凄く嫌がるんだけど。
「いい匂い」
「…汗臭い野郎に本気で言ってるならアンタ鼻も頭もおかしいですよ…」
抵抗を諦めたのかぐったりと身を投げ出しているのを良い事に、きわどい部分に指を滑らせる。
「入れたい」
「ん、っはや、く」
ああもう。たまんない。
か細い声と裏腹に射る様に鋭さを増す視線。それからこういう時の潔さも好き。
後で加えられるだろう制裁のことなどどうでもよくなる。今この人を食わないでいることなんてできるわけがない。
結局乗ってくれたことに舞い上がってたっぷりシ倒して、覚えてろといわれた通りにてんぷら食いに連れて行く羽目になったけど、してやったりとばかりに揚げたてのえび天を頬張るその口が卑猥だったから、今日はたっぷり上にも下にも咥えて貰おうと思ったのだった。


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適当。
春。
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