犬生活(適当)

好きすぎて爆発しそうだったから。
「大人しくヤラセテ下さい」
決死の告白の返事は衝撃的だった。
「ふざけんな。失せろ」
上忍の頭を躊躇せずにこうもあっさり殴りつけられる人も中々いないと思う。
土下座した頭にめり込むように鋭い拳が振り下ろされ、ついでに恐ろしく冷たい視線まで。
…ほんとにこの人中忍なんだろうか。
元々、経歴を見る限り中忍の中でも相当ヤル方だってのは分かってるけど。
「…どうしてもダメですか…?」
結構痛いし、あっさり断られたのが悲しかったから、演技でなく滲んだ涙もそのままに上目遣いで見上げてみたら、頭を抱えられた。
「はぁ…。アンタ、頭大丈夫か?」
コレは多分、思いっきり殴っちゃったからとかそういう意味じゃないだろう。
…うん。ま、言われなれてるけどね。特にこの件に関しては。
でもそれを正直に言うつもりはない。
だってイルカ先生は可愛そうなものが好きだから。
「たんこぶ、できてるかもしれません…」
ぐすぐすと鼻を鳴らして見せたら、乱暴に髪の毛をかき回された。
わっしゃわっしゃと思い切り良く探られて、ちょこっとだけ腫れてる頭を手早く検分したイルカ先生は、やっぱりまだちょっと怒ってるみたいだ。
「あーもう!…上忍のくせになんで避けないんだか…」
言葉の剣は大分取れたけど、溜息には苛立ちが混じっている気がする。
でも追払わない。…俺が痛いって言ったから。
この人のことが欲しくて欲しくて今すぐにもぐちゃぐちゃに犯してやりたいって思ってる俺に対しても。
…筋金入りのお人よしで、でも簡単には傷つけられないだけの強さを持った人だ。
一目見て好きになって、ずっと見てたらもっと好きになって、その好きが、単に好ましいってだけじゃなくて、欲しいって意味だと気付いたら、もう止まれなかった。
今のところ彼女みたいな存在はいないし、花町に行くでもない。
無論男なんて問題外で、むしろ色事自体に興味がないんだと思う。
だからこそ、好きだ何て言えなくて、でも毎夜みる夢が…この人を組しいて喘がせて、泣いても悲鳴をあげても止めて上げられなくて、それこそ声も上げられなくなるまでめちゃくちゃにしてるものばかりになって、これはもうさっさと告白しておかないと、きっといつか現実にしてしまうと分かってしまった。
切羽詰る余り要点をかいつまみすぎた告白になっちゃったけど、どうにかしてうなずいてもらいたい。
…俺が、この人をめちゃくちゃにしてしまう前に。
「イルカせんせの手が好き、声が好き。温かいとこも好きです」
すりっと、俺の頭に置かれたままの手に擦り付いて、その気持ちよさにうっとりしながらオネダリしてみた。
もしかすると…ほら、ちょっとだけほだされてくれるかもしれないでしょ?
「好き…?は?え?えええ!?アンタそっちの人だったんですか!?」
うーん。慌ててる慌ててる。そんな素振りにさえ欲情する俺は、とっくにどうかしちゃってるんだろう。
…この人の、全部に。
「そっちの人?イルカせんせが好きです。すっごくすっごく好きで、欲しくて我慢できないから、イルカ先生が危なくなる前に好きになってもらいたいなぁって」
余計な事はどうでもいいんだ。
好きって言ってもらえればそれでいい。
そしたら…ちょっとだけ我慢できると思うから。
…例えそれがウソだとしても。
「…アンタが馬鹿だってことは分かった。告白の仕方も知らねぇのかって…!…うう…まあ俺も知りませんが!…それにしても本当に見事に馬鹿なんですねぇ…」
しみじみとそう呟くイルカ先生の言葉に可能性を見て、俺は俄然その気になった。
「馬鹿ですか?でも、好きです。イルカ先生の全部が好き」
イルカ先生は子どもに弱い。わがままを言うと叱るけど、結局はなんだかんだとその子が出来るだけ自分の望みを叶えられるようにしてやっている。
つまり…なりふり構わない生き物に弱いってことだ。
だから俺も必死になって懇願した。
「イルカ先生がいないと生きていけません!俺…俺…!」
べそべそと涙を零しながらぎゅうっと手を握ってみたら、イルカ先生はあからさまに困った顔をした。
…どうしようって、こんな馬鹿な生き物は見棄てられないって顔を。
「アンタ、犬みたいだな」
ぼそりと呟いたそれを、俺は聞き逃さなかった。
「…犬なら、うちにおいてくれるんですか?」
犬、犬は好きだ。温かくて賢い。それに犬プレイって言葉も同時に浮かんでちょっと興奮した。
イルカ先生の犬。…それって結構いいかもしれない。
「そんなことできるわけないだろうが!」
怒った顔。これもイルカ先生からの愛の篭ったしつけだと思えば楽しいかもしれない。
「犬になれるなら、おいてくれるんですよね!」
にっこり笑った俺にイルカ先生がよろめいた時点で、俺の勝利は確定したんだと思う。
*****
それからも俺は頑張った。
せっせせっせとイルカ先生のうちに通うっていうか、帰るようにして、ご飯もイルカ先生から貰って、寝床は犬なら外だって言われて涙ぐんで見せてちゃんと部屋の隅に布団敷いてもらえるようになって、それからちゃんと一杯なでてもらっている。
中々快適な生活だ。
…ヤリタイっていう欲求を我慢しなくちゃならないって点を除いては。
今日も俺の頭をなでて困った顔をしながらそれでも楽しそうな顔もしてくれるようになったイルカ先生の手首とか足首とか項とか唇とかを見つめながらいろんな欲求を押し殺している。
でも一生懸命、嬉しいって顔をして、イルカ先生に懐いて、愛して欲しいって全身でアピールする事は忘れない。
きっといつか…もうそろそろ。
俺のこと、好きになってくれないかなぁ…?
「飼っちゃったんだから、諦めるしかないよなぁ…」
溜息をついたイルカ先生そういってくれたのが嬉しくて、それこそ尻尾があったら振り千切れるくらいに振ってるだろうってくらい嬉しくて、イルカ先生に懐きながら…そろそろそんな日がくるんじゃないかなぁって期待をしておくコトにした。


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適当ー!
わんこを撫で回したくなったので。昨日の日記のうわ言のわんこサイドというコトで一つ。
はろうぃんあとどれかいてなかったっけか…?

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