生ぬるく気だるい(適当)



「任務中ですよ?」
「うん」
分かっているのかいないのか、気の抜けた返事と共に背に圧し掛かってきた。
重いというより鬱陶しい。
どうせまた誰か負傷者が出たかしたんだろう。
落ち込むことがあるとこうしてこっちの事情など弁えもせずに寄って来るのにももう慣れた。
「飯は食いましたね?」
「うん」
「水浴び…はしてきて…うわっ冷てぇ!ちょっと染みこむじゃねぇか!」
俺は聖人君子じゃない
こうして甘えてこられても、どうすることもできない。
だれかれ構わずだれでもいいからと縋るようなヤツに貸す体はもちあわせちゃいないんだよ。
びしょ濡れの頭のまま肩口に頭を埋め、染み入る水気にこっちがこうむる迷惑も顧みず、男がしょぼくれた顔を寄せてくる。
強請られているものが何なのか分かっていて、あえて無視した。
他にいくらでもやわらかくてあたたか包んでくれる誰かはいるだろうに、わざわざ男の中忍を選ぶことはないだろう?
「だめ?」
「さっきも言ったでしょう。任務中です。哨戒中なんですから、アンタも天幕でしっかりやすんでくださいよ。部隊長様になにかあったら任務に支障が…」
あの赤い瞳に捕まったのだと気付いたのは身動きも取れなくなってからだった。
駄目だと分かっていたのに弱った仕草に油断した。
この男は狡猾で、それも酷く我侭なくせに自覚していない。
だからこうして俺を振り舞わす。それがどんなにこっちに迷惑かなんて考えもしないで。
「交代はいつだっけ?」
「あと、はんこく」
「じゃ、一回はできるか」
物足りないけどしょうがないとのたまう。さすが上忍様。任務中だっつってんのになに考えてんだ。
「やめ、ろ」
「あれぇ?まだ抵抗できるの?ま、いいけど」
下を剥かれて無造作に下着までひき下ろされる。
尻にふれる生暖かい感触は、男の舌か。
「そんなとこ…!」
「はやく、いれたい」
ああくそ!こうなるから嫌だったんだよ。
人の話なんかきかねぇし、それ以前に人であるかすら怪しいほどに暴走する。
「…外で、やんなって…!」
「ん。結界張ったから」
「そういう問題じゃ…!んく!」
男に指を口に突っ込まれた。そりゃ舐めるだけじゃ広がらないもんな。
…最低だ。爛れた関係を受け入れていることも、こんな行為に慣れてしまったことも…この男の暴挙を止められない理由が、階級差なんかじゃないことも。
突き入れられた指は唾液でぬらされたそこにねじ込まれ、不本意ながら慣れた異物に息を短く吐いて耐えた。
それを当たり前だとでも言うように、男は丁寧だが強引にそこを押し広げ、女でもないのにケツを弄られてじわじわと高まっていく熱に涙が零れた。
「も、いいよね?」
「ん。はや、く…!」
そこは大して慣らされちゃいないが、痛みはあっても切れるほどじゃないだろう。もう体は繰り返される自然の摂理に反する結合に慣れきってしまっている。手早くさっさと終わらせやがれ。このケダモノが。
怒鳴りつけるには体勢が最悪で、うつぶせにされたまま文字通りケダモノみたいな状態で突っ込まれた。
「はっ…締めすぎ」
「ん、あ、く…!」
いたい。そして自分のモノじゃないは駆動を体内で感じるのはいつまでたっても慣れる事が出来ない。
だというのにこの行為を求めて飢えることすらあるのだから最低だ。
「一回で終われるとイイね?」
他人事のようにそう言って、律動を開始した。
揺さぶられてうつむいたままただひたすらに終わりまでそれに耐える。
男はこっちの腕もいいから、中の性感帯を抉るのも、そこここを弄るのも無駄に上手くて嫌になる。
先にいったらお仕置きと称して更にあれこれされるのが分かりきっているからこっちも必死だ。
「く、ふぅ…!」
「なに?その顔。そんなにきもちいいんだ?気持ちイイ時の方が堪えようとするよね?」
征服者の笑みは余裕たっぷりで、どこまでも俺を辱めるつもりらしい。
「はやく」
いかせてほしい。…終わらせて欲しい。
これ以上溺れてしまう前に。
でも、何に?
「お望みどおりに」
一際不覚穿たれて息が詰まった。ガツガツとぶつかる腰は、骨がずれるんじゃないかとすら思うほど激しく振り立てられている。
「あ、く、あ!」
「声、殺さないでしょ。ほら、…いっちゃいな」
ぐんっと腕を掴まれて膝に載せられた。いきなり深くなる結合に悲鳴染みた声を上げた記憶はあるが、それよりも奥深くに吐き出された熱液を感じて全身が震えた。…快感で。
「う、や、あ…」
「気持ちよすぎてお漏らし?ああ、こっちもか」
達したはずなのにまだ硬い性器で繋がった所はぐちゅぐちゅと音を立てて、まるで粗相でもしたかのように地に白いものを零している。
「も、はなせ。おわったんでしょう…!」
言い終わる前に口付けられた。さっきまでこの口がどこを舐めていたかと思うと不快なのに、男の舌使いは巧でそんなことすらどうでもよくなる。
「ごめんね」
ちっとも悪いとなんて思っていない笑顔に、どうやら終わりは随分先であることを悟らざるを得なかった。
*****
「一回じゃ無理でしたねー」
「やめろって、いったじゃねぇか…!」
水浴びをしようと思うのに這うことができるかどうかすらあやうい。
任務には…多分俺の処遇はそれなりの処理をされているだろうから気にしなくても大丈夫だろうが、仲間からどんな目で見られるかというのは別の話だ。
哀れまれるのも好奇の視線に晒されるのも好きじゃない。むしろ大嫌いだ。
「洗ってあげるし、寝てていいですよ」
「任務です。そういうわけには行きません」
洗うの意味がそもそも違うしな。あんなところを弄らせたらあと何ラウンドやらなきゃいけなくなることやらわかったもんじゃない。
「あ、任務ならもう終わってるんで」
「はぁ!?」
ならなんでここにいるんだと罵るはずの唇は、男に抱きくるまれたせいで開くことが出来なかった。
「撤収だけど傷病者ってことで俺が抱っこして帰ります」
「だ、だれが!自分で歩くしほっといてくれ!」
「やです。だって俺のじゃないですか」
「何度も断ってんだろうがー!」
おもちゃにされるのは任務だと割り切るとして、一生を共にしろなんて拷問だ。
…惚れた相手の愛人なんて、最低だろうが。
うっかり惚れたのは自業自得だとしても、甘える相手ほしさに情人にしたがる上に、それを自覚しているかどうかも怪しいこの男は最低の一言に尽きる。
「はいはい。じゃ。おんぶとだっこ。どっちがいーい?」
「どっちもお断りだ!」
怒鳴りつけては見たもののそれすらも腰に響く。ああくそ!なんだってんだもう!
「じゃ、しばらくこうしてましょ?」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて、脱がされたままのズボンは気になったが色々諦めた。
…飽きるまで、つきあってやろうじゃないか。終わりの時には思いっきりぶん殴って…そのときは俺から別れのキスでもしてやろう。
怒りも疲労もどうでもいい気分になりつつある。
この腕が心地良すぎるのがいけない。
「はやく、おちてきてね?」
眠りに落ちる瞬間聞こえた言葉には、もう落ちてるなんて絶対に言ってやらないと心の中で毒づいておいた。


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適当。
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