なによりもだいじなもの(適当)



大事にされたことなんてなかった。
女のように扱われたい訳じゃないが、翌日まで痛みが残る情交を繰り返され、あの男とかかわるようになってからこっち、まともな状態であったためしがない。
甚振るような情事を好み、死を意識することすらあった。
縛りつけられ、戯れにタチの悪い薬を使われることも、訳の分からない幻術に囚われたまま体を使われることも、そのうちになれた。
諦めたとも言うか。
何もかもを受け入れてしまえば、その内気にすることも無くなった。
何故、俺なんだろうってところだけは疑問ではあったが、問いかけたところで答えは返ってこないだろう。
たまたま居合わせた頑丈で甚振り甲斐のある中忍を玩具にすることに決めたってだけで、その玩具が泣こうが喚こうが気にも留めないに決まってる。
男には、それが許される。
…そして、その男が火影になることも。
「これで、完璧」
鼻歌でも歌い出しそうだ。
こっちといえば、文字通り手も足もでないように縛り付けられて、口にも布を押し込まれている。
薬を使われないだけまだマシか。縛られた痕はすぐには消えてくれないにしても、隠す手段はいくらでもある。
男のいう完璧など理解できない。理解する気もない。
俺にできることは、ただ嵐がすぎるのをまつことだけだ。
どっちにしろうごけないんだしな。
「もうちょっとで完璧にアナタが俺のモノになるんです」
歌うように、今にも踊り出しそうなほどに、浮かれきった声で男が言う。
完璧に?洗脳か。それとも毒か。
なんでもいいが、できれば痛みを感じないものであればいいと思う。
どうせ逆らうことなどできやしない。
この男は火影になるのだから。
「やっと手に入るね」
ああ、それでか?
それにしてもなんでこんなに執着するんだか。
死に物狂いで抵抗したあの日、それでも敵わなかった時点で何もかもを諦めた。こんなモノはただの暴力に過ぎないと、軋む体に辟易しながら思い込もうとした。
一度きりだと思っていた行為が繰り返され、飽きるまでだと覚悟はもう欠片も残っていない。
運が悪かったんだろう。きっと。
「好きって、もう言ってもいいよね?」
こんな言葉を喜んで受け入れてしまいかけている。
どこにもいかないでと、きっともう言われないで済む。
「あとちょっと」
そう、あと少しだけだ。
意思を奪われるかそれとも四肢の自由でもうばわれるか、どっちでもいい。もうとっくに俺の中の一番大事な思いは奪われてしまっている、
「楽しみだね」
ええ、俺も。
たとえその執着が愛じゃなくても。
「好きですよ」
蕩けるような瞳の男と交わしたキスは、うっすらと血の味がした。


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適当。
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