白く蕩けて(適当)



部屋には行った時から嫌な予感はしてたんだ。
甘ったるい匂いに、不自然に浮かれたチャクラ。
…そして俺は今日誕生日を迎えた。
その全てがこれから先に待つであろう危険を示唆していた訳で、当然覚悟と備えも忘れない。
深呼吸を一つして、ゆっくりとドアノブに手をかけた。
「ただいま」
返事はない。部屋をゆっくりと見渡した。
…うん。今の所何も起こっていないな?
使い倒して傷だらけのちゃぶ台と、くたびれた座布団もそのままだ。
ってことは、寝室に繋がってるふすまの向こうが危険地帯だな。多分。
わざとらしく気配が消えたのが少しだけ笑える。何をそこまで一生懸命になってるんだか聞いてみたいもんだが、聞いても禄に会話が成立しないのは分かっているので今は考えないことにした。
適当に手と顔を洗い、荷物もそのまま洗面所に避難させた。万が一爆発するようなものだったら困るからな。
ゆっくりとふすまの方に足を進める。
後一歩で手が届くってところで、スパーンっと盛大な音を立ててふすまが開いた。
「お誕生日おめでとうございます!イルカせんせ!」
…今年はまたどうしてコレを選んだのか、後で聞くことにしよう。
甘いものは匂いを嗅ぐのだって嫌いなくせに、元々白っぽい肌を覆うように、白く甘ったるい香りを放つものが塗りたくられている。
ちょっと、いや大分引くんだが、それでもうん。まあ。
なんていうか。
「…馬鹿でかわいいよなぁ」
とりあえず距離を詰めると、期待に満ちた瞳が潤んでいる。
頬をピンク色に染めて…いや、肌も多分ピンク色なんだろうな。多分。生クリームまみれでわからないだけで。
胸の辺りに塗りつけられていたのを一すくい指先にとって、それからにんまりと笑ってやった。
「イルカせんせ…?」
「はいあーん?」
「あーん!」
コレを何度も強請られてきたからな。何度かやったら素直に口をあけて待ってるのがかわいくてついつい習慣になっていた。だからまあ、これは条件反射ってヤツだ。
甘いもの嫌いなくせに、俺が差し出したから。
躊躇いなくぱくりと口に入れて、その瞬間くしゃりと音でもしそうなくらいそのきれいな顔が歪んだ。
「うえぇ甘ッ!」
悲鳴を聞きながら、もったいぶるように生クリームがのっていた指を舐めてみた。
確かに甘い。…それに楽しい。
「誕生日プレゼントなんですよね?」
「はい!」
うん。いい返事だ。こんなので嬉しくなってる自分は十分変態だな。
まあこの人とは比べ物にならない程度だが。…色々不健全な環境で育ったってのは知ってるが、やっぱり元々素質あったんだろうなぁ。
「じゃ、がんばって食べますね?」
そう言った途端押し倒されて、ベッドもシーツも勿論自分も、中まで生クリームと人には言えないようなものまみれになったんだが、楽しかったから良かったってことにしておいた。

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適当。
一生懸命でアホなところが好きといってはばからないイルカせんせにベタぼれのアホの子上忍。
割れ鍋綴じ蓋ってことで。
ご意見ご感想お気軽にどうぞー

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