「父ちゃん、絶対に俺と一緒に遊びに行くって約束したんだ!それなのに…忘れて任務入れちゃった…ずーっとずーっと父ちゃん待ってたのに!」 「で、家出してきたと」 真夜中になってやっと家に帰りつくなり不審者が玄関の扉を開けようとしてて、ま、かぎかけてなかった方も悪いかと思いながら捕まえてみれば…このざまだ。 「うそつきの父ちゃんなんてダイキライだ!俺は今日からここに住む!」 「…って、ここ俺の家なんだけど。だから抓みあげられてる訳よ?」 今にも泣き出しそうな俺より少しちびにみえる子供は、それでも一応背嚢背負って、水筒らしきものまで持っている。 「…空き家だと思ってた…」 計画的なんだか違うんだか…ま、いいけど。 「はぁ…おうち帰んなさいよ」 「ヤダ」 素直に帰るとは思わなかったが、この意志の強そうな子供ほっといたらなにかとんでもないことをしでかしそうだ。 「じゃ、どこ行くのよ」 「…薬草取りに行く時に使ってる山小屋」 「今の時期雪に埋もれてるし、食料も持ってないんでしょ?」 「うー…!」 見る見るうちに眦に盛り上がる涙に、俺は慌てた。 ちょっと勘弁してよもう…! 「あーもう!泣かないで!で、どうするの?」 「どうもしないもん!父ちゃんの馬鹿ー!」 「はいはい。俺はお前の父ちゃんじゃないでしょ。もういいから。…で、お前何ができるの?」 癇癪起こすような子供なのに、この思い切りの良さじゃ、親は相当苦労してるんだろう。甘ったれたガキに、苛立ちよりも興味を覚えた。俺とはまるで違う生き物すぎるから。 「なにがって?」 「薬草摘みに行くくらいなら、多少の家事はできるんでしょ?」 「んっと、ご飯炊いてお味噌汁作って、あと魚焼ける!」 「ま、それだけできれば上出来でしょ。材料はあるから手伝って」 少しの間だけなら構ってやってもいい。他所で変なのに引っかかってなにかあったら…多分親は泣くだろう。 「え?なんで?」 「なんでって…働かないやつを家に置いとく気はないんだけど」 「え!じゃ、じゃあここにいていいの?」 「ちょっとだけならね。…父ちゃんとやらが生きてるんなら、さっさと謝るなり謝らせるなりして帰ったほうがいいんじゃないの?」 「うー…!…ってことは、お前の父ちゃんは?」 「もういないよ。そんなことどうでもいいでしょ?お前はどうするのよ」 この子供みたいに泣いて縋って一緒にいてとねだれば、何かが変わっていただろうか。 …ま、今更どうでもいいことだけど。 「…ここに、おいてください」 「俺に頭下げるより、父親何とかした方がいいと思うけどね。ま、好きにしな」 直接言うことができるうちに何とかした方がいい。…ただこの健全すぎるほど健全そうな子供の親なら、とうさんのように病んだりはしないだろうけど。 「ありがとう!」 こうして礼を言える位、しつけもできてる。三代目あたりに式を飛ばせば、親が飛んでくるだろう。 落ち着いた頃に隙見て突っ返せばいいよね。 こんな生き物が側にいたら、きっと俺はおかしくなる。 「で、ちび。お前の名前は?」 「お前っていうな!俺はイルカ!」 「そ、じゃイルカ。台所はこっち。手洗っといで」 「うん!…お前の名前は?」 「…カカシ」 「そっか!カカシ!宜しくな!」 何の迷いもなく問う子供に、思わず素直に答えていた。 忍とは思えないあけっぴろげな笑顔に、なぜか胸が苦しくなって戸惑う。 なんだ?ただのガキ相手に。 「ほら、さっさと行きな」 「あ、うん!」 「…面倒なのとかかわっちゃったかねぇ?」 変なガキ。 …でも、ま、たまには刺激も必要か。 口で言うだけあって手際はそう悪くなさそうだしね。 「ま、なるようになるでしょ?」 溜息すらどこか違って感じる自分に苦笑して、台所へ急いだ。 盛大に腹を鳴らした真夜中の闖入者に、飯を食わせるために。 ********************************************************************************* 子カカイル祭り継続中。 そろそろ次何祭りにするか考えよう…。はれんちまつり? ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |