おいかけっこ10(適当)



「先生に任せときなさい」
相変わらず胡散臭い笑顔だ。
何でこの人が里でも他所でもアイドルみたいに扱われているのか俺にはさっぱり分からない。
イルカの方がずっとずっとかわいいし、それに一緒にいるだけで幸せな気分になる。
先生は…笑顔がステキなんて言われてるけど、腹の中で何を考えてるのかわからないって、すぐに分かるのに。
父さんは、賢すぎるからだっていうけど、確かに火影候補になりかかってるらしいけど…でもやっぱり信用は出来ない。
父さんに対する盲信と、弟子かわいいごっこが好きだからってこと以外、この人を利用しようと思う理由なんてない。
だってさ、この人が本当に大切なのは赤毛のとんでもなく無鉄砲でちょっと馬鹿な…先生の自称するところによると恋人らしいけど、人柱力候補の女と、それから父さんくらいだ。あとは…自来也様かな?
多分三代目のことだって尊敬なんてしてないと思うんだ。もちろん俺のことも。ただ気に入ってるだけで、切り捨てる順番がちょっとだけ遅いって以外に他の人間との差はない。
それに結局具体的な話は全然してくれないんだもん。
ま、いつものことだけどね。
実力は間違いなくある。悔しいけど敵わないのは確実だ。少なくともあと数年は、どう足掻いても勝てることなんてないだろう。
でも、里の中での地位は確立されている。だからこれを利用しない手はない。
それでも不審感とすっきりしない物言いに不満顔したら、輝かんばかりの笑顔で頭をなでてきた。
「ふふ…!ま、先にちょっとだけ手伝ってあげるよ!本格的に援護射撃するタイミングがきたら、ちゃーんとしっかりやってあげるから。ね!」
そう言って後はほかにも父さんのこととかイルカの親のこととかでぶつぶつ言ってたけど、胡散臭い。とてつもなく胡散臭い。
それでも約束は守る人だ。かたくななまでに。
ってことは、これで俺がちょっと派手にやっちゃっても、ある程度は保障してくれるだろう。いや、きっともみ消すくらいのことはするはずだ。
そもそもそれが目的だしね。そしてそれはこの分だと達成できたと見ていい。
イルカと早く出会えてよかった。
今からあの垂れ流される慈愛の匂いに寄り付く虫を徹底的に排除できる。
いずれはどこかに閉じ込めることも考えなきゃいけないけど。
とりあえずは、下準備が必要だ。
「タイミングは、大事だよね?」
そこだけは同意する。
…置いていかれる前にきちんと軛を打っておかないと。がんじがらめにしてどうやっても俺から離れていかないようにしておかなきゃ、安心できない。
父さんのように失ってしまってからじゃどうしようもできない。
だから今、行動しておかなきゃね?
里の禁術書庫よりずっと、父さんの蔵書の方が使えた。
準備はできた。あとは。
「待っててね?イルカ」
もうすぐ。本当にあとちょっとだけ我慢すれば手に入る。
嬉しくて楽しみで、期待しすぎてちょっと息が苦しい。
誰にも邪魔させない。だってアレは俺のモノだから。
「あと、ちょっと」
呟いて、慎重に気配を消した。
大切な大切なモノを、確実に手に入れるために。


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適当。
暴走は血筋。
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