忍具屋に行くのも久々だ。 …外の任務に出ること自体が減ったというのもあるが、元々今あるものを手入れしながら長く使う方が俺の性に合っているせいもある。 手間は掛かるが刃の角度や磨き方だの色々と工夫して、多少刃零れしても自分で研ぎ出し、時には自作したり、用途に合わせて微調整するのも慣れると意外と楽しい。 今回だけは流石にあきらめなくてはならなかったのだが。 「ぽっきり、だもんなぁ…」 気に入っていたクナイは、無残にも持ち手が根元から折れてしまっている。 しかも原因が。 「新しいの、おそろいにしちゃいます?」 うきうきしてるのがこっちにまで分かる。 …この銀髪の上忍に昨日俺は凶器を向けた。 結果的に愛用のクナイはあっさりとそのようを成さないほど無残な姿に変えられてしまった。 それなのにこの男は躊躇うでも怯むでもなく、嬉しそうに笑ってたっけ。 「抵抗なんかしても、無駄ですよ?」 それはまあ分かっていた。実力的にはこの人に適わないのは。 …ただ、俺の本気の殺気で、この下らないお遊びを面倒に思ってくれるんじゃない買って期待が外れただけのこと。 何故かよく俺のうちに飯を集りに来る上忍をいつものように家に上げたら、唐突に荷物のように俺を抱き上げて、ベッドに落とされた。 それからいきなり…そういきなりだ。この男に服をひん剥かれたのは。 任務で改めるなら、命令すればいいだけの話だ。 それをわざわざこんなことをするってことは…。 どうやらタチの悪い遊びに巻き込まれたんだと気付いた。 最初は「やめてください」だった断りのセリフが「止めろ!」になっても、押し殺しても漏れてしまうか細い喘ぎに変わっても…男は終始淡々と俺を暴くのをやめなかった。 最終的に処分されるの覚悟で武器を向けても、その態度は変わらなかった。 …つまり俺はあえなく、この今はのんきそのものな上忍の餌食になったと言うわけだ。 上に訴える前に消されるんじゃないかと思うほど、男の行為は執拗だった。 …上手かったのが余計に腹立たしい。 どうせお遊びだ。傷つくのも馬鹿らしい。犬にかまれたと思って忘れよう。 痛みよりも気だるさを訴える体に毒づきながらそう思ったのに、男は朝まで俺にくっついていたばかりか、どろどろの体で折れたクナイに落胆する俺を抱きしめて、血迷ったことを言い出したのだ。 「これ、弁償しますね?」 …欲に負けたといえば負けたのかもしれない。 本来なら上忍にはむかった罪のほうが重いだろうし、クナイが代わったからといって任務が出来無い訳じゃないが、長年遣い馴染んだそれを失ったことは俺にとっては結構な痛手だった。 要するに気に入っていたんだ。…それもコレは結構奮発したものだったから、高い。 …強姦魔にわずかなりと責任を取らせようと考えても罰は当たらないだろう? 「アナタはアナタにあった武器を使って下さい」 そういい捨てて、以前買ったものと同じ型のクナイを手にとった。 本当なら後10本でも20本でも責任を取らせたい位だが、厄介事に巻き込まれるも面倒だ。 「そうね。…うん。そうかも」 何故か酷く納得している。…不可解すぎるにも程がある男のことだ。まともに取り合うこともないだろう。弁償だけさせて逃げてしまうつもりだった。 「では、これで金輪際…」 「アナタが、俺の武器になる」 切り損ねた啖呵の代わりのように、男の瞳が真っ直ぐに俺を射抜いた。 「は…?」 「アナタがいないと俺はだめみたいなんですよ。でも俺はずっとこの里の、できれば最高の武器でありたい。だから…」 だから俺を襲ったとでも言うつもりだろうか? 「そんなの知るか!」 駆け出そうにも涙が出そうなほど軋む腰といらだちとで上手く動けない。 クナイだけはしっかり握り締めてもたもたと動く俺を、上忍が見逃すわけがなかった。 「どうしよ。やっぱり我慢できなくなっちゃった。…手、出したらだめって分かってたのに」 切なげな声と裏腹に欲を主張する下半身が恐ろしい。離せと喚いても残念ながら思い知らされている。 「好き、どうしよう…」 「だからアンタは馬鹿だって言うんですよ…」 こんな風に寝るつもりなんて…俺の方こそなかったのに。 好きだ何て一生言えなくなった。こんなことされたら、俺はきっと許せない。 「ごめん。ごめんね…」 真新しいクナイをもう一度この無防備に涙をこぼす男に突きつけてやりたい。 背に回した腕に、男は緊張に強張った獣のようだった体を弛ませた。 「許さない」 …もういっそこんな関係でもこの男を縛ることを望む自分に少しだけ涙を流した。 ********************************************************************************* 適当ー! ねむいねむい。 ではではー!なにかご意見ご感想等ございましたら、お知らせくださいませ! |