「愛なんてそんなものただのエゴのかたまりでしょ?俺はそんなものであなたを縛りたくないんです」 手を強く握り締めて、視線を伏せながら男が言う。 好きだと告げたのは確かにこちらから。 そしてそれは常に俺を見つめ、子どものように懐き、ついてまわるようになったこの男の瞳に、自分と同じものをみたからだった。 それをこんなに笑える言い訳を用意してくるなんて。 …興奮した。 この男は自分の感情に気づいているのだ。 指先は白く、色を失った顔はいつも通りの曖昧な笑みを形作ることすら忘れている。 あれだけ全身で感情を吐露しておきながら、今更だというのに。 「あいにくと俺はエゴのかたまりなもんで、アンタを愛ってやつでがんじがらめにしたいんですよ」 引き寄せれば簡単に腕の中に収まる。 怯えた瞳に映る自分の顔が、えらく嬉しそうで…ケダモノ染みていることに満足した。 御託はどうでもいい。 本当は欲しいくせに、どうせ諦められないくせに、我慢しているつもりでいるこの男をどうしてやろう? 今握り締めているその手。…俺が切り出すまではそれで手を握ろうとしてきていた。 いつも通りにぬくもりを強請りすりより、そのくせこうして下らない言い訳をする。 花街の女でも、ここまで見事に誘ったりはしないだろう。 無自覚に婀娜っぽいことばかりしでかして、そうして気づかないうちに誘われた連中を片っ端から切り捨てる。 これまでも何度もみてきた光景だ。 …それが、こうして自分に寄って来るようになったときの驚きと歓喜に、どうやら自分も同類だったようだと知ったのだが。 この男が何を恐がっているのかは良く分かっているつもりだ。 …何を欲しがっているか分かっているつもりだ。 「愛、なんて。そんなもの邪魔になるし厄介なばっかりで…」 「知らないものはどうこうできないでしょうが。いいから黙って受け取りなさい」 抱きしめると瞳を潤ませた男が堪え切れないと言ったように口付けてきた。 ほら、体はこんなにも本能に忠実だ。 アンタ筋金入りの忍なんだから、本当に必要なものには手を伸ばさずにはいられないんですよ。 それが一番己を生かすから。 「イルカ、先生」 興奮に縺れた舌っ足らずな口調に陥落を知った。 それでいい。これでアンタは俺のモノ。 そして俺も。 「ほら、アンタのものですよ」 囁いただけで抱きしめる腕の力が強くなった。 それでいい。がんじがらめにすると決めたのだから。 肌を暴く手に抗わず、飢えた獣の必死さで、俺を求める男を受け入れた。 愛ってものをありったけ溺れるほどに押し付けるために。 ********************************************************************************* 適当。 ねむいです。 ではではー!ご意見、ご感想などお気軽にどうぞー! |