朝が来ないで欲しい理由(適当)

毛布にくるまって朝を待つ。
帰りの遅い両親は寝ていろというが、一人で眠るには今日は寒すぎるから。
「まだかな…」
柱時計はもうすぐ朝が来るのだと教えてくれている。
でも、明日は休みだし、寝てなくても注意してくれる人もいない。
「まだ、だもん。まだ、朝じゃない」
朝なんてまだ来ない。…きっと帰ってきてくれる。
抱え込んだ膝の冷たさに、きっと驚いて暖めてくれるはずだ。
だから、まだ朝なんかじゃない。
*****
寝台があるだけまだましだ。
もっというなら任務中眠ることが許されていること事態が珍しい。
寝床がある、そして僅かとは言え休むことを許されている。…それならこの際寝心地など二の次だ。
浅い眠りは失ったものをちらつかせる。
それでも休息をとらないよりましだ。
眠らずに体を酷使し続けることは、死につながる。
休めるときには無理やりにでも休んでおかなければ。
…失った友の代わりに、なんとしても生き残る。
守れなかった人が守りたかったものを守るために。
朝が来れば、また戦いが始まる。
「ま、惰眠貪ってばっかりもいられないもんねぇ?」
意識を意図的に眠りに導き、短時間で深い眠りを得る。
そうすれば疲労もいくばくかはましになり、そしてその間は…苦しいばかりの過去のことなど思い出さなくて済む。
「あさ、なんて、こなけりゃいいのに」
*****
二人分の体温をはらんだ布団は暖かい。
傍らにいる人の、誰よりもそばにいる人の体温が、冷たく冷え切っていた寝床を暖めてくれる。
「あったかい…」
「ん。あったかいね」
激しく交じり合ったあとの心地よい疲労感は、穏やかな眠りへと導いてくれる。
でも、まだ眠りたくない。
…この人を見ていたい。
「ねむ…」
「んー俺も、かも。でも…」
「「ねむりたくない」でしょ?」
重なる気持ちに二人してくすくす笑いあって、それからどちらともなくもう一度高まり始めた熱に唆されて求め合った。
夜が短すぎる。朝が来れば、互いに任務につかなくてはならない。
朝なんて、こなくていい。
この暖かい寝床で二人きり。…ずっとこうしてまどろんでいたい。
そんな贅沢な願いは互いに口にはしなかったけれど。
「好きです」
「俺も、好き。好きすぎておかしくなりそう」
朝が来ないでほしい理由を睦言に代えて、口付けを交わした。
…あと、もう少しだけ離れたくないと、願いながら。


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適当!
最近寒いので!
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