おいかけっこ2(適当)



唐突に理解できた。
アレが、父さんの言っていたモノだ。
見つけてしまったら、それ以外目に入らない。自分以外の存在を見ることすら許せないほどに欲しくなる。
誰にも盗られないように、閉じ込めてしまいたい。
そして、母さんの言葉を思い出す。
むかーしね。追いかけっこしたの。それで父さんに捕まってしまったから、カカシのお母さんになったのよ。
父さんと一緒にいるときも、俺と一緒にいるときも、母さんはいつだってとても幸せそうに笑っていた記憶しかない。
父さんも、いつも母さんをまぶしそうに見ていた。片時も側を離れたがらなくて、任務に行くときは普段は握っている手が寂しいからか、空っぽの手を握ったり開いたりしてるのをみたこともある。
悪戯っぽく笑って内緒ねっていいながら任務帰りの父さんを脅かそうとしたり、結構子どもっぽいところもあって、二人とも行動は違うけど、お互いにお互いの事が大好きだったっていうのは、疑う余地がない。
と、思ってるんだけど。まあちょっと変わってるよね。父さんもだけど、母さんも。
病を得てから、本当にあっけなく逝ってしまったときも、決して苦しんではいなかったと思う。
ただ、ずっと俺のことを心配していたけど。
ちゃんと家事も出来るし、一人で何でもできるようにしたつもりだけど、一番困ったところが父さんに似てしまったんじゃないかと思うと心配だと、晩御飯の献立に悩むときと同じ顔で言っていた。
それでも、絶対に幸せになりなさいと言ってくれたときの、母さんは、今まで見たどんな顔よりもキレイに笑っていた。
父さんは、あれから色々駄目になってしまって、心だけ母さんといっしょに逝ってしまったんだと思う。それくらい、父さんと母さんは二人で一つだった。
…多分母さんは分かってたんだ。父さんがどんな生き物かってことを。
だから俺のことを心配していた。
…うん。そうなのかも。そういうことだったんだ。きっと。
じゃあ、することは決まっている。
「ねぇ。追いかけっこしよう?」
「追いかけっこ?」
ちょっと胡散臭げな顔で首を傾げられた。その仕草もかわいい。
鼻の頭に寄った皺とか、舐めてやりたくなる。
パックンにも良くやられるけど、自分でしたいと思ったことはなかった。
そうか。こんな感じなのかな。父さんも母さんを始終追いかけていた。時々邪魔ですって言われながら追い払われても、ちょっと離れるだけだったもんな。
危なっかしくて愛おしくて、放っておけない。こういう気持ちだったんだろうか。父さんも。
「そう、追いかけっこしよう?」
なら、分かるよ。父さん。
俺はこの子を逃がさないだろう。きっと。
さて、どうやって捕まえよう。
一応警戒してるみたいだし、いきなり精神の自由を奪うって…それじゃつまんないし。
とりあえず、離れたくないっていう欲求に逆らわないことにした。
見失いでもしたら、気が狂いそうだ。素性を洗い出して、犬たちに頼んで護衛もつけよう。
運命って恐い。こんなに近くにそれがあるなんて、考えたこともなかった。
もう、遅い。なにもかも手遅れだ。
だって俺は、この子に捕まってしまった。…だから、俺も捕まえないとね?
まずは、いっしょに買い物から。
さりげなく握った手を、にかっと笑って握り返してくれた。
無防備な笑顔に背筋が震える。
誰かにとられたらどうしよう?今すぐ捕まえてしまいたい。
はやる気持ちを押し隠しながら、商店街への道を歩いた。
さあ、始まりだ。



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適当。
kksへん。
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