トリコロール3(適当)


「先輩!」
「あーテンゾウ?なに?どうしたの?」
すっかり育った後輩は生意気で素直なんていうちょっとめんどくさい育ち方をしたけど、基本的に俺には懐いている…らしい。
本人曰く尊敬してるつもりらしい。昔はマザコンマザコン言われてたけど、今は暗部の中身も大分入れ替わって、今度は一番の崇拝者とか呼ばれているとか。どっちにしろありがたくない話だ。
単にコイツは裏切らない仲間を信頼しているだけで、あとは強くなりたかったのもあるだろうし、俺の飯で育てたせいで、二人そろってちょっと舌が奢ってるだけなんだと思うんだけどねぇ?
「…イルカさんがまた」
「うそ!もうあの子ったら!」
で、まあ俺べったりなのはちょっとめんどくさいんだけど、こういうところは助かってる。
イルカはなんていうか…盛大にやんちゃに育った。元気一杯天真爛漫なままでっかくなっちゃったっていうかね…。教育なんか俺に任せたのが悪いんじゃないの?
相手が誰であろうが礼節は重んじつつも自分の考えを曲げないから、方々でトラブルを引き込む。それに変なヤツに好かれる。
で、一度ならず何度も上官に襲われかけたり、奇襲されて返り討ちにしたせいで大騒ぎになったり、くノ一たちに好かれてペットみたいにされかけたりするから気が気じゃなくなった俺が忍犬をつけるようになった。
それだけじゃ足らなくて、俺が里から離れているときは、テンゾウが見張ってくれることが多かったんだけど。
最近は大分落ち着いてきたと思ったら、今度はなにやらかしたのもう!
「背中に大怪我してます。治療は順調らしいですが…」
「また!?わかった。すぐ帰還する」
本当は穏やかにコトを運びたかったんだけどそんな余裕はなくなった。後輩の教育のためにとか、そんなの現役の連中がやればいい。うちの子が怪我してるのに、悠長に増援なんて待ってられないでしょ。
「アレですよね?片付けるターゲットって」
「そ。…じゃ、行くよ」
「はい」
で、敵はあっさり片付けて、テンゾウたちに処理だけ頼んで里に帰ったんだけど。
…なんでまたラーメン食ってるのよこの子は…。
「うっ!だってその、おいしいから」
「なにその言い訳」
「…ナルトに心配かけさせたくないし…」
「で?」
「できるだけ普段どおりにしなきゃなって」
「それが俺を心配させるってわかんなかった?」
「…ごめんなさい」
はって顔でいきなり泣きそうになるからずるいよねぇ?
あーあ。コイツはいつまでたっても巣立ちそうにないし、でっかくなったのに怪我したり揉め事に首突っ込んだりして、俺がいなかったらすぐに死にそうだ。
その度に俺の心臓が止まりそうになってることなんて、考えもしない。
「悪いと思ってんなら止めろっていっても無理なんでしょ。ったくもう。ほら、怪我見せて」
「うっ!あの薬痛いししみるし…!」
「早く治るでしょ。その分。自業自得。ほら脱いで」
「…はーい…」
悲壮な面するくらいならやんなきゃいいのにもう。
包帯をはずすとあらわになる素肌には傷が多い。この子がそれだけやんちゃだってコトなんだけど。なんていうか、この怪我でよく助かったもんだ。脊髄を本当に紙一重で避けている。なんなのもう…。
「ご、ごめん!カカシさん!」
「…悪いと思ってんならするなって、何度言っても覚えないよね。イルカは」
「泣かないで」
「無理。あんたのせい」
「…うん」
あーあ。図体ばっかりでっかく育っちゃって。抱きついてくる腕だって、あの細っこかった昔と違って、俺と殆ど同じサイズになった。性格は…向こう見ずで無鉄砲で男前だし、ここまで手塩にかけて育てたんだから当たり前かもしれないけど、すこぶるいい。
「悪いと思ってるなら、しっかり休んで、早く治して」
「…カカシ」
「なによもう。いいから寝ろ。飯食ってしっかり休まないと、治るものも治らないでしょ?」
「好きだ」
「は?そんなの当たり前でしょ?」
触れる感触に肌がざわめく。あーもう。こっちがここまで育ててきたってのに、鈍いし。
そういう意味じゃないって、ちゃんと相手に言わないと誤解されるだろうに。
ガキの頃から手塩にかけて育てた子どもに惚れてるなんて、口が裂けても言うつもりはない。テンゾウは…うっすら察してるかもしれないけどね。
母親代わりはそろそろ卒業しなきゃと思うのに、この子のやんちゃぶりをまだ離れなくていいなんて言い訳に使って、このざまだ。
「そういう意味じゃなくて!あ、の!ええと!っ!」
頭をぽふぽふ撫でてやってたら、いきなり頭突きされた。おかげで唇が重なって…っていうか、もしかしてこれってキス?
「こういう、好きだ」
茹蛸よりも真っ赤になったイルカをみた瞬間、理性とか色んなものが吹っ飛んで、大怪我してるってのにその日のうちにやっちゃった辺り、俺も意外と駄目みたい?

テンゾウには報告しづらかったのに、帰ってくるなりやっとですかとか言われるし、もうイルカからのろけみたいな愚痴は聞きたくないとか…!なんなのそれ。ねぇなんなのそれ!
「お幸せに」
余裕たっぷりのその言葉に、ああコイツは子離れ早くてちょっと寂しいとか思っちゃった俺も俺だ。
「テンゾー!ありがとな!」
「イルカ。後でちょっと話があるから」
「へ?」
きょとんとした顔もかわいいなぁとか、とっくに育って大人になってんのにそういやずっとかわいかったよねとか、脳裏によぎる過去の記憶と今のイルカを重ねて、己の度し難さため息をついたのだった。


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適当。
イルカちゃんの初恋が暗部なママだったり、テンゾウが闇雲な崇拝を止めたのが、無様にも片恋こじらせがちなところをみたからだったり色々。
これにて終了。

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