トリコロール2(適当)


「おいしいね!」
「あーうん。そうね」
カウンターに腰掛けて、ラーメンを口いっぱい頬張るガキ二匹を眺める。
イルカはよくしゃべるからいいんだけど、テンゾウは無心に食ってるようでいて、時々こっちを監視してるみたいな目で見るから油断できない。
素直でかわいかったのにねぇ?
最近憎まれ口が増えて、ちょっとした用事を押し付けると不貞腐れることもある。
ま、それでも命令違反まではできない辺りがテンゾウらしい。
…っていうか、なんでイルカ誘うとコイツもセットなんだろう。
誘ってなくても察するのか、勝手についてくるっていうか、特にこのラーメン屋に来るときは、ほぼ確実にテンゾウが先に座っている。
コイツが一楽の常連じゃないのは知っている。木の実が好きで特にくるみを与えておけば、長いこと栗鼠みたいに齧ってるもんね。
普段なにを食ってたのか知らないけど、基本的に粗食というか、その辺に生えてるものや果実なんかを好む。
そんなヤツが宗旨替えするなんてことがあるだろうか?
ま、これが思春期ってヤツ?ってぼやいたら、部下たちにはそれを言うなら隊長もですよなんて言われちゃったけど。
「イルカ。野菜炒めもちゃんと食べなさいね」
「はーい!」
「テンゾウ。餃子テイクアウトしてやるからお前は家でもちゃんと食事を取ること」
「え!は、はい!」
あーあ。世話が焼ける。なんだって三代目はこんなのをよりによって俺に押し付けたんだか。
自分で言うのもなんだけど、実力に伴って地位も高い。部隊長クラスにこんなチビを押し付けとく暇があったら、Sランク任務の一つも寄越せばいいのに。
外貨がなきゃ里の復興だってままならない。人的資源も…生き残ったこういうチビを育てなきゃどっかから湧いて出るわけでもないんだから、動ける人間がそれまで支えなきゃならないのになに考えてんだあの狸爺は。
「カカシ。カカシもちゃんと食べなきゃ大きくなれないぞ?」
「んー。そうね。ま、もう大分大きいけど」
身体的にも忍としての能力的にも、成長が早いとお墨付きだ。背の高さに関しては母さんはあんまり覚えてないけど、父さんは結構大きかったはずだから、生き写しと呼ばれる俺もまだ成長が止まるってことはないはずだ。
それに対してこのチビときたら…飯は人一倍食うのに育つのが遅い。なんかもう色々大丈夫なの?って心配になるほど遅い。同い年くらいのテンゾウの方がずっと身長も高いから、もしかして栄養失調なんじゃないかと思うと気が気じゃなくて、なんだかんだと飯を食わせるのが日課になりつつある。
テンゾウはテンゾウでひょろひょろ背ばっかり伸びてもやしみたいで心配なんだけどね。
イキモノを飼うには覚悟が必要だ。病気、怪我、とにかく色々な厄介ごとはいつだって起こりうる。厄介な忍犬のこども押し付けられたと思えばいいのかもしれないけど、人間は成長が遅いし、やったこともないことやってるんだし、二人ともちょっと変わってるっていうか、育てにくいとかいうレベルじゃないしね…。
「はー…子育てって大変」
「んぐ!カカシもなんか育ててるの?大変?ラーメンもっと食う?」
「イルカ君はいい子ですよ?」
すかさず両サイドから突っ込みが入る。そーね。イルカはいい子だよ。お前もちょっとめんどくさいけど、多分根はいいヤツだし。っていうか同い年に見えないのは、イルカが年より幼くて、お前が老けてるせいだろって時々思うんだけど間違ってないんじゃないの?
「お腹いっぱいだから大丈夫。イルカはいい子だよ。テンゾウもね」
…で、ここで真っ赤になるところが素直でかわいいよねー。
イルカは…うーん?ここでなんで膨れるのよ?
「別に、僕は!」
「ちゃんと食わないと駄目なんだぞ!カカシ!でっかくなるにはおいしいご飯一杯食べるの!」
なるほどそこか…。なんていうか。きゅんってきた。今日は久しぶりに一緒に風呂入ってやるか。イルカの好きなおもちゃも用意して。
「そうですよ!先輩もちゃんと食べてください。このところ忙しかったでしょう?」
「あーうん。ま、そこそこね。いつものことだし」
「そっか!じゃあ一杯食べなきゃだめじゃんか!食えよ!」
「ってことで、どうする?テンゾウはチャーシュー麺でいい?」
「え?僕は別に!」
「じゃあさ!じゃあさ!カカシはワンタンメンな!」
「イルカは…野菜炒め全部食べたな?デザート選んでもいいよ」
「ホント?やったぁ!えっと、えっと…!」
食い物でつれるとこがかわいいよねぇ。さてと、テンゾウは…真剣にメニュー選び出したよ。かわいいじゃないの。
「おやじさん。俺にワンタンメンで、テンゾウは?」
「あ、はい!じゃ、じゃあチャーシュー麺で」
「イルカは?」
「杏仁豆腐!」
「じゃ、それで」
キリッとした顔で宣言するとこもかわいいなー。たかが食料なのに。
「わんたん味見するでしょ?」
「うん!」
よし。素直素直。
「僕のチャーシューも食べるかい?」
「え!いいの?テンゾウは?」
「僕はワンタンを先輩からもらうから」
…ま、いいんだけどね。そのしてやったり顔ってどうなの?
微笑ましいっていうか、イルカに兄弟がいたらこんな感じなのかねぇ?
「一杯食べなさいね」
「うん!」
「あ、の、…はい!」
そろってうなずく二人に満足しつつ、たまにはこんな日もいいよなーなんて思ってたんだけど。
後日部下たちからこぞって、おかあさんとかママとか呼ばれるようになってたんだけど、どういうことなの?


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適当。
ちょっと育った二人とうっかり母親業が板に付き始めている暗部の部隊長。
犬と比較して、なんかこいつら育たないと言いながらせっせと飯を食わせて修行をつけてやって私生活の世話も焼き、お土産なんかもかってやってたりするといい。

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