「あったかくするには人肌がいいんですよー?」 さも親切ごかして嘯く男に押し倒された。 ごろごろと懐き、さりげないようでいて確実にこれから先の行為を狙ってくるあたりがこの男らしい。 「ああそうですか」 押し返すとそのまま亀のようにひっくり返った。 …多分、わざとだろう。 いつの間にか肌蹴られたパジャマをかき寄せて男を見つめると、ちらちらこちらを伺いながら、子犬のように切なげな目をしてみせてはいるが、本性はすでにばれているので警戒心を煽るだけだ。 あの顔に何度騙されたか。 そもそも最初だってあの男が任務帰りにしょぼくれた顔をしていたのがきっかけだ。 放って置けばよかったんだ。 あの日に戻れるのなら、俺は俺に絶対に止めただろう。 まあ、そんなことは出来るわけがないんだが。 思わず連れ帰って、飯を食わせて寝かしつけて、慰めてそれで終わりだと思っていた。 男は高名な上忍だし、ふてぶてしいまでにマイペースを崩さず、上層部すら煙に巻く実力の持ち主だ。 今日はたまたま、タイミング悪く俺に出くわしただけだ。 それなら…ちょこっとだけ甘えさせて、そうしたら、勝手に出て行くと思ったんだ。 たとえその日のうちに既成事実が成立したとしても。 縋るように身を寄せてくる男を、階級だのなんだののせいじゃなく、見棄てられなかった。 正気になれば後で公開するのは男のほうだろうと思いながら溺れるものの必死さで伸ばされる手に捕まって流されて、気付けば初めて男る羽目になっていたってだけの話なんだが。 「ただいま!」 そう言って満面の笑顔で男が俺の家に上がり込んできたのはその日の夜。 家財道具一切合財…といっても、戦忍らしく極僅かなものしかなかったけれど、とにかくそれらを全て大事そうに抱えているのに驚いて反撃すら忘れた。 上がり込まれて、せっせと私物を片付け終わるまで呆然としていた時点で、俺の負けは確定していたのかもしれない。 アレ以来、今に至るまで男に勝てたためしがない。 「寒いなー…。イルカ先生が側にいてくれたらなー?」 上目遣いも視線もせんぶ計算の内だと分かっているのに、気付けば手が動いているのだから始末に終えない。 「…悪さをしないなら布団に入れてやってもいい」 そういうといつもいそいそともぐりこんでくる男が悪さをしないなんてありえないのに。 「イルカせんせ…あったかい…」 なんていって擦り寄ってくる頭をとりあえず抱きしめておいた。 今日は寒いからなんて言い訳をして。 ********************************************************************************* 適当ー。 さむいですね。 |