地平線から引き剥がされ始めた太陽の光は、ぞっとするほどに赤く目を焼く。 年の初めだからって、特段ありがたがるようなモノだと考えたこともなければ、こうやってじっくりみたこともなかった。 年末年始は色々仕事も多くなるしねぇ? 宴席が多くなれば暗殺も増える。となれば、俺みたいな忍は休みなんてなくなるのが通りってね。 それを後悔したことはないし、むしろそんなことに興味すらなかった。 隣で真剣な顔をして、いつもと代わり映えのしない太陽を見つめている人に出会うまでは。 「きれいですね!」 「そーね」 はしゃいだ声が掠れているのは、この人が行事に熱心だってことを忘れてさんざん喘がせちゃったせいだけど、怒ってはいないみたいだ。 赤、そして橙色から少しずつ白く輝き始めた光は、この人を照らす明かりとしてなら評価してもいいかもしれない。 吐息が白い。お風呂には入れてあげちゃったけど、初日の出を拝むんだと散々抵抗されたから、温まりきる前に出てきちゃったんだよね。 上気した肌に歯止めが利かなくなってついついもう一回とかオネダリしたのが原因といえば原因なんだけど、こんな風に目を輝かせてるのを見られるなら、我慢した甲斐があった。 白から青へ変わり始めている空なんかより、この人をずっとみていたい。 …ま、そろそろ満足したみたいだから、これ以上は無理かもしれないけどね。 ほうっと深く息を吐いて一瞬目を閉じて、緩やかにたわんだその唇が誘っているようにしか見えなくても、初詣とやらまではお預けだ。 「へへ!今年もよろしくおねがいします!」 「今年も、っていうかこれからも末永くよろしくおねがいします」 さりげなく抱き寄せて冷えたからだをあたためようとしたら、殴られるかと思ったのにむしろぎゅうぎゅうに抱きしめられた。 こんなに密着されると洗い流されたはずの臭いがかすかに感じられて、押さえが利かなくなりそうだ。 「…末永く、よろしくおねがいします」 ああ、この目、好き。 歪みなくどこまでも澄んで、何もかも見透かしてしまいそうな黒。 欲に溺れさせて、熱に浮かされたように潤んでかすんだ瞳も好きだけど、こうやって真っ直ぐすぎる視線も好きだ。 それが俺だけに向けられたら、なんて、言えないけど。 「初詣、いきます?」 「もちろんです!雑煮も!今年はカカシさんの御節楽しみだなぁ!」 「見よう見まねだから期待しないでね。酒は上物だけど」 「つまみは期待しといてくださいね!」 まずは色気より食い気か。並の中忍よりずっと体力のある人だけど、俺につき合わせるなら栄養補給も大事よね。 酔っ払ったこの人をおいしくいただくってのも悪くない。無意識だろうけど、甘えてくるのがたまらないし、ナカも熱くて普段より感じていることを隠さないから。 「じゃ、いきますか」 「へへ!よーっし!しゅっぱーっつ!」 手をつないでも怒らない。舞い上がってるねぇ?ま、これなら周りの連中も余計なちょっかいはかけてこないだろう。後で恥ずかしがってくれるだろうし? どうやら今年は幸先が良さそうだ。 ほくそ笑む俺に、甘酒とみかんとお守りも、なんて買い物の予定らしきものをつぶやいていた人は、どうやら気づかなかったらしい。 初詣でナルトたちにお年玉をくれてやって、御節に誘おうとした人を味見がまだだからとそそのかして連れ帰って腹いっぱいいただくことに成功した。もちろんかわいい恋人を、だけど。 一年の計は元旦にあるらしいから、今年もおいしい思いがたくさんできるのかもねぇ? 「うぅ…?」 寝ぼけたままうめく人の唇を掠め取って、そうほくそ笑んでおいた。 ******************************************************************************** 適当。 あけましておめでとうございます。 旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。 |