「無駄とかそういうんじゃないでしょうが。後悔ってのは」 後悔なんか無駄だからしちゃだめですよなんていいだすから、つい言い返していた。 そんなもの、したくてするもんじゃない。 自戒にがんじがらめになっちゃ意味はないだろうが、それでも…自分の過去は変えられない。 きっと多かれ少なかれ、人はだれでもそうやって過去に縛られている。 だからこそやり直せやしないそれを二度と繰り返さないために必死になるんだ。 それに。 「だってねぇ。死ぬほど今までしてきましたけど、何かが変わるわけじゃないですから。…ああ少し臆病にはなったかなぁ…」 「…そう、ですか」 この人は自分でそういうくせに、誰よりも過去に囚われている。 毎日慰霊碑に行ってるくせに。 自分こそ後悔しつづけながら生きるのなんてやめちまえばいいんだ。 ああだが臆病ってのには同意する。…この人はいつだって壁を作るから。 過去だけを大事にしまいこんだその壁を通り抜けるのは、きっと一生無理だろう。 …どうやらそこに近いところに、俺を入れる隙間は作ってくれたみたいだけどな。 「そそ。だから考えても無駄ってもんです」 そういいながらどうせまた慰霊碑にも行くし、夜中に一人で落ち込むし、真っ先に仲間を庇うのだって、全部…全部俺の知らない誰かのせいじゃないか。 「いやでも!」 心配でほっとけなくて、気付いたら惚れてたのは自分だ。 だからって突然後悔は無駄だのなんだの…だったらさっさと昔のことなんて全部忘れりゃいいじゃないか。 どうせできやしないくせに。 そんな風にして、過去の痛みを忘れていない所も、それでもなんの因果か俺なんかに惚れて必死になって手を伸ばしてきた所も…全部まるごと惚れてんだこっちは。 どうも馬鹿にされてる気がして言い返すつもりが、手首を掴まれた。 とっさに振り払いかけた手を引かれ、あっさり重心ずらされる。流石上忍だと感心する暇もない。 勢いを殺しきれないままおもちゃのように回されて、なんでかしらないが気付けばベッドの上に転がっているこの状況。 この男が何をする気がなんて分かりきっていた。 「この場合特に。だって俺もうあなたを逃がす気ないですから」 「なっ!なにすんだ!」 逃がす気がないもなにも、どうせいつだって好き勝手するくせに、なんていい草だ。 「だーかーらー。…そろそろ好きって言ってくださいね?」 「…っ!」 …告白は、された。 それも熱烈なのかなんなのか、下に偏った言葉も混ざったのも何度か。 素直に好きだと言わない理由を、この人だって知ってるはずだ。 体だけ先に食ったくせに。…今更全部欲しいだなんていわれて、惚れてたってそうほいほい頷けない。 「ん。でもいいの。ずーっとずーっと待ちますから」 そういうくせに人の服をひん剥いている。 「待つってのは普通こっちの方も込みなんじゃないんですかね…」 ため息混じりに言ってやったが、そう堪えちゃいなそうだ。 …こっちの気持ちなんて疾うにばれてるんだろうから。 「身体でも言葉でも愛を囁いてるだけですよー?」 ああもう。相手のがどうせ上手なのは分かってる。下らない意地張ってるうちに、何かあったら…後悔するのは自分だ。 おいていくのもおいていかれるのもいつ起こるかわからないんだから。 今更素直に言ってやる気もないけどな。 ついばむようにキスを落としてくる男の首根っこを掴み、耳元に凄んでやった。 「一個だけ、訂正しろ」 「えーっと。はい?…んっ!?」 よしよし。ちょっとは怯んだみたいだな。 …やられてばっかってのも気に食わない。 向こうからいつだって散々しかけてくるくせに、ちょっと濃厚なキスしただけで、唇を押さえられるとこっちが照れる。 「…後悔なんざしてねーよ。ばーか」 「イ、イルカせんせ…!」 興奮しきった男に押し倒されて、結局その日も愛の告白とやらに答えそこなったんだが。 …どうせならもうちょっとだけおあずけしてやるつもりだ。 そうだな。あともうちょっとでくる男の誕生日くらいまでは。 ********************************************************************************* 適当。 あほなはなししかかけない。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |